呼吸について

2002年10月18日

 城北養護学校で、呼吸について行った学習会の資料です。呼吸については4回シリーズで行いましたが、最後に呼吸についてできることを実技を交えながらまとめたものです。

 呼吸に対しては、いろんなことができますが、一通りどんなことができるかを上げてみました。大きく分けて、(1)現在の状態で呼吸を楽にできるように(2)普段から楽に呼吸ができるようにするために があります。その中で、いくつかの方法を取り入れていくと良いと思います。

1,現在の状態で呼吸を楽にできるように

とりあえず、今、呼吸を楽にしたいときの方法です。このようなことは多いと思います。痰がたまっていて苦しそうとか、ちょっと疲れたから楽な姿勢で休息させてあげたいとか。また、クラスでの活動の時の姿勢も、呼吸が楽な姿勢が良いと思います。この、毎日の積み重ねで、呼吸状態が安定することが多いと思います。

下顎の介助(実技)

 これで、舌根部が落ちている場合、舌根が持ち上がるので、空気がとおりやすくなり、呼吸を楽に行うことができます。このときの方向ですが、前方に引き出すように行います。また、極端にあごが上がって、顔が上を向いてしまうとかえって通りが悪くなることがあります。

首の位置の確保(実技)

 頭部の位置が、合っていないと呼吸が通らないことがあります。たとえ下顎の介助を行っていても、頭部の位置が合っていないと通りません。この位置も、子どもよって違ってきます。一般的にはわたしたちは正中位がよいのですが、首がしっかりしていて、のどの所の組織もしっかりしているので、少々、首の位置が傾いていても十分に空気が通ります。重度の子どもの場合は、首が据わっていないし、のどの所の組織も弱いし、首の変形があったり、気道が曲がっていたりもします。従ってその子の、首や気道に合わせた位置が楽な位置になります。長い目で考えると、もちろん、重度の子の場合も、いろんな首の位置がとれることが大切です。一つの一番楽な位置だけではなくて、いろんな位置でとれると良いでしょう。また、いろんな姿勢で、呼吸の通る位置がとれることが大切です。また、自分で少しでも良い位置に修正できるくらいの力があると思います。

 子どもによっては、特にこの位置をとった方が楽になる例がいくつかあります。例えば、アデノイドの場合は、臥位よりも座位の方が楽です。また、側臥位はどちらかが楽なことがあります。これは、アデノイドの腫れているところが、方向によっては重力によって落ちてくるからです。また、喉頭軟化症の場合は、座位で首をやや前屈させたくらいの姿勢のほうが通りやすいようです。

 

呼吸しやすい姿勢(実技)

呼吸しやすい姿勢をとります。これは次の排痰とも関連します。舌根沈下を考えると、背臥位は避けた方がよいようです。しかし、背臥位が楽なケースもあります。抗重力の姿勢がとりづらければ、かえって背臥位のほうが楽に呼吸できる場合もあります。

側臥位の場合、左右どちらかがよいかというと、その子によります。先ほど首の位置のところで話したアデノイドや、喉頭軟化の子どもは左右差があります。また、一般的には、楽にするにはいつも多く肺を使っている方を上にするのがよいでしょう。しかし、排痰も同時に考えれば、痰がたまっていると思われるいつも使っていない方を上にするのがよいでしょう。といっても、排痰はいったん楽にならないと出せないというのもありますので、まず楽なほうからとるのが無難です。

腹臥位は一般的にはよいのですが、難しさがあります。特に頭が下に落ちてしまうことが多いので、介助が必要なことが多いです。自分で鼻や口がふさがらないようにすることは難しい子が多いので、いつも誰かが見ていなくてはなりません。目が当たるのもよくありません。しかも、表情が見にくい姿勢です。しかし、安全を見ることができるときは、腹臥位を行うとよい場合があります。特に、のどに痰がたまったときは、中途半端な前傾姿勢ではなく、腹臥位をとるようにすると重力で落ちやすくなります。

座位は、肺の上部の方に空気が入り排痰しやすく、また胸郭が下りて自然に呼気ができるという利点があります。しかし、抗重力で体を支えることが難しい子については長い時間は特に難しいです。姿勢を保つことができず、姿勢保持の椅子や車椅子に座っていても、だんだん楽に呼吸する余裕がなくなります。しかし、座位は、生活の中で座位は必ず必要なので、椅子や車椅子の工夫をしたり、座位姿勢の練習をしたりする必要があります。

