PCオーディオ雑記



現在のシステム

書斎
・PC:富士通LIFEBOOK A572/E
・アンプ:YAMAHA A-S801
・USB DAC:YAMAHA A-S801
・CDプレーヤ:KENWOOD DPF-7002
・スピーカーA:B&W MATRIX805V
・スピーカーB:CELESTION A2
・正体不明のBDプレーヤ(BD-120K)とテレビSHARP AQUOS(LC-32VS)


寝室
・PC:NEC VersaPro VJ16ER-D
・アンプ:ONKYO A-909X
・USB DAC:S.M.S.L. M100
スピーカー:CELESTION A1


  20.7.30掲載 9.17更新
 

 



CELESTION A2を書斎システムに導入 (20.9.25)

 ヤフオクで衝動的に落札してしまったものの結果的に大いに気に入った、ところが不具合も発覚してしまったCELESTIONのトールボーイ型スピーカー、A2をどう処遇しようかといろいろ考えたが、結局返品する気にはなれず、手元に置いて使っていくことに決めた。
 ウーファーの一つから異音がするのが問題なので、そこを修正する道を気長に模索することにする。具体的には今後、ヤフオクを注視しておき、ジャンクに近い格安の、しかもウーファーが最低一つは無傷のA1が出品されたらそれを手に入れて、問題のウーファーを取り換える、という作戦で行くことにした。
 ただ、現状これを寝室システムに入れたままにしてノイズを気にしながら聴くのはいやなので、書斎に持っていくことにする。
 書斎には不動のメインスピーカー、B&W MATRIX805Vがあってこれを置き換えるつもりはない。ただ、幸いにしてトールボーイ型なので、そのまま前に置いておけば併用できるじゃないかと気がついたのだった。

 書斎に移動するにあたってはさほど問題もなく、805の前に置くだけでよかったが、その際窓際に置いてあったデジタルピアノが邪魔になったので、窓際沿いから窓に垂直方向に90度位置変更をせざるを得なかった。このために部屋がかなり雑然としてしまったが、かといってデジピを撤去するわけにもいかないので、これはやむを得ないこととする。
 問題は、デジピが左のA2の真ん前に来てしまい、音を遮ることである。そもそもA2を床にそのまま置いただけではかなり位置が低いので、20cmはゲタを履かせてやる必要がありそうだ。何か頑丈な踏み台のようなものを今度買ってこよう。そうすればデジピの遮音問題もかなり軽減されるだろう。


はじめてのトールボーイ CELESTION A2がやってきた (20.9.23)

 先日ヤフオクで手に入れたCELESTION F15がけっこう良かったので、上位機種のA1にも興味がわき、しばらくヤフオクの出物を注目していた。A1はとあるオーデイオ系のサイトで激賞されていたことからも興味を惹かれていたのだった。
 これは1997年に発売され、2000年代初頭まで販売されていたスピーカーで、その後CELESTIONはこの分野から撤退し、ギターアンプ用スピーカーの生産に特化していくことになる。だから今手に入れようと思えば、当然中古品から探すしかない。
 だいたい、月に1、2台の出品があるようで、けっこう出回っているのだが、私が注意している間、一か月ほどはたまたま出品がなく、その代わりに同シリーズのトールボーイ型、A2の出品があった。見るとウーファー一つに修理痕があり、気になったものの、そのせいもあってか入札額は低いままに推移していたので、つい、思わず、落札してしまった。
 届いたそれは一本30kgほどの重量があり、厳重な梱包を含めれば40kg近かった。届けてくれた配達員さんには申し訳ない感じだったが、これを二個、玄関から三階まで運び上げた私自身も参ってしまった。あちこちすりむいたり、筋肉痛になるくらいなら別にいいけれど、ちょっと腰をやられてしまったのには青くなった。以前坐骨神経痛を患ったこともあり、腰には爆弾を抱えているので本当に要注意なのだ。

 寝室で開梱し、F15につないだケーブルをつなぎ直して、試聴してみる。
 まずはF15に相性の良かったロック系から聴いてみる。いつものWidowspeakの「Narrows」や、Cranesのアルバム『Loved』などをかけてみたが、まずはF15とのあまりのキャラの違いに驚く。比較的高音に振られた、元気のいい音のF15に対して、こちらは非常にどっしりと落ち着いた音。ただ定位がとてもはっきりしていて、広い音場の中に各楽器がしっかりそれぞれの位置で鳴っている。現実のライヴ会場でもこんなにはっきり分離しては聴こえないだろうと思うほどクッキリと別れる。これはF15と共通する特徴だろうと思う。
 クラシックもかけてみたところ、これは素晴らしい。これは明らかに、クラシック向きの音のスピーカーだろう。弦も管も、コンサートで耳にするそのままの音が聞こえてくる。しかもブックシェルフ型に比べて低音が圧倒的に豊かなので、臨場感がすごい。
 面白いのは、このスピーカー、聴くほどに非常に気持ちが安らぐというか、癒される感じがすることだ。高音もしっかり出ているのだが全く耳に刺さるようなところがない。豊かな音にやさしく包み込まれて、陶酔境に遊ぶ心地がしてくる。これは気分を活性化し高揚させるような音が持ち味のF15とは最も異なるところだった。

 すごく気に入り、寝室システムの中心にすることにして設置したのだが、二日ほどして、問題が出てきた。
 懸念を抱いていた例の修理痕のあるウーファーから、ノイズが出る。よくよく検証すると、特定の音源からビビり音のようなノイズが発生し、出ないものはどんなに大音量でかけても出ないことが分かった。ピアノ曲はたいていノイズが発生するが、オケ曲は大丈夫なものが多い。ロック系はドラムの音に共鳴してノイズが出るものがある。

 ピアノでノイズが出るのはクラシック用のスピーカーとしては致命的である。ガッカリしたが、心底気に入ってしまったので、返品はもはや考えられなかった。
 手元に置いて活用することを前提に、どうしていくか考えてみることにした。


A-S801の内蔵DACの印象 (20.9.20)

 書斎のPCオーディオシステムは変遷の末、PCの音源を新アンプYAMAHA A-S801の内蔵DACを通して聴くという、これ以上ないシンプルな形に落ち着いた。音が目覚ましく良くなったことは前にも書いたところだが、そのほかにもいくつか、今までとは違うことに気づいたので、ここに簡単にメモしておきたいと思う。

@DSD音源の音量格差問題が解決。
 今までは、PCM音源に比べてDSD音源の音量レヴェルがかなり低下してしまう現象があった。音量が小さければボリュームを上げればいいだけのように思えるが、感覚的に適正と感じていた位置よりかなり上げて聴くことには、無意味とは知りつつ妙なストレスを感じずにいられなかったのも事実。それが、新アンプのDACでは音量差にほとんど気付かないくらいになっており、非常に気が楽になった。
 もともと両音源の音量レヴェルに差があるのを補正してくれているのか、あるいは音量差は前のDACのバグのようなものだったのか、どちらが本当のところかはわからない。でも、こうして音量差がないのはホッとすることである。
 いままでどんなに思い切ってボリュームを上げたつもりでもロクな響きにならなかったノット指揮のマーラー交響曲が、初めて壮麗に鳴り響いて感激した。この音源、かなり評判が良いのに今までは全く良さが分からなかったのが、初めてちゃんと聴けた感じがした。そして確かにこれは良い演奏であった。

A「排他モード」にならない。
 今までは、foobar2000を鳴らしている間はPCのシステム音などは同時に鳴ることはなく、ブラウザを起動して動画などを観ようとしてもfoobarが立ち上がっていたり鳴らした後には再生できなかったりすることが多かった。それが今度のDACではなくなり、PCの音がなんでも同時に鳴るようになった。これは当然ながら良い面もあれば悪い面もある。動画などを気を使わずに観られるのは良いことだが、音楽を聴いているときにへんな通知の音が鳴ったりするのは困りものである。うまい解決法が分からないので、システム音自体を鳴らない設定にしてしのいでいる。
 本来ASIOの排他モードでシステム音などは鳴らない筈じゃないかと思うが、よくわからない。ちょっと調べていたら、もしかしたらという記述を見つけた。YAMAHAのDTMソフトでは、ソフト以外の音を同時に出すことが出来るように、「バックグラウンド時はASIOドライバーを解放する」という機能があるらしい。たぶん使い勝手の面の配慮から、A-S801のDACではこの機能があらかじめオンになっているのかもしれない。


Topping D10をPCニアフィールドシステムで試してみた (20.9.14)

