荒川の人 ▼「荒川の人」No,43
▼「ほっとたうん」1992年7月号(43号)掲載

伊集院 光 (いじゅういん ひかる)  ― ラジオ・パーソナリティー


深夜のおしゃべり超人気
睡眠惜しんで活動する巨漢

ニッポン放送「伊集院光のOh!デカナイト」(月曜〜金曜の夜十時〜一時)は十代に絶大な人気の番組です。伊集院さん自ら結成した「アラカワ・ラップ・ブラザーズ」にもファンがどっと集まります。その天才的なおしゃべりは生まれ育った荒川の土壌からたっぷり吸い取ったエネルギーが源泉でした。放送局のスタジオでのインタビュー。

 ─最近世田谷の下北沢に引っ越したそうですが。

 ふるさとは一度離れてはじめて良さがわかるんだな、ってところがあって、正反対の感じのところに行ってみようと考えたんです。ワンルームマンション、家賃高いですよ。若いときは一度つっぱったほうがいいんじゃないか、というのが自分の中にあって。

 ─それまでは荒川に。

 ええ、二十四年間ずっと。実家が荒川なのでよく帰ります。西尾久の小台のすぐそばで育ちました。普通のサラリーマン家庭でした。尾久西小、荒川第七中、都立足立新田高校。高三で中退して、この道に入ってしまいました。

 ─どんな子どもでした?

 まあ下町の悪ガキですよね。自転車で遠出するのが大好きで、荒川の土手を走ったり、下水処理揚とか、荒川自然公園はできたばかりのころからずっと遊んでいました。

 ─何をして?

 草野球ですよ。今も荒川区の友達と野球チームをつくっています。名づけて「全日本選抜」。僕はファーストで四番。別に実力があるわけじゃないけれど、僕がつくったチームだからわがまま言っています。

 ─放送入りのきっかけは。

 オーディションがあって、そこでお笑いをやって優勝してから。最初は夜中の三時から五時の部を二年間やり、もっといい時間にといわれ、今のようになりました。

 ─どこが受けているの。

 わかりません。自分がおもしろいと思っていることを言っているだけで。強いて言えば、脳みその発達が中高生で止まっている。お金があったら、子供なら全部ファミコン買っちゃう。僕には大人になってもそういうところがあって、そこが若い人にうけるのかもしれません。

 ─番組でいろいろなアイディアが出ますね。

 こんなのやりたい、と言い出せば譲りません。犬にマイクをつけて町に放してみたいと言った時も、マイクは高い物だからと反対していたスタッフも結局折れて、犬を追いかけ回して……。

 ─これだけは筋を通そう、というようなことは。

 たかがラジオだけれど、されどの部分を大切にしたい。例えば恋愛相談。鼻くそほじりながらやっても、テレビじゃないから、見えないですよね。でも、テレビ以上に真剣にやらなきゃいけない、ってところが自分にあります。

 ─いま体重は?

 百二十キロ。これでも二か月で四十キロしぼったんです。食べるのが好きですから。百円ずしなんか、五十皿くらい、焼肉は一万五千円くらい食べちゃうんです。ただ、やせようと思い込むと早いんです。十五日聞くらい何も食べない。水だけ。別にふらふらもしない。小学生のときから、寝てる奴で立派になった人間はない、というのが持論で。一日三時間半も寝れば十分。深夜放送が終わって、朝六時くらいまで飲んで、七時に帰って寝て、お昼には活動開始です。

 食べるのも極端、ダイエットも極端、睡眠を惜しみ、読んで、しゃべって、運動する。好漢二十五歳。身長も百八十三センチの巨体からほとばしるエネルギーは、これからも深夜の電波に乗って発散されることでしょう。

読売新聞編集委員・平田明隆
     カメラ・水谷昭士


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