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偏光顕微鏡写真への誘い (What's Microscope)

多種類の顕微鏡がありますが、写真として一番面白いのは偏光顕微鏡だと、私は思います。何故なら、無限に広がる造形と色彩の乱舞が常に新たな驚きと感動を与えてくれるからです。

偏光顕微鏡とは?
偏光顕微鏡写真撮影の仕組みの概要は、左図のようになっています。
光源からの光がコンデンサーで集光され第一の偏光板(ポラライザーと云います)通過します。
回転台(偏光顕微鏡では必須な、回転ステージ)の上に置いた試料(結晶などの異方体)で復屈折した偏光が、対物レンズ(撮影では重要なレンズ)を通過し、二番目の偏光板(アナライザーといいます)にぶつかり、一部の偏光のみ通過します。 それを撮影レンズを通してカメラで撮影するわけです。
回転台を回転させると、試料の色や明度が変化します。
また、ポラライザーの上にに透明フィルムを置くと、通常は暗黒の視野が、明るい色彩に変わります。 本来の偏光顕微鏡の使い方は、結晶などの復屈折物質を観察し、その構造や特性などを研究するためのもので、多くの光学的アクセサリーが使えるようになっています。

撮影用機材
最近の顕微鏡は、不必要とも思える程の多機能さで、値段も大変! 個人ではとても手が出ません。
そこで、私は中古の顕微鏡(オリンパス生物用)を改造して使っています。(右下写真)
顕微鏡では対物レンズが重要です。なるべく広視野で平坦性の高いものが理想です。本数は10倍と4倍の2本で充分。
撮影レンズは案外安いので、5倍と2.5倍の2本程度欲しいものです。
この組み合わせで、15倍から150倍までの撮影倍率(フィルム面)がまかなえます。
左の写真は、35mmフィルム撮影で使用しているカメラ(OM4) と顕微鏡に取り付けるアダプターです。フィルム面倍率計算は、{「対物レンズ」×「撮影レンズ」×1.5}になります。
右上の写真は、4×5フィルム撮影用の装置で、シャッターと露出計測用の光路切り替えを内蔵しています。
中古顕微鏡を探すのに便利な店が、東京大学前の「浜野顕微鏡」(03-3811-4111,4373)です。いろいろ相談に乗ってくれます
最近ではデジカメの進歩が著しく、フィルム撮影のランニングコストを考えるとデジカメ利用が有利です。
左図は、ニコンのデジタル一眼レフを、改良アダプターで顕微鏡に取り付けたもの。
旧オリンパスOM4 のようにビューファインダーのマット交換(顕微鏡用)が出来ないので、マグニファイヤーの拡大機能でピントを会わせる必要がでてきます。
もっとも、ピント精度などにこだわらなければ、顕微鏡の接眼レンズに安物のデジカメでを押し付けて、十分写真が出来上がります。


必要備品
1:試料を乗せるスライドグラス

2:試料の上に被せるカバーグラス

3:試料を取り出したりするサジ

4:スライドグラス挟み

5:試料(薬品)入れのスクリュウ瓶

6:ビーカー 

7スポイト

8:アルコールランプ



試料づくり

顕微鏡写真で一番苦労するのが試料づくりです。私の場合は偏光撮影に面白みが多くて、しかも再結晶が比較的簡単な有機化合物(医薬品、食品添加物、香料など)を対象としています。
手順は、まず試料を溶解し(水、有機溶剤、加熱など)、スライドグラスの上に再結晶させます。 加熱溶解の場合は、最初にスライドグラスの上に試料を少量置き、カバーガラスをその上に被せてから、アルコールランプで下から熱します。

試料の入手は相当苦労します。簡単に手に入るのが、ビタミン C、ナフタレン、クエン酸、メントール、酒石酸 など。その他は理化学教材店や化学製品販売業者などを探すことになります。
初めての撮影ならビタミンCは最適。水で溶解し再結晶も簡単。それに絵柄が非常に面白く、よく狙われる対象です。(写真)


さあ 撮影!

撮影器材は TTL 内蔵の一眼レフが便利です。露出はオートでまず大丈夫。
前後半絞りの段階露光をしておけば、まずOK。
顕微鏡の電源は、タングステンタイプの色温度です。ネガフィルムなら問題ありませんが、ポジの場合はタングステンタイプを使うのが理想です。もしデイライトタイプを使うのであれば、色温度変換フィルターを顕微鏡の光源部に装着します。
私は、35mm フィルムではフジのタングステンタイプ(64T)を多用しています。露光は自動で3段階。通常 1/2 sec 前後です。

なお、顕微鏡のレンズには絞りがありません。コンデンサーの光束を絞ってそれに替えています。あまり絞りすぎると露光が極度に増え、解像度も悪くなります。

高倍率のときは、ピント合わせに神経を使います。顕微鏡用のマット交換が出来る一眼レフが有利です。

Caffeine の結晶

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