 書斎システムのDACの座をA-S801の内蔵DACに追われたTopping D10を、二階居間のPC音出しシステムに組み込んで試してみた。
 現在、このシステムで稼働中のUSB DACはオーディオテクニカのAT-HA40USBという古い製品で、ハイレゾは24bit96kHzまでしか対応していないしDSDのネイティヴ再生もできない。すべての音源を音にするために、foobar2000側でリサンプラーを使い、24bit96kHzにコンバートすることで辛うじて無事に鳴らすことが出来ているという代物である。
 これをTopping D10に置き換えることが出来れば、コンバートなしでDSDもネイティヴで聴くことが出来るようになる。アンプもToppingの製品なので相性もいいだろう。音だって、古いAT-HA40USBよりはずっと良いだろう・・
 そう思ってやってみたのだが、結論から言うと、駄目だった。単体で聴けばそんなに悪いとも思わないのだが、比較をしてしまうとどちらかがより音が良く、どちらかが悪いということになる。そうして、D10は音が良くない。やっぱり濁って聴こえるのだった。
 居間のPCニアフィールドシステムのDACは引き続き、当分の間はオーディオテクニカAT-HA40USBに頑張ってもらうことと相成った。


新アンプA-S801のDACを試してみた (20.9.13)

 書斎システムに導入した新しいプリメインアンプ、YAMAHA A-S801にはアンプ機能のほかに、USB DACが搭載されている。DACは「Digital Analog Converter」の略称で、CDやPCなどの音源のデジタル信号を、アナログ信号に変換する回路のこと。だからCDプレーヤなどには標準搭載されており、たとえば私が90年代からずっと使っているKenwood DPF-7002などはけっこう高機能のDACを使っていることがウリとなっていて、CDプレーヤとしてだけではなく単体のDACとして使えるモードが用意されたりしていた。PCはもともとオーディオ機器ではないので高品位のDACは搭載されていない。そこでPCオーディオをやるなら別にDACを用意することが必須で、私はいままでTopping D10という中華DACを使っていた。

 DACというのは縁の下の力持ち的な地味な機械であり、正直言ってどう機能しているか、また音の違いとかいったことはよくわからない。PCMの何kHzまで対応しているかとか、DSDのネイティブ再生(DSD音源をPCMに変換して鳴らすのでなく、DSDのままで直接再生する機能。DSDはSACDに採用されているフォーマットで、PCMとは原理が異なる)とか、そういうスペック的な部分で違いをうっすらと判別する程度だった。マニアになると使用オペアンプの違いである程度判断できたりするらしい。D10ではオペアンプを自分で簡単に交換してカスタマイズできる仕様になっていたりもする。

 この分野の技術は日進月歩であり、新しい製品であればあるほど基本的に性能が良く、音も良い。なので2018年初頭に出たD10のほうが、2014年発売のA-S801よりも有利な筈。しかもD10は単品のDACであり、アンプのオマケのA-S801のDACとは出自からして違う。スペック的にはPCM32bit384kHz、DSD5.6MHzネイティブに対応と、両者とも同じ仕様である。
 私の環境で言えば、DACはもう持っているのだから、果たして内蔵DACが必要か? DACなしでアンプ部はほぼ同スペックのA-S501で良いのではないか? と最後まで迷ったのだったが、結局電源部が強いA-S801にしたとは先日も記した。そんなこんなで当初はオマケDACにはまったく興味がなかったのだが、取説を見てみると接続はUSBケーブルをPCからアンプに直付けするだけと非常に簡単だったので、これなら試してみない手はないと思い、つないで聴き比べをしてみた。

 比較対象音源はまず、アマリリス四重奏団というドイツの若手弦楽四重奏団による、『Yellow』というモーツァルトとシェーンベルクの作品を収めた24bit96kHzのPCMハイレゾ音源。一曲目のモーツァルト弦楽四重奏曲第17番『狩り』の第一楽章を聴いてみた。
 なぜこれを選んだかというと、この音源、難物なのだ。ドイツのレーベルの録音によくある、残響まみれの音で、楽器の定位もぼやけているし音像は混濁している。楽音の質感も当然把握しにくい。なんかモヤモヤとムードでごまかそうとした、私見では室内楽の録音としては下の下の音源だった。
 まず、Topping D10を介して聴いてみる。新しいアンプは音像が大きく、各楽器の定位が良くて見通しの良い音になるのだが、その効果をもってしても、やはりちょっと混濁した感じがある。音が塊になって聞こえるし、ややキツい粗さのようなものも感じる。
 次にA-S801のDACに直接入力して聴いてみる。これが、一聴して音がかなり違う。初めは、各楽器の音が誇張されたように感じるくらい、分離して聴こえるのに戸惑いを覚えた。しかも楽音が甘美である。混濁感と粗さが払拭され、分離良く、甘い音色が感覚に媚びてくる。これなら下の下の録音どころじゃない。残響は確かに多めかもしれないが、程よい味付け程度に抑えられて聴こえる。なんだろう、この違いは?

 続いて、最近の定番聴き比べ曲、Widowspeakの『All yours』より二曲目の「Narrows」。
 これは聴き比べにはもってこいの曲であり、強めのベースラインがはっきり歯切れよく聞こえるか、前奏の鐘(鈴?)の音の質感、そこに絡みつくかすかなギターのオブリガート、そしてモリーのボーカルなど、聴きどころがはっきりしている。それにとにかく聴き込んだ曲なので、違いの判別も容易な筈だ。
 まずはD10を介して聴く。楽器の音はまあ、いつもの音であって特筆するところもない。前奏のギターのオブリガートはよく聴き取れない。そしてモリーのボーカルだが、楽器隊の陰に隠れたように、とても地味に聴こえる。歯切れのよい音とは言えない。そしてこれがいつものこの書斎システムの音であり、ボーカルがくっきりして前に出てくる寝室システムに魅力という点で一歩譲るところである。これがB&Wの、モニター的な音ということなんだろう?
 続いてA-S801のDAC直接入力。・・こ、これは!! 違いが歴然、鐘の音も明瞭だし、ベースが飛び出してくる! かすかなギターも良く聞こえる。そしてボーカルも全然違う! 輪郭のはっきりした声で、やや左手前方にしっかり定位している。これは寝室システムと同じ鮮度感のある音の出方で、しかもより自然で緻密な音色だ。同じスピーカーから出る音なのに、あまりの違いに愕然とした。そう、これこそB&Wの、モニター的な音だ!!

 もう一度、D10で聴いてみて、特にボーカルのところで違いが分かった。なんか、こちらでは微妙にぶれて、まるで二人で歌っているように聞こえるのだった。それも僅かに時差があるので、音の輪郭がにじんだようになってしまっている。このせいで、楽器が増えると混濁感が出てくるのだった。比較対象がないとこんなもんかで済ましてしまうが、比べてみるとその差は明らかだった。

 D10は比較的新しい単品DACで、評判もとても良い。まさか(比較的)古いオマケDACに後れを取るとは、予想だにしていなかった。やはり価格差もあるし、国産の技術力には未だに大きなアドバンテージがあるようだ。初めは要らないなんて思ったが、DAC付きにしておいて良かった!  世評が高くても、ちゃんと自分で比較してみないとダメなんだな。そんなことは当たり前のことだ、しかし日常の情報の奔流のさなかにあって、忘れがちになってしまうことであるのも事実。オーディオに限らず趣味というものは、違いを自分で判別し、味わうところに意味があるのかもしれない。

 こうして比較を終えたのだったが・・もう二度とD10の音は聞きたくなくなってしまった。もう、気持ちが悪くて、受け付けない。すぐにコードを引っこ抜き、撤去することとなった。いままでありがとう、バイバイ。そしてこれは居間のPC音出しシステムにでも組み込んでみることにしよう。


寝室システムにCDプレーヤを追加 (20.9.11)

 寝室の余りものシステム、理由はわからないのだが日に日に音が良くなってきている。
 最初のころは最も苦手としていたバロック・ヴァイオリンも実在感のある美しい音で再生できるようになった。もともと分離と音場感が非常に良く、低音も出るのでオーケストラ音楽もそこそこいける。なかでも難しい協奏曲の再生も、適度にソロが浮き上がる感じで楽しく聴けるようになってきている。

 ソロやメインボーカルが浮き出し、高音が華やかで、低音にはスピード感がある。そして全体に一種の艶のようなものがかかっているように聞こえる。
 音源に忠実を旨としている書斎のメインシステムとは、出てくる音のキャラクターが全く違うのだが、これはこれで魅力的だとけっこう気に入っている。これはスピーカーの性質の違いが大きいのだと思う。Celestion F15、これは掘り出し物だったかもしれない。
 こうなると上位機種のA1への興味も膨らんでくる。先日ヤフオクに美品が出ていたのを見かけたが、見逃してしまった。次出品されているのを見つけたら、頑張ってしまうかもしれない・・

