@はじめに

今回は、春季研究協議会で行ったことの続きです。変形のある子どもは、身体が動かしづらく、姿勢もとりにくくなっています。そうすると体を動かしたり、姿勢を変えたりする機会が少なくなり、そのことが悪循環となります。変形も助長されてしまいます。また、姿勢が限られてくると活動も制限されてきます。後半述べるように呼吸にも影響が出てきます。

A側臥位での体の動かし方

(ア)姿勢のとり方

 側臥位では、体幹の横側が、動かしやすくなります。また肩甲骨も動かしやすくなります。しかし、不安定です。私たちは枕があれば安定しています。しかし、重度の子どもでそれができない理由としては、上肢や下肢を使ってうまくとまらないからです。また、側彎があると胸郭の変形もあってずれてしまいます。それで、倒れないような工夫をします。

まず、上肢と下肢を動きやすくしておきます。例えば、先ほど行った、背臥位で体を動かしておくと良いでしょう。特に下側の上肢が横に上がりにくい場合、不安定になりやすいので、動かしておくと良いでしょう。また、頭部がコントロールできない場合は、顔が枕に埋まってしまうことがありますので枕の材質の工夫も必要でしょう。下肢は軽く曲がる方が良いでしょう。下肢の位置は骨盤を動かすときと動かさないときでは違った方がよいでしょう。動かさないときは上の下肢を屈曲して下の下肢を伸展気味にしておくとよいでしょう。動かすときは、両下肢を軽く曲げてそろえるくらいが良いでしょう。また、足の間に枕やタオルを入れるのもよいでしょう。

(イ)側弯の凸側が上の場合

このときは、側弯については重みで短縮している方が伸びることになります。しかし、自然に伸びていくわけではないので動きにくいところを動かしたいと思います。肋骨の可動性を出すために、回旋を加えます。肋骨と肋骨の間や肋骨と骨盤の間をほぐします。肩と首の間が接近していたり、肩甲骨が本来の位置にないことがあります。そのとき、肩甲骨を十分に動かすことによって肩と首が離れます。上肢も動かしやすくなります。緩んできたら、下側の骨盤を下のほうに引くことによって、直接短縮したところを伸ばしてみてもよいでしょう。

(ウ)側弯の凹側が上の場合

 凹側が上のときは、引き伸ばすことができますが、直接伸ばすだけでなく、回旋を加えるとよいでしょう。また、肩甲骨や肩も動かすとよいでしょう。肩の挙上することによっても側弯の短縮部分が伸びます。

B     腹臥位

 腹臥位は、股関節の屈曲拘縮を持つ子どもがほとんどなので、体幹の部分を高くします。高さについては、肘が床につく高さにした方がよい場合と、手が床に軽くつく高さにした方がよい場合があります。体幹が上がった分、頭部も上がりますが、空中に自分で保持するよりも、枕などにおくようにした方が、リラックスできます。凹側を伸ばし、凸側を引き下げます。この姿勢で骨盤の回旋も大切です。上肢は、内側に入ってしまうことが多いのですが、外側に、できるだけ開いていきます。できるだけ上のほうにも、動かしていきたいです。このときは肩甲骨を動かしながら、徐々に動かしていくよいでしょう。場合によっては、動かした位置で支持するようにしていき、少しずつ動かせるとよいでしょう。下肢は膝と下腿で体重を支え、ちょうど内外旋が少なくなるようにします。場合によっては、上肢を使っての活動もできます。

C座位

 座位は、台のようなところに座って、足の裏をつけた座位をとらせます。緊張が強くて座位をとっても傾いてしまうタイプと、緊張が低くて座位自体とることが難しいタイプを想定します。

前者の緊張が強いタイプは、そり返らないようにしっかり座位をとります。下肢の片方が内旋して片方が外旋しています。また、膝が屈曲しすぎて十分支えきれないことがあります。これらに対しては膝や足を押さえながら修正していきます。骨盤は側弯の短縮側が上がっていて、体重が均等にかかっていません。骨盤を水平にし、体重をかけながら短縮側を伸ばします。このときも、膝や足は押さえずれないようにします。そこからできるだけ、骨盤の前傾と体幹の伸展を狙います。上肢は支えに使うようにします。

 緊張の低いタイプは、股関節のところで曲がりにくいです。また、起こすと体幹もまっすぐになりにくいです。前弯または、後弯した上に側弯が加わるので、普段からも車椅子の座位はとりにくいです。回旋もあります。でも座位の練習をした方がよいです。台の上に座り、介助者は後ろから抱っこするようにいっしょに座ります。片方の手で骨盤を押さえながら体幹をまっすぐに持っていきます。特に、前弯する場合は、骨盤を後傾の方向へ押さえながら行います。

D     変形による胸郭の動きの制限

まず、変形と呼吸の関連です。呼吸障害の分類で言うと拘束性の障害になりますが、頚椎部が変形していれば閉塞性の障害も加わります。胸郭の動きでは、肋骨が広がりながら上がる動きは制限されます。もともと肋骨が上がった位置になっていて、吸うことも吐くことも十分にできない場合もあります。

側弯でいうと凸側の動きの制限が大きいです。動きやすくする必要があります。凹側は縮んでいるので伸ばす必要があります。横隔膜がゆがんでいる場合もあり、その場合は効率の悪い呼吸になります。

腹筋の緊張が強すぎても弱すぎても胸郭は動きにくくなります。腰方形筋は短縮していると腰が縮んだ状態になり、肋骨が上がりにくくなります。上のほうにある胸鎖乳突筋や僧帽筋、大胸筋などの呼吸補助筋の緊張が強いと、やはり胸郭が大きく広がりません。

E     姿勢変換と呼吸

(ア)排痰のため

肺の各部分に空気が入りやすくするために姿勢変換は大切です。基本的には、背臥位、左右の側臥位、腹臥位、座位がとれるとよいでしょう。またそれぞれの座位で、動きにくいところを動かすことが大切です。

(イ)換気―血流比の改善のため

 一般に、姿勢をとったときに体の上側の肺には、空気がよく入り、下側の肺には血液がよく流れます。例えば同じ背臥位ばかりとっていると、いつも背中には血液が多く流れるのに空気はあまり入らず、酸素の交換が十分にできません。従って姿勢を変えることによって、これを改善する必要があります。

G実技

(ア)   背臥位で

背臥位で、背中の下に両側から手を入れて、吸気に合わせて少し持ち上げます。このとき、完全にこちらで介助してしまうのではなく、本人の動きを助ける感じで行うとよいです。

背臥位で、吸気にあわせて、上肢を上に引き上げます。胸郭が上に上がりながら広がり、深く吸うことができます。上肢の挙上に制限のある子どもが多いので、その場合は無理に上げすぎないでその子どもが楽に呼吸できる程度に行います。

(イ)   側臥位で

側臥位で体を動かす実技を先ほど行いましたが、肩甲骨を動かしたり、上肢を上げたり、肋骨と肋骨の間、肋骨と骨盤の間を回旋したのは、いずれも胸郭の動きを大きくします。

(ウ)   腹臥位で

腹臥位で上肢を上げていくと胸郭が広がります。

四つばい姿勢から、股関節と膝関節がさらに曲がるようにおしりを落としていくと、腰の腰方形筋を伸ばすことができます。

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体の動かし方の基本と実技
 変形がある子どもに対して呼吸も含めて

東京都肢体不自由教育研究会
「運動学実習とその研究」部会
春季協議会の内容です。

2002年8月

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