 胸郭を広げる(実技)

 呼吸の状態で、肺に十分空気が入っていなくて苦しいときがあります。また、いったん肺胞がしぼんでしまったら広げることが難しいケースもあります。そのような時は、ある程度肺胞が開いた状態を維持してあげるのがよいでしょう。その具体的な方法としては、例えば、側弯のある子どもならば、凹側を伸ばすこと、肩がすぼまっている子どもならば、肩を広げてあげることによって、胸郭を広げることができる。その位置で維持するようにしてあげるのが効果あることがあります。ここから呼吸介助をした方がよいかどうかはその子どもによってきます。

呼吸介助(実技)

呼吸介助は、呼吸を楽にすることが目的で、そのことによって呼吸を深くする効果があります。こちらで呼吸介助をしてあげるというよりも、本人の呼吸を助けてあげるように行うとよいでしょう。そのことによって結果的に深い呼吸になり、深い呼吸によって空気の出入りの量と速度が速くなり結果的に痰がだしやすくなります。本人の呼吸よりも速くしようとか、無理に大きくしようとかするとかえってうまくいかなくなります。呼吸介助を必要以上に続けることはかえって、呼吸中枢の働きを減じてしまうので、よくありません。呼吸介助をしなければ、呼吸が苦しくなるような状況ならば、医学的な対応をした方がよいでしょう。

吸気の介助と呼気の介助のうち、どちらを行うのか、また両方を行うかについては、子どもとそのときの状況によって、違ってきます。

排痰

 排痰については、どの場所にどのように痰がたまっているかによって、違ってきます。また、子どもによって出すコツのようなものは違っています。

口から

側臥位や、腹臥位がよいでしょう。側臥位でも姿勢のとりやすさや、首の向き、口の動きなどで、出しやすい向きがあります。例えば、左下よりも右下の方が出しやすいとか、頬の内側のどちらかにたまりやすいとかがあります。自然に落ちるのがよいのですが、場合によっては、口腔内の吸入が必要だったり、タオルでかき出すことが必要だったりします。

のどから

のどから出す場合、中途半端な前傾姿勢をとると、のどにたまっている痰が、前の方にある気管にちょうど流れ込んでしまうことがあります。その場合はうつぶせや横向きをとった方がよいです。また、せき込んでもなかなか口の中まで出せない場合があります。このような場合は、うつぶせ姿勢をしばらくとらせたりします。また、タオルなどをなめながらだと、出やすいこともあります。吸入や吸引を上手に使うことが必要なこともあります。

気管から、気管支から

のどより奥から出すときは、のどまで出すことが必要になります。ですからすぐには出ません。痰を出すには、痰の粘調度が適度であり、呼気の流速が必要になります。上手に咳を出せればよいのですが、それも難しいときがあります。深い呼吸が楽にできれば、それで痰が自然に上がってくることになります。普段からこのことを心がけるのがよいでしょう。しかし、痰が気管や、出口に近い気管支にたまっている場合は、呼吸が苦しくなりますので、出す方法をその子によって確立しておく必要があるでしょう。

このときの姿勢については、普段の取り組みとしては行うときと、痰が上がってきてとりあえず出したいというときの姿勢は違ってきます。普段の取り組みとして行うときは、一つの姿勢だけではなくて、まんべんなく痰を出すために2つ3つの姿勢をとることが必要です。しかし、とりあえず出したいときは、出しやすい姿勢をとったり、休息の姿勢をとったり、などいろいろその子によって違うでしょう。

いわゆる排痰手技にはいくつかあります。タッピングは、たたくことによって痰の動きを促すのですが、刺激が強くてかえって気管支が狭くなってしまうことがあるので、やり方と対象には注意が必要です。シェイキングは、揺することによってやはり痰を動きやすくする方法です。呼吸介助をしながらシェイキングを行う方法もあります。スクイージングは、呼気の最後のところでしっかりと胸郭の部分を押し込んで急に放すことによってその部分に空気が入りやすくなり、痰が出やすくなるというものです。どの方法がよいかはその子によるし、効果の程度もその子によります。いわゆる排痰手技を用いなくてもよい場合も多いです。