 PCの記憶容量は貧弱で、外付けHDDもついていないので、気軽にいろんな音源を楽しめる環境にはまだないのが現在の寝室システムの弱点である。なのでせめてCDをすぐに楽しめるようにと、先日アンプとともに押し入れの中へと引退させた、Kenwood DPF-7002を再登場させた。同じ頃のいわゆるハイコンポだけど、ONKYO Intecと比べると一回り大きかったことに今更ながら気が付いた。

 Cranesの『Loved』をリッピングした音源と元のCDで聴き比べてみたら、音の違いが全くないのに驚いてしまった。
 以前、同じPCの内蔵プレーヤと同じDPF-7002とでCDを聴き比べたことがある。つまり、PCからUSB DAC(当時はオーディオテクニカのAT-HA40USB)を介したPCオーディオの音と、従来のCDプレーヤの音を聴き比べたのだが、かなり音は違っていて、PCのほうが良かった。今回もだから何らかの音の違いは認識できるだろうと思っていたのだけれど、まったくと言っていいほど、変化がない。foobarのOutputを変えたときのほうがよほど音が変わる。これはどうしたことだろうと不思議に思ったが、まあ、どっちのほうが音がいい悪い・・などと迷わないで済むのだから深くは考えず、これで良しとする。


書斎システムに新アンプを導入 (20.9.08)

 書斎のメインシステム用のアンプを購入してしまった。
 当初は今後時間をかけ、いくつか候補を絞って、実店舗で聴き比べなどもしてじっくり選ぼうと思っていたのだけれど、このところ音の鮮度の魅力で寝室システムに遅れを取りだし、さらには居間のテキトーなPC用音出しシステムにさえ肉薄されているような有様で、当座でもこのままにはしておけないと思うようになっていた。そこへ非常に手ごろな機種を見つけ、いろいろ調べるにつけても間違いはなさそうだったので、思わずポチッてしまった次第。なんか立て続けの購入で、いささかオーディオの沼に足を取られているような気もするが、いったん着手したものはある程度形がつくまでは中断したくないというもともとの性格にもよるのかもしれない。いずれにせよ、これでハード的にはいったん置き換え完了ということになるといいと思っている。まあ、これからまたどんな新しい欲望が湧いてくるかはわからないが・・

 購入したのはYAMAHAのプリメインアンプ、A-S801。

 基本的にはごく普通の2chのアナログプリメインアンプで、前面パネルもいたってシンプル。電源ボタンと、ボリュームつまみと、ソース切り替えと、トーンコントロールつまみ、二種類の回路回避のダイレクトボタン、そしてスピーカー切り替えボタンがあるのみ。見ただけで誰でも使えそうである。

 内部にはDACを搭載していて、PCMは32bit384kHz、DSDは5.6MHzネイティブに対応している。これは今使っているTopping D10と同スペックである。

 光入力でテレビをつなげるのも地味にうれしい機能だ。今まではできなかったので・・

 これを買う前にはAVアンプにしようかなどとも考えていたが、狭い部屋にいくつもスピーカーを設置するなんて現実的ではないと思い直し、それならごく普通の2chのアンプ、それも音質のことを考えて、なるべく多機能ではないアナログのアンプにしたいと思った。
 いろいろとネット上で見比べ、当初の第一候補はMarantzのPM8006だった。
 しかしやがてこのA-S801が目に留まると、一気にこちらに惹かれていった。
 まずはしばらく使用していたAVアンプDSP-AX440の、全体的な音の傾向、フラットで演出臭がなく、自然な音の出方が気に入っていたことがある。これが多分YAMAHAのアンプの傾向なのだから、よく知らないメーカーを冒険するより、YAMAHAのもう少し上位の機種を選ぶのが確実なのではないかと思った。
 ネット上の評判がすこぶる良いのも安心だったし、値段の安さにも惹かれた。希望小売価格は10万円で、13万のPM8006と近い価格帯だが実勢価格が6万前後とやたら値引率が高い。2014年発売なのでそろそろ次が出るのかもしれない。いずれにせよ、PM8006は実勢価格11万程度なのでちょっと構えてしまうが、A-S801ならお得感も相まって、比較的気楽に手を出せる気分になったのだった。

 本当はDACも要らないと思い、これの下位機種、DACなしのA-S501でもいいかとも思ったのだが、実際には差額が2万程度で、電源部などもかなり強化されているようだし、その他にもいろいろと違いはありそうな気もしたので、DACのオマケ付きのこちらにしておこうということにした。

 さて、購入してすぐに届き、すぐにDSP-AX440と入れ替え。音は・・分離が良くなり、音場感が前とは比べ物にならないくらいリアルになった。うん、でもやっぱり思った通り、音の出方の傾向はそっくり。とにかく自然で、なめらか。聴き疲れしない音だし・・うん、なんか、かつてこの書斎に新しくKENWOOD KAF-7002を入れた当時の音に近づいたような・・って、あれ?
 どうも、最初は、思ったほど、感激するほどのインパクトはなかった、というのが正直なところだ。まあ、こんなもんかな?

 とはいえ、エージングで化けるというレビューもあったし、これからいろいろとセッティングを詰めていく余地も残されている。少なくとも数年はこれと付き合うつもりなので、よりいい音を目指して工夫していきたいと思っている。


アンプをローテーション(たらい回し)した末、いったん落ち着く (20.09.06)

 書斎のアンプ故障に端を発したちょっとしたアンプ遍歴がようやく落ち着いてきたので、繰り返しになるが途中経過と現状を記しておく。

 まずは書斎のKENWOOD KAF-7002が長年の不調の末ついに引退となり、代わりに評判のいい中華デジタルアンプTopping PA3を導入した。これは変な癖もなく素直な性質の美音で、室内楽など本当に良かったものの、残念ながら低音があまりにも弱くオーケストラ音楽など全く楽しめなかったことからお役御免となった。その後当座しのぎに居間にあったAVアンプYAMAHA DSP-AX440をつないで今に至る。これはまったく、どうということもない音だが低音から高音まで音源に収録されたデータを潤色なくそのまま出してくる感じなので特に悪い印象はない。

 さて、中華デジアンTopping PA3はその後、寝室の余りものシステムの一翼を担うこととなったが、どうやらスピーカーCelestion F15との相性が悪く、高音域のどこか電気的な響きがキンキンと耳障りで、ちょっと落ち着いて聴いていられなかった。やむを得ずヤフオクで往年のONKYOのハイコンポINTECシリーズの上位機種アンプA-909Xを落札して入れ替えた。これもはじめのうちは高音のバランスが悪く、クラシックは特に違和感があって聴けない感じだったのだけれど、ここへきて不思議なことに、音のまとまりが良くなってきた。耳が慣れてきたのだろうか? 機械のエージング的な部分は、アンプもスピーカーも中古なのであまり考えられないような気がする。いずれにせよ、今はキビキビした音で分離良く、むしろ良すぎてあまりまとまりがいいとは思えないが、特にロック系は面白く、クラシックもそこそこ聴けるようになってきた。
 なんだか、音の骨組みばかり目立っていたのが、次第にその間が血肉で埋まってきたような感じだ。

 中華デジアンTopping PA3はその後、二階の居間へと移動した。ここには普段使いのパソコンが置いてあり、オーディオ用途というのではなく、音出しのためにこれまた中華アンプLepai(Lepy) LP-2020AにB&WのDM601S2をつないで使っていた。このLP-2020AをPA3と交換した。
 この効果は目覚ましいものだった。今まではなんとなく籠った音で、ラジカセに毛が生えたような音しか出ていなかったのが一変、非常にクリアな明るい音が流れてきたので驚いてしまった。もともと、このスピーカーがあまり良くないのだとばかり思っていたが、そんなことなかった。アンプの違いがここまで音に変化を生むなんて・・完全に認識を新たにした。
 PA3もここにようやく安住の地を見出したのだった。まあ、たらい回しにはされたものの、最終的にDM601S2の相方となったのだから実質格上げではないだろうか。
 そして、こうした廉価デジアルアンプの適切な使い方も、これでわかったのだった。
 今の使い方では、スピーカーはPCのすぐ両脇に位置し、私はスピーカーからおよそ60cmほどしか離れずに音を聴くことになる。これだとこのアンプの分離の良さや音色の純粋な美しさが引き立つし、低域の弱さは目立たない。そしてあまりボリュームを上げなくとも十分な音量を感じることができる。LP-2020Aではある程度音量を上げると、外にまで音がかなり漏れてしまいちょっと気が引けたのが、PA3ではさほどではない。
 PA3はPC用のアンプとして、至近距離で音を聴くというような用途に最適であり、多分そのような用途に合わせて設計されている製品なのだと気が付いたのだった。


foobar2000とTopping D10でCD音源を再度DSD化 (20.09.01)

