脳性マヒについてー
痙直型片マヒについて

都立城北養護学校で行われた、脳性マヒについての学習会のタイプ別の3回目です。
2003年1月
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1,痙直型とは

筋緊張の評価で、動きにくくて抵抗があるときは、痙性、痙直といいます。

痙性、痙直が体のどの部分に広がっているかで、大きく分けて四肢マヒ(Qaudriplegia)、両マヒ(Dyplegia)、片マヒ(Hemiplegia)の違いがあります。

 四肢マヒとは、全身にマヒがあるタイプ、両マヒは下半身(骨盤から下)にあるタイプ、片マヒは半身にあるタイプです。今回は片マヒについてです。

 片マヒの場合、使いやすい方を健側、使いにくい方を患側というのが一般的ですが、健側といっても、完全に健ではないので、健側のことを非マヒ側、患側をマヒ側と言うこともあります。 

2,痙直型片マヒの様子

・発達

 最初は片マヒを気がつかないことが多いです。まず、手指が開きにくかったり、両手を合わせる動作がなかったりなどに気づきます。また、うつ伏せが苦手だったりします。移動は、主に片手をついたいざり移動を用いることが多いです。やがて、健側だけをほとんど使って、立位をとり、歩くようになります。最初の段階では、まだ患側の痙性はあまり強くなく、むしろ弛緩しています。踵もつくことができます。しかし、患側はつっぱったまま体重を一瞬だけ支持することを続けていると、痙性が強くなり、拘縮を起こしてきます。だんだん、患側の手も足もほとんど使わない動作を覚えていき、それで不便を感じなくなってくるとますます使わなくなってきます。

・姿勢、動作の特徴

 患側の手がつけないため、患側に転倒したときに怖いので、体重をかけることはますますしなくなります。健側が先行して、患側は後からついてくるという動作になります。両側を使った姿勢や活動がしにくくなります。健側で支持と運動の両方をしなくてはならないので、安定した姿勢や動作が難しくなります。健側の動きも、正常とは違った動きになります。

・感覚

患側の感覚が入らないので、たとえ動かすことができても使おうとはしません。これは、年齢が上がるにつれて顕著になります。感覚が健側からしか入らないので、正常とは違う感覚を覚えていきます。

・上肢

 患側の上肢は、上に上がっているか、肩が落ち込んで上肢が後ろに回る形です。両手を合わせることが難しくなります。健側を使っているとき、患側は無視されていて、後の方に引かれています。

・行動上の問題

落ち着きのないことが多いですが、その原因としては、両手を使ってじっくり遊ぶことができない、健側で支持と運動の両方を行わなくてはならない、などが考えられます。

 3,アプローチの考え方

患側で、体重を支持できるようにしていきます。

患側で支持できると、健側も使いやすくなります。例えば、立位で患側の手で支えながら、健側を使うことができるとよいでしょう。また、歩行のときも患側にも体重がかかることによって、健側の負担が少なくなり、過剰な努力を防ぐことができます。日常生活でもいかに患側を使うようにするかが、大切です。

特に小さい時期には、患側への感覚入力を十分行うことによって、感覚も入るようになり、患側を使うようになってきます。使うことによって、痙性が強くなったり、拘縮が起こったりすることを防ぐことができます。

方法としては、まだ歩けない時期は、背臥位、腹臥位、座位などの様々な姿勢で両側を用いるように促します。立位がとれるようになったときは、立位や歩行でアプローチするのがやりやすく、体重も健側にかかりやすくなります。片マヒ児は、動いてしまう傾向が多いので、ある時期にはハンドリングがしにくいことが特徴なので、方法に工夫が必要です。

ほとんど、健側で、支持することを覚えた子どもの場合は、訓練の効果にもある程度限界があります。従って、変形の進行を予防したり、ある程度改善したり、これから問題点が広がらないようにしていきます。

上肢については、課題の工夫が必要で、患側が使えそうな場合は、両手を使わなくてはならないものでしかも簡単にできるものがよいでしょう。使うことが難しい場合は、補助手として体重を支えたり、固定に使ったりするようにします。

落ち着きのなさに対しては環境やかかわりの配慮が必要になってきます。

 4,実技

 背臥位で、両手で両膝を触る。

 腹臥位で、両肘を着く。

 座位で、左右に体重移動。

 立位でテーブルに患側の手を置く。左右に体重移動。

 歩行の時に、患側を前に出す。健側の足が出るときに行うようにする。

 両手を用いる手の動作。患側の手に輪をかける。シールを貼る。手袋をはめておいてとらせる。両手で大きなボールを持つ。ブロック積み。

 患側への意識づけ。

 5,変形について

 拘縮や変形は、末梢部に集中します。患側の足が内反または外反の尖足になり、股関節は外転、外旋パターンになります。体幹短縮、腰椎前弯、骨盤が後退し前傾します。手指が屈曲、母指が内転、手首が掌屈、尺側に偏位し、肘の屈曲、前腕の回内、肩の後退があります。

6、症例

 歩行可。両側とも尖足だが、左の患側が顕著。左手はほとんど用いず、手関節と手指の関節に拘縮あり。

 アプローチとしては、座位や立位で踵をつけるようにする。歩行のとき、立ち止まって踵をつけるようにするなど。

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