咳の誘発

 これを行うのは難しい子が多いですが、咳は呼気のスピードが速いため、咳をすることによって、痰がのどから口に上がってきたり、気管からのどに上がってくるだけでなく、奥の気管支から上のほうにも上がってきます。しかし、咳が出すぎても疲れてしまいよくないので、少ない回数でも効果的な咳ができるとよいでしょう。

咳の誘発となると実際は難しいです。しかし、気道を確保して呼吸を深くしておくと、何らかの原因で刺激を受けることによって咳が出やすくなります。刺激の方法は、その子によっていろいろです。

吸引

 学校で吸引ができる子どもが増えてきました。前述したように、上がってきた痰を最終的に出すには吸引が必要な子が多いです。吸引も空気を吸いとるわけですから、吸引中とその直後は、酸素濃度が下がります。また、咽頭への刺激が多すぎると刺激によって痰がさらに出やすくなり、悪循環になることがあります。できるだけ効果的な吸引が大切でしょう。また、例えば、どうしても吸引が必要なとき、例えば食事のときなどに、吸引できる体制をとることが大切だと思います。また、のどまで上がってきた痰が吸引でないと処理できないこの場合は、やはり常に吸引の体制が必要になるでしょう。特にせき込んだときにタイミングよく出せることが大切です。また、そのような子に対して、吸引の体制が整っていない時間に、これから述べる吸入を含めて痰を上げるようなことは、行わない方がよいでしょう。

吸入

 吸入は、ここでは生理食塩水の吸入についてのみ述べます。痰の粘調度を調整して痰が出やすいようにするのが目的です。吸入もやりすぎても逆効果なことがあります。それは、痰の水分が多くなりすぎて、かえって出にくくなったりします。また、吸入も一種の刺激なので、その刺激によって痰がさらに多く作られてしまうことがあります。いつ、どれくらい行うのが有効かは、試行錯誤を重ねることが必要です。

姿勢は、1つの姿勢で行う場合と2つか3つの姿勢を変えていく場合があります。1つの姿勢のときは、その子の姿勢が安定し、深い呼吸ができる姿勢がよいでしょう。また、吸入中にせき込むことが多いときは、そのときに対応しやすい姿勢がよいでしょう。また、特に痰の出にくい部分を上側にした姿勢にすると、その部分に吸入が行きやすくなる場合があります。2つか3つの姿勢を変えていく場合は、肺全体にまんべんなく吸入が行き渡るように、左右の側臥位にするとか、背臥位と腹臥位にするなどの方法があります。

2,普段から楽に呼吸ができるようにするために

これは、今は呼吸状態はその子にとって落ち着いているけれども、これからもっと上手に呼吸ができるようにしていきたいとき、呼吸状態が安定し健康を保つためにどうしたらよいかというときに行うことです。

呼吸に関わる筋が伸びるようにしておく。

 呼吸に関わる筋とは、呼吸筋、呼吸補助筋のほかに呼吸に影響を与える筋も含まれます。

 呼吸筋とは、横隔膜と、外肋間筋、内肋間筋の前部のことを言います。横隔膜は、ドーム状の筋なので、ドームの形が変形で崩れてくると効率の悪い呼吸になります。また、弛緩したときにつまり呼気のときに、自然に弛緩するとよいでしょう。また、自然に重力でおりてくるのも効率のよい呼吸ですので、できれば、座位、腹臥位などの抗重力姿勢もとれるとよいでしょう。

 外肋間筋と内肋間筋の前部は、吸気のときに肋骨を持ち上げる作用があります。これらの筋は肋骨の隣り合った上下の間についているのですが、肋骨を動きやすくするために、これらの筋をほぐすことは効果があります。方法としては肋骨の間に沿って指をおき、その方向に指を往復させて動かすのがよいでしょう(実技)