 丁度一カ月前に、書斎システムでPCのオーディオプレーヤfoobar2000にコンポーネントDSD Processorを導入することにより、PCM音源をDSD化することができるようになった。その時はいちおう「できるようにする」ことが主目的で、結果的に音量が下がってしまったり、なんだか元気のない印象を受けたので、結局これは使わないことにしたのだった。

 その後、手持ちの大方のDSD音源がDSD64(2.8MHz)なので、これをDSD128(5.6MHz)にアップコンバートするようにした。これはもともとDSD音源なので音量も変わらず、音の雰囲気も変わらず、従って変化もさほどではないものの少し音に潤いが出たようで、プラセボ効果かもしれないが悪くもなっていないのは確かなのでこのままにしてある。

 今日、手持ちのCDを何枚かPCのCDプレーヤで再生してみた。ここ数年、ハイレゾに感化されてCDなぞ聴くに堪えんとばかりに離れていたが、今年になってから回帰が進んでいる。何しろ曲の蓄積が違いすぎる。それに、昔からのお気に入りのCDのなかにはデジタル録音でハイレゾ化が望めないものもたくさんある。今日はNAXOSのヨハン・シュトラウス集5巻(この巻が突出して好きだ)とシュランメルン音楽集、そしてSaphirレーベルのレジス・パスキエ、フィリップ・ビアンコーニとパリジイ四重奏団によるショーソンのコンセール他を収めた一枚を聴いた。

 ショーソンのコンセール、現状、ハイレゾでも何種類か聴くことができるが、ハッキリいってヒドい代物揃いである。何が酷いと言って、録音が酷いのだ。「協奏曲」であるということに囚われすぎていて、ソリストに焦点を当てすぎた変な録音は異様で聴いてられない。ソリストもバックの弦楽四重奏との差別化を図るためか、やたらと気張っていて聴き疲れしてしまう。
 レジス・パスキエのこの曲は二種類あって、旧盤のレ・ミュジシャン盤も新盤のこれも、ソリスト二名とバックの弦楽四重奏がまるでピアノ六重奏のように一体化していて非常に自然である。それでもやや小ぢんまりとまとまった旧盤に比べ、新盤は若い常設のカルテットを迎えて華やかさが増している。本当にこれは名盤だ。

 しかし、今日聴き直してみて、演奏も音の定位感もやはり最高なのに、音色自体の品質が、悲しいかなやはりハイレゾ(の良いもの)には敵わないと感じざるを得なかった。2000年代に入ってからやや艶を失い荒くなった(贔屓目に見れば、「自在さを増した」ともいえそうだが)パスキエの演奏が、CD音質のせいでさらにキツい音になってしまっている。尤も、うちのアンプが粗悪なせいもあるだろうが。

 そこで、一縷の望みを託して、これをfoobarでDSD128に変換してみた。すると、例によってビックリするほど音量が低くなったが、まあこれはボリュームを上げればよいのだから問題ない。問題の音質だが、これがかなり変わったように感じられる。少しザラッとした音で、強弱の変化も表情に乏しく聞こえたパスキエのヴァイオリンが、この人独特の艶やかな美音とともに、ボウイングにより変化する音色の微妙なニュアンスも聞き取れるようになった。高音の美しさが比類ない。ピアノも芯が強くなり、カルテットも立体的に聴こえる。
 あと、このCDにはサンドリーヌ・ピオーの歌う『果てしなき歌』が入っていて、これも素晴らしい。

 もともとCDを4倍にアップコンバートして176.4kHzで聴いていたのが、DSD128(5.6MHz)にするとPCMに換算してさらに倍の352.8kHz相当になるようだ。まあ数字の大小にどんな意味があるのか、はっきり言ってよくわからないが(しかももとはCDなので、これは「ニセレゾ」そのものである!)。

 とりあえず、こうして聴感上の向上が感じられたので、44.1kHzのCD音源はDSD128化するように設定した。それ以外の「ハイレゾ」PCM音源は従来通りPCMのまま4倍にアップコンバートして聴くことにする。

 それにしても、今仮に使ってるAVアンプ、壊れた前のアンプや中華アンプより音はずっといいんだが、たぶん前のアンプは相当前から音質面で寿命を迎えていたのではないかと思う。中華アンプについては稿を改める。そして、きっとほかの「まともな」アンプに比べたら、このAVアンプ、「論外」なんじゃないかという気がしてきた今日この頃だ。これから少しずつ調べ、試聴にも出かけて、満足できる一台を手に入れたいと思っている。


寝室のアンプをONKYO A-909Xに交換。中華デジアンTopping PA3と音を比較してみた (20.08.21)

 僅か半月前にスピーカーをヤフオクで落札し、寝室のシステムをそれなりに整えたのだったが、今度はアンプを落札してしまった。ヤフオク遊びは癖になるところがあるので、気をつけないといけないな・・
 さて、今回落札したのは、ONKYOのハイコンポ、INTECシリーズの最上位アンプA-909Xである。発売が2000年だから随分と古いアナログアンプで、定価は税抜41000円。ヤフオクにはたくさん出品されているが、整備済の美品を5500円で落札することができた。もっと本格的なオーディオ用アンプもたくさん出品されている中、はっきり言って中途半端なこれを選んだのは、寝室の置き場所が文庫本棚の上なのでサイズ的に小ぶりなものにする必要があったこと、それから、長い間KENWOODのハイコンポを使ってきたので、親しみのようなものと、ONKYOのはどんなものだったのだろうという興味があった。KENWOODのは音源の音を変に加工せず、そのまま鳴らす感じのものでB&Wのスピーカーに合っていたと思う。当時聴き比べた印象では、DENONは線が細く、ONKYOはけっこう音に色付けがある印象だった。
 寝室でこれまで使っていたのは中華デジアンTopping PA3。これは非常に解像度が高くクリアな音で、書斎のB&W MATRIX805Vでは室内楽は文句のつけようがなかったが、低音が弱すぎて交響曲などはダメだった。寝室に移してCelestion F15で聴いてみたところ、解像度の高さと中声部の艶が印象的で、低音にもさほど不満は持たなかったものの、高音がやや金属的にシャカシャカ響き、次第にそれが苦痛に感じるようになってきた。寝室に置いて聴くという用途からも、あまり刺激的な音響は好ましくない。多分これはアンプというよりはスピーカーの癖なのだと思う。しかし、当面スピーカーを変える予定はないので、アンプを替えて様子を見てみることにする。

 まずはWidowspeakの3rd『All Yours』をかけてみる。これは男女二人組のブルックリンのインディードリームポップバンドで、現役では唯一動向を注視し、活動を追っているバンド。なんといってもボーカルのモリー・ハミルトンの愁いを帯びたウィスパーヴォイスが唯一無二である。この夏3年ぶりに新譜『Plum』が発表されて健在な様子に安心した。プレーヤもないのに限定盤レコードを注文してしまった(過去作も全部LPで持っている)が、音源のダウンロードは月末までおあずけなので楽しみに待っているところ。
 『All Yours』はややアコースティックな傾向のアルバムで、録音がとびぬけて優秀である。Topping PA3とCelestion F15の組み合わせでは鮮烈な美音が非常に印象に残った。何百回となく聴いてきたアルバムなのに、聴いたことのなかった音が聞こえたし、まるで目の前で演奏しているかのような位置感、ベースラインの明快さなどが素晴らしかった。ただ、その上に被さってくるやや電気的な高音が気にかかった。
 ONKYO A-909Xで聴いてみると、すぐに感じたのは、「馴染みの音に近づいた」ということ。解像度がやや甘くなり、それぞれの音の間に響きが乗って、温かみが出ている。ただ、Topping PA3の解像度の高さ、と感じられるもの、は、実は低音成分が薄いせいでそれぞれの音が細くなり、結果的に定位感が分かりやすく出るのではないかと思っている。だから「解像度が甘い」というのは当たらない言い方かもしれない。
 アコースティックプレゼンスボタンというのがついており、低音を補強するもののようだ。これをonにしたところ、見違えるほどよく聴こえるようになった。響きに濡れたような艶がかかって、モリーの声にやや少女的な甘さが感じられたのは意外。ちょっとホープ・サンドヴァルみたいになった(もともとよく似ているが)。高音のシャカシャカ感はほとんど感じられない。これは成功のようだ。

 続いて、クラシックをかけてみる。フルネ指揮のショーソンの交響曲、シューベルトの弦楽五重奏曲、ルクーのヴァイオリン・ソナタ、ビーバーの『ロザリオのソナタ』などを聴いてみたが、こちらは一聴して、「弦楽器の音が変・・」。平坦な、シンセのような音になっている。これは良くない。
 アコースティックプレゼンスをoffにし、ダイレクトで聴いてみたところ、まあまあ、良くなった。クラシック系は原音にいかに近づけるかが勝負だと思っているので、変な色付けは全く必要ない。でも、そうしたらしたでちょっと寂しい音だ。ビーバーのバロック・ヴァイオリンが特に良くない。残念ながら、ONKYO A-909Xはクラシックにはあまり向いていないようだと言わざるを得ない。
 と、いうか、そもそもCelestion F15がクラシック向けではないようだ・・

 それでも、ポピュラー系は非常に楽しめる音になった。書斎で聴くよりいいかもしれない。なので、こちらは主にポピュラー系を楽しむ用にして、うまく使い分けていく方向で考えていきたいと思う。


寝室システムのスピーカーをCelestion F15に変更 (20.8.06)

 書斎のシステムをちょこちょこといじっていくにつれて、お蔵入りとなった機械が寝室の使わない机の上に積み上がっていくこととなり、ならばとこれまた使わずにいたONKYOのユニバーサルプレーヤに繋げて聴けるようにしたのはいいが、結局、音の出口であるスピーカーの質が悪すぎて鳴らす気が起きない。もう、折角なのでスピーカーもそれなりのものを入れてやろうと思いたち、しばらくネットを巡っては定価10万以下で評判のいいものを調べたり、ヤフオクの出物をチェックしたりしていた。
 結局、実際に試聴してみない限り、スピーカーの音のことはわからない。いくら食べ物について書いたものを読んでもその味のことは食ってみなけりゃわからないのと同じである。ただ、売られていた値段と、メーカーの特色やリスナーの印象記から窺える大雑把な音の傾向は推察できる。あとは見た目と、「なんとなく惹かれる!」という勘を頼りに、一組のスピーカーをヤフオクで落札してみた。
 イギリスのメーカー、CelestionのF15というスピーカー。
 Celestionというメーカー自体、恥ずかしながら私はほとんど知らなかった。1924年創業の老舗で、昔(70年代ごろ)はオーディオ用としても結構有名なメーカーだったらしいが・・今はオーディオマニアや知る人ぞ知るという存在のようだ。現在ではもっぱらギターアンプ用のメーカーとして、その筋ではとても有名なようである。
 このF15は、2001年に発売されたマルチチャンネル用のスピーカーシステム、Fシリーズの一翼を担うもので、フロントスピーカーのF10(W174xH260xD187 ツィーター1.9、ウーハー10cm 重量3.5kg)に比べ、W198xH320xD272 ツィーター1.9、ウーハー13cm 重量5.0kgと、ちょうど一まわり大きい。リア用という記述も見たが、どちらかと言えばF10の上位機という位置づけではないだろうか。定価はペアで4万弱だったようである(データをどこかで見たはずだが、ちょっと失念して今は見つからない)。
 とにかくこのF15、ネットをさまよってみてもほとんど情報もなく、かなりマイナーな機種であることは確かだが、一目見てなにかピンと来るものがあり、頑張って落札してしまった。とはいえ定価から見ても安値で落札できた。
 数日後到着し、さっそく点検、異状なし。古いもの故ニスの剥がれなどはあるものの埃一つついてない美麗な状態でとても良かった。
 つないで音を聴いてみる。・・これは、慣れ親しんだB&Wの音とは対照的。音が前に飛び出してくる! 一聴してかなり元気で派手目の音。やや電気的な霧のような響きがまとわりつく感じだが、楽音自体はかなり素直な音で、全体的に若干演出臭はあるものの下品ではない。とにかく分離が良く、個々の楽器がはっきりしている。慣れない響きにはじめはちょっと戸惑ったものの、嫌いな音ではない。
 しばらく、いろんな音源をかけてみてどんなものか検証したいと思っている。


foobar2000とTopping D10でCD音源をDSD化してみた(が、すぐにやめた。とはいえ全般的な音質は向上) (20.08.01)

 前回寝室に移してあった余った機材にUSB DACを追加して、曲がりなりにも音出しができるようになった。その際PC内のプレーヤであるfoobar2000の設定をいろいろいじくったのだけれど、ほとんどあてずっぽうでとりあえず各音源フォーマットが再生できればそれでよいというスタンスであった。それでもDSD音源を鳴らすのには手間取った。今回はその時の経験をもとに、書斎のメインシステムにもちょっとした工夫をしてみたというお話。

 なんでも、foobar2000でCD音源をDSD化して聴くことができるらしい、とどこかで目にしたのが発端であった。そんなことができるとは知らなかったし、最近こそ音源のバラエティの圧倒的豊かさによってハイレゾからCD音源に回帰しだしているものの、ここ3、4年ばかりはハイレゾにかまけて、CD音源などもう聴くに堪えないくらいに考えていた。そんなCD音源をSACDの音質にできるのなら、願ってもない話である(たぶん「ニセレゾ」レヴェルの眉唾話だと思うが、タダでできるなら試してみない手はない)。
 そこで少し調べてみると、foobar2000にComponent「DSD Processor」foo_dsd_processorというのを入れてやることで、任意の周波数のPCM音源を任意のDSDに変換できるようになるらしい。
 おや、これは見覚えがある。前回S.M.S.L.のM100を寝室の余りものシステムに導入した際、ドライバーを入れただけではうまく動作しなかったのでとりあえず色々入れてみたなかの「foo_input_SACD」ファイルに、SACD Decorderと同梱されていたやつだ。寝室システムにはとりあえず入れてはみたが、よくわからんのでそのまま放置していた。そこで、とりあえず寝室システムで試してみる。
 寝室PCのfoobarのpreferenceを開くと、foo_dsd_processorを入れたことでToolsタブのすぐ下に「DSD Processor」という項目ができているのでそこをクリックして開く。左上の「use DSD Processor」にチェックを入れると入力できるようになる。とりあえずCD音源だけDSD化できれば良いので、Input:44100の項のOutputにとりあえず'DSD 128'を選択、次になんか4種類出てくるが、違いが判らなかったのでとりあえず'SDM TypeA'を。もとのToolsタブから「SACD」をクリックして開き、DSD Processorの項で「DSD Processor」を選ぶ。
 これで、CD音源を再生してみるが、デイスプレイには「176」と表示されたままで何の変化もない。これは44.1kHzをResampler(SOX)で4倍にアップコンバートしているために表示される数値である。たぶん、このResamplerをオフにすればうまくいくだろうと思ってやってみたら、果たしてうまくいった。ディスプレイには「128」と表示され、これはたぶんDSD128のことなのであろう(M100はD10と異なり数字しか表示されないのでギミックとしてちょっとツマラナイ)。音質の変化は、スピーカーが酷いので正直よくわからなかった。うまくいったことでとりあえず良しとして書斎のシステムに適用してみることに。

 書斎のfooberはv.1.5.3で、4月にPCを買ってすぐに入れたもの。試行錯誤の履歴がないので、Componentsもすっきりしたものである。D10のドライバーに(親切にも!)添付されていたfoo_input_SACDはv.0.7.8。これと置き換える形で、foo_input_SACD v.1.2.3と、同梱のfoo_dsd_processorをインストールした。
 まず目につく変化は、OutputのDeviceに、「DSD:ASIO:foo_dsd_asio」「DSD:ASIO:Topping USD Audio Device」というのが追加されていること。そうして前にあった「ASIO:foo_dsd_asio」「ASIO:Topping USD Audio Device」はどちらも残ってはいるが、DSD音源が再生できなくなっていた(「ASIO:Topping USD Audio Device」のほうは前からできなかったので、「ASIO:foo_dsd_asio」のほうを使っていた)。これは寝室システムの時と同じ現象であった。
 OutputのDevice、「DSD:ASIO:foo_dsd_asio」「DSD:ASIO:Topping USD Audio Device」の両方ともDSDが再生できたので、どちらを使うかは好みで良さそうだ。とりあえず「DSD:ASIO:Topping USD Audio Device」にしておいた。

 そして新しく加わったDSD Processorを試すべく、上記の設定を行った。
 CD音源(カトリーン・ショルツがソロと指揮をしたモーツァルトのヴァイオリン協奏曲第3番)をこれで鳴らしてみたところ、第一印象は「さすがDSD、やっぱり音が小さい・・」
 ボリュームをPCMでの聴感と同じくらいまで上げて聴いてみる。確かに変化はある。楽器の音がクリアになり、分離も良くなっているように聞こえる。序奏のトゥッティでもソロ・ヴァイオリンが一緒に弾いているのがよく聴き取れるし、管・打楽器の音が鮮やかだ。
 ただ、最初に感じたおとなしさが、ボリュームを上げてもついて回る。もとのPCMに戻すと確かに音は雑に感じるが、バーンと前に出てくる音の勢いは気持ちのよいものだ。そしてこれをResampler(SOX)で4倍にアップコンバートしてやれば、音に滑らかさと分離のよさも加わって、あとは好みの問題・・という感じであった。
 結局、DSD Processorは使わないことにし、Resampler(SOX)を元に戻した。ただこれは結論ではなく、今後ともいろんな音源で比較してみたい。