 呼吸補助筋とは、普段は吸気のときに呼吸筋のみ使い、呼気のときは自然に胸郭が狭まるのですが、何らかの事情でこれでは十分に呼吸ができないときに使う筋で、吸気のときに使う筋と呼気のときに使う筋があります。吸気のときに使う呼吸補助筋は、大胸筋、脊柱起立筋群、胸鎖乳突筋、僧帽筋、斜角筋、肩甲挙筋です。呼気のときに使う補助筋は腹筋群です。これらの筋は呼吸筋に比べて効率が悪く、エネルギーも多く使います。従って、呼吸によって消費する酸素量が多くなります。しかし、これらの筋を使わざるをえない理由があるので、その原因を取り除くことが必要です。例えば、気道がどこかで閉塞気味であったり、胸郭の動きが呼吸筋だけでは不十分であったりすることがあります。呼吸補助筋をできるだけ使わずに呼吸ができれば、効率のよい呼吸になり、楽になります。呼吸補助筋が緊張して、さらに短縮している状態を改善することができます。具体的な方法としては、呼吸が楽にできるように気道の通りと姿勢を調整します。その上で、呼吸補助筋が伸びるような方向へ徐々に動かします(実技)。例えば、肩と頭部が接近しているときは、側臥位で肩甲骨を回すようにして徐々に頭から離れるように動かします。または、頭部を動かして肩甲骨から離していきます。しかし、常に呼吸補助筋を使わなければならない状態であれば、呼吸状態が悪化する可能性があるので、何らかの医療的処置が必要になるでしょう。

 呼吸に影響を与える筋とは、直接呼吸に関わる筋ではないが、姿勢を通して呼吸に影響を与えます。例えば、腸腰筋は股関節を屈曲する筋ですが、下肢が固定されていると骨盤を前傾するように働き、腰椎の前弯を強くして、肋骨の動きを制限します。また、腰方形筋は直接腰椎の前弯に働き、やはり肋骨の動きを制限します。また、ハムストリングスは特に座位のとき、骨盤を後傾させ体幹を円背にして、吸気を制限します。これらの筋をリラックスさせ伸ばすことが長い目で見て呼吸の維持改善につながります。ここでは腰方形筋が緩んで伸びることができる方法をやってみましょう(実技)。

呼吸に関わる関節の可動域が広がるようにしておく。

 上記の筋が伸びやすくすることと重なりますが、胸郭を中心とした動きが確保できることが必要です。具体的には、脊柱や胸郭が対称な形を保った上で、可動性があることです。また、脊柱や胸郭だけでなく、上肢帯(肩甲骨、胸骨、鎖骨)の動きや上肢の可動域、骨盤の動き、下肢の可動域も呼吸に影響を与えます。

 まず、脊柱の動きとしては、屈曲、伸展、側屈、回旋の各動きが必要になります。これは体幹を大きく動かすとよいでしょう(実技)。その子に合わせていろんな姿勢で行う方法があります。例えば、抱っこや座位で体幹の屈曲ができます。背臥位でバルーンのような上に乗れば、脊柱の伸展になり、吸気の動きが行いやすくなります。また、腹臥位をとること自体が体幹の伸展になります。体幹の側屈は、側弯などがある場合、側臥位で体幹を伸ばしたり動かしたりすることができます。また、体幹の回旋には、側臥位で肋骨と骨盤を交互に回旋するとよいでしょう。座位でも可能です。

次に肋骨は、脊柱の動きに加えて、吸気の時には持ち上がったり広がったりし、呼気の時はその逆になります。肋間筋をほぐすのと似ていますが、ちょっと違う方法として、肋骨に指をかけて動かす方法があります。動かす方向としては、上下、左右、回す動きなどがあります(実技)。また、側臥位で肋骨と肋骨に手を置いて、絞るような動きも有効です(実技)。

 上肢帯の動きを促すには、肩甲骨の動きがポイントになります。肩甲骨が内側に入り込んでいるとそれだけ胸郭の動きが制限されるからです。側臥位が一番動かしやすいのですが(実技)、背臥位や腹臥位でも行えるとよいでしょう。

 肩関節の可動域も大切です。肩関節で上肢が上の方に上げられると、また外側に広げられるのならば、呼吸を深くすることができます。方法としては、背臥位で肩甲骨を動かしながら外側に広げたり上方に上げたりするのがよいでしょう(実技)。側臥位では、肩甲骨が動かしやすいので、やはり肩甲骨を動かしながら上肢を上に上げます。腹臥位では、上肢が内側に入り込んでいることがありますので、そのようなときは、少しずつ外側に上肢をずれしていくとよいでしょう。バルーン上の腹臥位を行うと、揺らしながら力が抜けて手を広げやすくなります。(実技)