 そんなこんなで、結局徒労かとも思われたが、実際は一度、foo_input_SACDもv.0.7.8に戻したのだった。それは後述の現象を回避したかったためだったが、その際にもCD音源(ライプツィヒ四重奏団のシェーンベルク、弦楽四重奏曲第2番)を比較してみた。そうしたら、明らかにv.1.2.3の「DSD:ASIO」Outputの音が良い。これはちょっと、比較にならないほどの差があった。そこで結局foo_input_SACDは新しいv.1.2.3にすることに。

 今までの構成では、foobarでの各種音源から、YouTubeまで、再生できないものはなかった。ところが、foo_input_SACDをv.1.2.3にしたところ、思わぬ副作用が出た。映像ファイルとか、YouTube動画とかが再生できなくなってしまったのである。
 前述のごとくいったん元に戻したりしていろいろやってみたところ、新しいfoo_input_SACD v.1.2.3ではfoobarと映像プレーヤを一緒に使うことができない。foobarを使ったら、映像プレーヤは再起動させる必要があることが分かった。
 面倒だが、このくらいのことであれば音質のメリットを取って、我慢しよう。

 音質はこれでかなり向上した。さらに良くなる方法もきっと、知らないだけで、あるいはまだ出てきてないせいで、あるに違いない。アンテナをしっかり張って、さらなる音質の向上を図りたいと思っている。


寝室の残りものシステムのために、USB DACを追加 (20.07.18)

 今年に入ってから、書斎のオーディオ環境が激変した。きっかけはアンプが壊れたことだったが、実はその数年前から、CDプレーヤ中心の再生環境から、PCオーディオへの移行が静かに進行していたのだった。アンプと一緒に今までのCDプレーヤもDATもお蔵入りすることとなり、ついでにPCも買い替えて、更には代替のアンプもとっかえひっかえすることとなった。
 その結果余りものの機材がたくさん出てしまったので、前のPC、NECのVersaPro VJ16ER-Dと、デジタルアンプTopping PA3を中心にして寝室に簡易なPCオーディオ環境を作ろうと思い立った。寝室でも早く目覚めてしまった朝方などに寝ながら音楽を聴きたいときはあったのだが、そんな時は隣の書斎で鳴らしていた。くぐもったそんな音を漏れ聞くよりは、簡易でも室内で鳴らしたほうがマシだろう。スピーカーは、10年以上前に買ったONKYOのユニバーサルプレーヤがあるので、そいつを流用する。ただこれ、プレーヤのほうも電源を入れると持続的にブーンと機械の作動音がするような代物で、スピーカーの品質も、正直お粗末なものだ。でもまあ、手持ちはこれだけなので仕方がない。
 
 あと足りないものはUSB DACなので、Topping D10を買い足そうと思った。ところが、Amazonで見てみるとどうしたわけかどこも品切れ。少し前から、コロナの影響か、どうか、中華オーディオ製品は軒並み購入しても届くまでに1か月以上かかるような状態が続いていた。待つのも嫌だが、ないのならばもう仕方がない。似たようなところですぐ手に入るものを探してみたら、ほぼ同等品で、S.M.S.LのM100というUSB DACを見つけた。しかもこれはすぐに届くようだったので、設定のし直しなんかは面倒くさそうだと思ったものの、とりあえず購入。

 すぐに届いたそれを寝室のPCにつなぎ、設定を試みた。製造元のHPからドライバーをダウンロードし、音出ししてみると。CDもハイレゾも、PCM音源は問題なく音が出た。Topping D10のほうはソースの違いによってディスプレイにPCMとかDSDとか表示されるが、こちらは周波数の数字しか出ないのが物足りない。
 そんなことより、問題はDSD音源の音が出ないことで、これはネットで調べたところ、foobar2000のほうにいろんなコンポーネントを追加してやる必要があるらしい。ネットにはいろんなことが書いてあるので、とりあえず入手可能なものは入手してみて、順番にインストールして様子を見てみることに。最新の「foo_input_SACD」ファイル(古いものはもう入っていた)の、SACD Decorderと、同梱されてたDSD Processorというのを入れてみたら、聴けるようになった。具体的には、OutputのDeviceに、「DSD:ASIO:なんちゃら〜」というのが4つほど新しくできていて、「DSD:ASIO:TUSBAudio ASIO Driver」というのがこのDAC用のようだが、聴き比べるとそれぞれけっこう音が違って「DSD:ASIO:DSD Transcoder DoP/Native)」というのが耳障りが良かったので当面はそれにしておいた。

 これで、一応、寝室のほうのPCオーディオ環境も形だけはできたのだが、とにかくスピーカーが酷い。ちょっとこれでは聴く気が起きないなぁ・・


中華デジアンTopping PA3をお役御免に。代わりに古いAVアンプを引っ張り出す (20.05)

 二月中旬にこれまで20年以上使い続けたアンプKENWOOD KAF-7002を引退させ、代わりに評判の良い中華デジタルアンプTopping PA3を導入した。これは非常に解像度が高く、今まではニジんだように太く、平面的に鳴っていた弦楽四重奏の各楽器が、細身の音でしっかり定位したのには感激した。もうずっとこれでいいのではと思い気に入っていたが、3か月ほど聴き込んでみて、ちょっと印象が変わってきた。

 一言で言って、これ、得意の小編成の音楽はしっかりまとめてキレイに鳴らすことができるが、編成が大きくなると途端に非力になる。特にオーケストラ音楽はからっきしダメで、低音がほとんどといっていいほど、出ない。コントラバスや打楽器系の音が鳴ってるのは聴き取れるが、腹にこたえるような響きは一切感じられない。音楽の土台となる低音が貧弱では、マーラーなどの肥大した巨大交響曲もイーシーリスニングのようにチャラチャラと軽く聴こえてしまう。
 余談だが、マーラーの交響曲第五番は人気曲で、録音もたくさんあるけれど、これほど音響的に難しい曲も滅多にないのではないだろうか。第一楽章の葬送行進曲で、冒頭、トランペットのファンファーレが鳴り響き、直後全楽器がffで入ってくるところで、どうしたわけかたいていの録音では、穴の底に落ちていくようなくぐもったシンバルの一撃をきっかけに、全楽器の強奏のほうが、トランペットよりも小さい音になってしまう。なんかリミッターでもかかったようにいきなり音がしぼんでしまうのだが、これは何なのだろう。ほぼ全ての録音でこうなるので、ひょっとしたら私の機械に欠陥があるのかもしれない。けれど、いつか、名録音に巡り合って、実演で聴くときのように音響の渦に飲み込まれるような感覚を味わいたいと思っている。

 しばらくオケ音楽を聴く気も失っていたが、さすがにこれではまずいと思い立ち、新しいアンプの物色を始めた。
 しかし、私にとってアンプというのは馴染みのない、謎の機械で、電気信号を増幅してスピーカーに送るだけなのに、高級品には信じがたいような値段がついている。ピュアオーディオ用となれば入門機だって数十万とかするので、到底手が出ない。しかし安物を買ってがっかりするのももう嫌だし・・

 そんなことを思いつつ、例によってネットの海やヤフオクをさまよっていたある日、居間のテレビが目に留まった。これ、今となっては珍品のブラウン管テレビで、契約しているケーブルテレビ局がケーブル用のコンバータをくれたのでまだ使えているが、およそ時代遅れの、粗大ゴミに近い代物である。猫が上に乗って寝るのが好きなので猫の寝床として残してあるものだ。
 かつて、これを使ってホームシアターを組もうと思い立ったことがある。結局接続が面倒で挫折したのだが、そういえば、その時に買ったAVアンプがほとんど使ったこともないまま、化石のようにテレビ台の下に眠っているではないか。
 さっそく、そのAVアンプ、YAMAHA DSP-AX440を書斎に持っていってPA3と交換。今まで、書斎のテレビを見やすくするために、楽器製作用のスプルースの大きな角材を台にしていたのだが、偶然にも高さがそれとほぼ同じだったので、テレビ台代わりとしても使えて好都合であった。
 音を出してみる。AVアンプだけあっていろんなプリセットの音場がついているが、そういうのは要らない。ただのSTEREOモードで聴いてみる。
 うーむ、特にどうということもない音だ。ただ、室内楽は比較的締まった音で定位感も良好。難物のドーリック四重奏団の分厚い優秀録音(たぶん・・)も室内楽的に美しく響く。そしてオケ音楽もそこそこ、低音も出て安心して聴いていられる感じ。前の二台を足して二で割ったような感じだ。
 確か最も安い部類の機械だったように記憶している。それでこれだけの音なのだから、国産侮りがたしと認識を新たにした。多機能な分、コスパは中華アンプよりいいくらいではなかろうか。

 これ、いつまで満足して聴いていられるかはわからないが、当面は使えそうだ。そしてもし次を選ぶとしたら、やはりAVアンプから探すことにしよう。現代のものはHDMI化していて、昔の複雑怪奇な接続問題も解決しているようだし・・


PCを買い替え (20.04.23)

 今までNECのVersaPro VJ16ER-Dという、CPU速度が1.60GHzしかないロースペックPCをオーディオ用に使用していたが、テレビで動画を見られるようにしたいと思い、買い替えることにした。このPCではストリーミング再生がほぼ不可能だったし、普段使っている動画再生ソフトもすぐにフリーズしてしまい使えなかった。その上、HDMI端子がついていないのが致命的だった。

 ヤフオクで、SSD換装済の富士通製ノートパソコンLIFEBOOK A572/Eを落札した。CORE i5 2.60GHz、メモリ4GB、SSD128GB、DVD-R、無線LAN内蔵といったところのスペック。最新機種に比べればかなり劣るが、前のよりはずいぶん良いし、オーディオ用途には特に不足のない程度である。HDMI端子は当然ついている。Windows10になっているのは正直要らなかったけど、時代の趨勢なので仕方がない。
 Win機は長らくNEC製を好んで使ってきたのだが、ここ数年で富士通にシフトしてきている。書斎のメインマシンも富士通だし、昨年も一台、富士通のノートパソコンを落札した。これは仕事で使う予定だったのだが予定が変わって不要になったので実家に譲った。こちらはSSDが480GBだったので手元に残しておけば使えたかもしれない。富士通のビジネス用ノートパソコンはデザインが四角くて武骨なのが良い。これもキーボードが白かったり(しかも黄ばんでいる)、いかにも垢ぬけてなくて気に入った。
 自宅に届いてすぐに点検、異状なし。とりあえずfoobar2000をインストールし、Topping D10につないで音出ししてみる。Win10環境ではドライバーが不要と聞いていたので確かめてみたら、確かに音は出る。でも、ディスプレイの数値がうまく表示されなかったので、改めてドライバーを入れ、無事に正常に機能するようになった。
 さて、PCを交換しての第一印象。まず、なによりも起動が速い。SSDでWin10なので基本が旧式でもとても速く感じる。我が家の二台のデスクトップWin機、昨年末に7から10に遅まきながら変更し、同時にSSDに換装した。はじめは速いと喜んでいたが、なんかフリーズしやすくなったり変なところでやたら遅くなったりと、ちょっと気持ちが悪かったので一台は7に戻し、もう一台は様子見している。ただこちらは文章を打ち込んだり編集したりといったことはしないので、10でも問題ないかもしれない。いずれにせよ7には戻せない。
 音は別に前と変わらない。やはり、HDMIを介してテレビでPCの動画が見られるようになったのが一番の進化だろう。


アンプ絶不調、中華デジアンTopping PA3を導入 (20.02.18)


 前項の続きです(以後、新しいトピックを上書きしていく形で進めていきます)。

・アンプついに壊れる
 前項に記した1997年ごろのシステムを、骨子は換えずに2020年の今までだましだまし、使ってきたが、ついにアンプKAF-7002のinput自動切り替わり問題が我慢ならないレヴェルまで悪化してしまった。音楽を聴いている間に、カチカチとinputが切り替わり、音が途切れてしまう。いつこの症状が出るかわからず、頻発して、音楽を楽しむどころではなくなってしまった。
 この症状は06年にいちど修理に出した理由となったものだが、その当時から原因不明と言われ、根本的な解決には至らなかった。この機械の音自体にはさして不満はなく、ずっと使い続けたかったのだけれど再び修理に出したとしても解決することはないような気がする。私は前のクルマも16年乗り続けた。気に入った手持ちのものは飽きずにとことん使い続けたいほうで、買い替えに楽しみを見出すタイプではない。だから、正直なところこの故障にはかなりの苦痛を覚えずにはいられなかった。とはいえ同じものをヤフオクか何かで買い直すほどの酔狂も持ち合わせていない(なぜかこのアンプ、プレミアがついていて状態の良いものは今でも結構高値がついている)。
 とりあえず、USB DACが良かった中華メーカーToppingの、これまた評判が良くて廉価なデジタルアンプ、PA3というのを導入してみることにした。長々とアンプ問題で悩んだ割に、いったんAmazonでポチればすぐ到着である。
 アンプKAF-7002と同時に、CDプレーヤDPF-7002も押し入れにしまうことに。これでKENWOODの「ハイコンポ」K'sシリーズは我が家の表舞台から姿を消すこととなった。尤もDPF-7002のほうはもう何年も使っていなかったのだが。

・Topping PA3到着
  Amazonでポチった翌日の2月18日には届け先のコンビニに届いた。さっそく取りに行き、開梱。
 噂には聞いていたが、さすがに小さい。前面のノブを含めてちょうど文庫本サイズといったところ。その割にはずっしりとけっこう重量感があって、モノとしてなかなか魅力的である。
  接続はシンプルなもので、造作もなかった。DACとBDプレーヤをつなぎ、スピーカーに出力するだけ。ちなみに、現在見た限りにおいて、中華デジアンで二つ以上のライン入力端子があるのはToppingの製品だけのようである。
 音出しした瞬間に変化を実感。KAF-7002が暖色系で太めの音だったのに対し、正反対の寒色系の細身の音。非常にクリアで見通しが良く、定位感も良い。これは素晴らしい。遠近感に乏しい前アンプの音にちょっと食傷気味だっただけに、すっきり、しゃっきりしたこの音は目が覚めるように新鮮だ。
 今まで、まるで弦楽オーケストラのようなぽてっとした太い音がどうしても気に入らずに滅多に聴かなかったドーリック弦楽四重奏団のChandos音源が、生まれかわったように素晴らしい音で鳴り出した。
 ただ、オーケストラ音楽の音の薄い感じは気になった。これは機械を馴染ませれば改善するか、しばらく様子を見よう。


PCオーディオ事始め (20.07.29〜30記)

・新居とオーディオ(1997ごろ)
 私の自宅には大まかに三か所、音楽を聴ける場所があって、二階の居間、三階の寝室と書斎がそこである。実際には二階の居間で音楽を流している時間が最も長いのだが、こと「音楽鑑賞」と構えて聴く場合には三階の書斎に行くことになる。メインのシステムがそこにあるからだ。
 この部屋は変則的なL字型の八畳で(つまりは、自宅の間取りを設計した際に余った部分を書斎としたのだった)、一方には本棚が置かれ、一方にはオーディオと楽器、そして机を置いている。もともとここで音楽をやるつもりだったので初めから窓は二重にしてあり、プルーストが自宅のコルク張りの音楽室にカペー四重奏団を呼んで演奏させたなんて吉田秀和が書いていたのに影響されて、床にはコルクを張った。
 新築当初に安月給のサラリーマン(当時26歳、家のローン、婚約者あり)のお寒い懐に可能な限りのシステムを組んだ。まず、音の出口であるスピーカーが最も大事だと思ったので、「〇×カメラ」からオーディオ専門店まで何店もめぐっていろいろなスピーカーを試聴したところ、比較を絶して良かったのがB&WのMATRIXシリーズであった。802が気に入って、喉から手が出るくらい欲しかったが、さすがに大幅な予算オーバーであり現実的なところでブックシェルフ型の805Vに落ち着いた。(ちなみに試聴用のCDはクレンペラー指揮のブルックナー5番、ホグウッド指揮・カークビー歌のペルゴレージ『スターバト・マーテル』、それにR.E.M.の『Out of Time』を持って行った)
 アンプとCDプレーヤは当時音が良いと評判だったKENWOODの「ハイコンポ」K'sシリーズのKAF-7002とDPF-7002。それとミニディスクプレーヤDMF-7002も購入した。
 それらに以前から愛用していたSONYのウオークマンサイズのDATプレーヤTCD-D7を加えたシステム構成であった。一目でわかる一点豪華主義的な代物だったが、出てくる音には特に不満もなく、以来今年(2020)まで基本的な構成に変更はなかった。