 骨盤と胸郭の間が短縮していたり、動かなかったりすると、深い呼吸ができません。腰方形筋を伸ばす方法については述べましたが、骨盤の動きを促すには、骨盤を胸郭に対して回旋させるとよいでしょう(実技)。

 股関節の可動性も大切です。下肢が動きにくいと骨盤も動きにくくなるからです。股関節を回旋させながら、ゆっくり動かすとよいでしょう。このとき、股関節や膝を曲げた状態から、ゆっくり動かすと、ゆるみやすく、呼吸にも楽です。

気道が通りやすい頭部、頸部を中心とした位置が確保できること。

 これは、(1)の首の位置の確保で述べましたので、具体的に姿勢や道具について述べたいと思います。

背臥位の枕は高さと形が大切です。気道が通りやすい首の位置はその子によって違いますが、あまりまっすぐにしすぎたり、あまり動かないように固定しすぎると、かえって緊張が強くなり空気の通りもよくないでしょう。肩甲骨を動かすことによって、首がリラックスすることがあります。背臥位では下顎が開き舌根が落ちてしまうことがあるので、下顎を閉じる方向に保持するものがあるとよいでしょう。

側臥位では、背臥位よりも枕の高さは高くなります。首が伸展してしまう場合、完全に屈曲位に固定してしまうとかえって緊張が強くなります。伸展をある程度許して、自然に戻ってくるようにするとよいでしょう。肩が丸くなってしまう場合、肩を伸ばすと首の位置がよくなる場合があります。また、下になっている肩に体重がかかって負担になり、側臥位がうまくとれないことがあります。このときは、体幹の下にタオルやクッションを入れて少し高くしておくとよいでしょう。

腹臥位では、床の上でとれる場合は、首が左右のどちらかに向けてリラックスできるとよいでしょう。床の上ではとれないときは、バルーンや体の部分を高くしたクッションを用いるとよいでしょう。このとき、頭の部分の保持をどうするかということですが、何もなくて空中で保持できる場合もありますが、大部分の場合、頭を乗せるところが必要になってきます。このときは、頭を乗せるものの高さを体幹に対してやや低くするぐらいがちょうどよいでしょう(実技)。

座位では、体幹に対して首の位置をどうするかが大切です。舌根沈下に対してどうするかについては背臥位と同じです。ただし、体をどれくらい起こすかによって違ってきます。

様々な姿勢がとれ、それぞれの姿勢で楽に呼吸ができるようにする。

様々な姿勢をとることについては、姿勢ごとの特徴などすでに話しました。長期的に見ても、呼吸にとっていろんな姿勢がとれるメリットは多くあります。まとめると、@肺の全体を使うことができる。A排痰がしやすくなる。Bそのときの状況に応じた姿勢が楽にとれる。C変形や拘縮の予防になり、結果的に呼吸がよい状態に保たれる。

 姿勢についても(1)の呼吸しやすい姿勢で述べましたので、ここでは具体的な姿勢や道具について述べたいと思います。

 背臥位は、骨盤と胸郭がリラックスできるように、膝の下に三角のマットがあるとよいです。その上で、楽にとれるように体を動かしてあげるとよいでしょう。背中の下に手を入れて動かしてあげたり、骨盤を軽く回旋させたり、股関節を少し曲げたりするとよいでしょう。

 側臥位では、姿勢を保つために、体幹の前及び後ろにクッションがあるとよいでしょう。下肢は軽く曲げるとリラックスできるのですが、緊張して下肢が伸びてしまうときは無理に曲げない方がよいと思います。下肢の間にタオルなどをはさむと、上側の下肢が安定するでしょう。

腹臥位では、股関節の伸展制限のあるこの場合は、体幹の下にクッションなどを入れて、股関節が自然に屈曲するようにするとよいでしょう。股関節と膝関節が自然に曲がり、膝と下腿に軽く体重がかかるとよいでしょう。上肢が体幹の方に引き込まないようにリラックスさせるか、引き込んでも無理がないように道具の工夫をするとよいでしょう。


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