・故障と不具合
 以上の機器、今年まで現役だったのでかなり長持ちしたほうだと思うが、どれも不具合とは無縁ではなかった。B&W MATRIX805Vは購入して2年ほどしたある日、一方が壊れて音が出なくなった。購入した店に持ち込んで修理してもらったところ、幸いにしてあまり時間も費用もかからずに完全に直った。それにしてもこの時は購入店(秋葉原の有名な某オーディオ専門ショップ)で異様に失礼な対応をされて本当にびっくりしてしまった。こういう専門店というのは往々にしてしばらく顔を出さないうちに雰囲気がガラッと変わっていることがある。ちょっとトラウマになってしまい、以来オーディオ専門店に出入りすることはほとんどなくなった。
 SONYのDATプレーヤも21世紀に入る前に壊れた。そのころにはもうDAT自体が廃れていたのでしばらく放置していたが、ある時思い立ってこれも秋葉原のSONYのサービスショップに持ち込み、修理してもらった。部品がないかもしれないといわれたが幸いにして直り、嬉しかったが修理代はかなりかかってしまった。しかも直ってからも結局活躍の場はほとんどなかった・・
 KENWOODのKAF-7002とDPF-7002は2006年に相次いで不調になった。アンプのほうは何もしないのにinputがカチカチ言いながら切り替わる症状、CDプレーヤのほうは大方のCDが読み込めなくなった。これは確か渋谷のほうにあったKENWOODのサービスショップに持ち込み、修理してもらったのだと思う。CDのほうは直ったが、アンプのほうは完全には直らず、頻度は下がったものの気持ちよく音楽を聴いているうちに、突然カチッと言って入力が切り替わってしまう症状は続いた。
 ミニディスクプレーヤDMF-7002はミニディスクの規格が廃れたこともあり、壊れる前にお役御免となり、今でも我が家の押し入れに眠っている。

・PCへの移行(2000頃〜2018)
 書斎で本格的にPCで音楽を聴くようになったのはそんなに昔の話ではない。ToppingのUSB DAC D10を導入したのが2018年の3月末なので、そこからだと考えるとまだ2年ほどしか経過していないことになる。しかしパソコンを音楽鑑賞に利用しだしたのはもっとずっと遡って、2000年ごろ。それまでMac一辺倒だった私がWindows機を買って、すぐに導入したのがExact Audio Copy(EAC)というCDリッピングソフトだった。これはそれまでCDダビング作業に使っていたDATの代替となるものだった。これで図書館や友人から借りたCDをWAV音源化して、それをCD-Rに焼いてCDプレーヤで聴いていた。プリンタについていたCD印刷モードをフル活用して、凝ったラベルをこしらえたりして。
 PC内の音源をそのまま聴くようになったのはいつごろからだったか。ずっと下って2013年ごろだったろうか、EACの音源を聴いたり、当時発見したフリー音源サイトのBlue Sky Labelのお世話になったり(ここでPCオーディオのあらましを学んだし、セル指揮のプロコフィエフ5番の音源は凄かった!)、SoundEngine Freeという音声ファイル編集ソフトでチェコのネットラジオの民族音楽を録音して喜んたりしていた。今思いだすと遠い過去のことのようですごく懐かしい。レディオ・イーフ・ツィンバルカという局だったが今ではもう探し出せなくなってしまった。中欧のツィンバロンの響きが、バルトークのピアノ曲やラヴェルの『ツィガーヌ』を思わせて楽しかった。
 さてその際には今も二階の居間で稼働中のLepai(Lepy) LP-2020Aという激安中華デジアンにPCのイヤホンジャックからコードをぶっ刺し、ヤフオクで安く入手したB&WのDM601S2から音を出していた。全体のシステムの中で、スピーカーにだけ注力するという姿勢だけはここでも変わっていなかったわけである。
 foobar2000を導入したのもこのころだったと思うけれど、PCオーディオの基本的なことも知らず、PCのノイズまみれ(と、言われる)音を聴いて別に不足も感じていなかった。
 何しろ三階には同じB&Wとはいえ別格の音を鳴らす805Vと、おぼつかないながらもそれなりにまだ働いてくれているアンプとCDプレーヤがあるわけで、サブシステムがどんな音を鳴らそうがお遊び程度にしか受け止めていなかったわけであった。Lepaiのアンプ自体も怪しい代物で、すぐに右からの音が途切れてしまう。そのたびに右のコードをぐりぐりこじったり、抜き差ししたりすると直るのだった。(そういえばここ数か月、その症状が出ていない。いま初めて気づいたが、気づいたとなったらまた再発しだしたりして)
 そのころ、書斎に置いてあるデジタルピアノとPCをMIDIでつないで、シンセ音源を鳴らせるようにしたいといろいろ試したことがある。結局何となくうまくいかずにやめてしまったのだが、結果書斎に用途未定の一台のノートパソコンが残されることとなった。そこでこれをアンプにつないでみようということになった。
 はじめは居間のものと同様にイヤホンジャックからコードをアンプに直結してみたが、さすがに音が悪く、しかもブーンと持続する低音ノイズまで乗っていて、まったく使い物にならなかった。そのころにはさすがにDACというものの存在も知っていたので、導入しようと考えたものの何を選んでよいのかわからず、とりあえず目についた中で最も安かったオーディオテクニカのAT-HA40USBを購入、PCとアンプの間に入れたところノイズは消え、音もそれなりによくなったと思われた。
 ところが、それなりに・・と当初は思ったのだったが、実際には信じられないようなことが起きていた。
 ある日、ふと思い立って、DPF-7002とPCに内蔵のプレーヤの音を比較してみることにした。パノハ四重奏団のスークとラヴェルの弦楽四重奏曲を収めた2007年のSupraphon盤を両方で聴き比べた。もちろんアンプとスピーカーは同じものである。すると、意外なことに、PC内蔵プレーヤのほうが明らかに音が良い。もともと室内楽が比較的苦手なアンプで、遠近感なくこってりと濃い絵の具を太いタッチで塗りたくったような音像になりがちなのだが、PCのほうは各楽器がしっかり分離し、弓圧の変化による音の変化やアタック感まできれいに再現される。DPF-7002のほうは線が太くて迫力はあるが、悪く言えば平坦でシンセ音のように聞こえる。
 きちんと詰めていけば、PCのほうが良い音を奏でるのだと実感し、PCオーディオに対する認識を改めた瞬間だった。

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 オーディオテクニカのDAC、AT-HA40USBは音はそれなりに良かったものの、一点看過できない大きな欠点があった。それは、数は少ないものの所蔵していたDSDデータが再生できなかったこと。これがDACの性能なのか、foobarの設定にミスがあったのか、はたまたPCのスペックのせいなのかは結局わからずじまいだったものの、当時手を尽くし、散々試してみてもどうしてもきれいに再生することはできなかった。まったく再生できない音源もあったし、ほとんどは一応音にはなっても、すぐに傷の入ったCDのような大きなノイズが入って止まってしまったりする。DAC自体が何も表示しないので、中で何が起きているのか推し量ることもできなかった。
 PCはNECのVersaPro VJ16ER-DというCPU速度が1.60GHzしかないロースペックマシンで、動画さえろくに再生できない代物だったのでこちらが原因だったのかもしれなかった。
 そんな具合にDSD再生が課題になっていたところ、2017年の末に、Toppingという聞き慣れない中華メーカーからD10という1万円弱のUSB DACが発売され、非常に評判が良いらしいという噂を聞いた。正直なところLepaiの一件もあって中華オーディオにいい印象はなかった。が、その前年たまたま釣りの最中に二回も国内メーカーのそれなりの値段のするMP3プレーヤを水中に落としてしまうという事件があり、その時もう持ち歩くのは安物にしようとAGPTEKという中華メーカーのMP3プレーヤを購入した。そしたら意外にもこれが非常によく、結局クルマ用と持ち歩き用に複数台買ったりして、中華メーカーに対する警戒心もだいぶ薄れることとなった。そんないきさつもあり、失敗覚悟でTopping D10、物は試しと買ってみることにした。
 届いた品物は梱包も製品も非常にしっかりしていて洒落ており、AGPTEKと似た洗練が感じられた。接続はドライバーを入れる際に懇切丁寧なPDFの説明書がついており、ほとんどPCの機種ごとに変わるとさえ言われる複雑怪奇な設定の試行錯誤がなかったのには本当にほっとしたと言わざるを得ない。何よりも嬉しかったのはDSDファイルが難なく再生できたことで、しかもDSDならDSD、PCMならPCMと周波数とともにディスプレイに表示されるギミックがとても楽しい。
 正直なところPCMのほうの音質が変わったかどうかはわからなかったが、これでCDからDSDまで、手持ちの音源を全てPCで再生できるようになった。
 ここに、我が家の最初の完全なPCオーディオ環境が成立したのであった。時に、2018年3月末のことであった。
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