2014-07-08

上野台地を歩く (4)----上野公園(文化財建造物鑑賞)

飛鳥山から歩き出した上野台地の終点に、多くの文化施設が集中し、桜の名所でもある上野公園がある。
この地は、徳川三代将軍家光が江戸城北東の鬼門封じに東比叡山寛永寺を建てて芝増上寺と並ぶ将軍家墓所としたのが発祥で、数多くの文化遺産が観られる。建造物の重要文化財等もここに多く集結していて、それらの鑑賞散歩も楽しい。


JR鴬谷駅西側の線路沿いに上野寛永寺の徳川家霊場が広がっている。その第一霊場には厳有院霊廰(徳川4代将軍家綱)があり、隣の第二霊場には常憲院霊廰(徳川5代将軍綱吉)がある。
厳有院霊廰の重要文化財は、勅頼門・水盤舎・韓門・宝塔の4点だが、唐門と宝塔は見ることが出来ない。常憲院霊廰も同種類4点が重要文化財に指定されているが、水盤舎と唐門は見ることが出来ない。

源有院霊廟勅頼門(重要文化財)

源有院霊廟水盤舎(重要文化財)

常憲院霊廟勅頼門(重要文化財)

常憲院霊廟宝塔(重要文化財)



寛永寺霊場内に、渋沢栄一前妻の17回忌にあわせて建設されたという優美な霊堂(登録文化財)が見える。残念だが、霊堂内で通常は近づけない。
寛永寺中堂から南に伸びる一体は、ルネッサンス様式の明治洋風建築の代表作である 旧帝国図書館(現在世界子供図書館,都選定歴史的建造物)や、登録文化財指定で重厚な煉瓦造りの黒田記念館が並んでおり、日本離れした雰囲気を醸し出している。

東京文化財研究所黒田記念館本館(登録文化財)→

↓ 寛永寺渋沢家霊堂(登録文化財)



最近、黒田記念館の隣にレトロな雰囲気のCafeが出現。公園横断のメイン「芸大通り」に面し、周囲の景観に溶け込んでのんびり出来る。
「芸大通り」を上野桜木町に戻ると、登録文化財指定の市田家がある。主門・裏門・主屋・倉、の4点が文化財になっている。

Cafe 上島

市田家(登録文化財)
{台東区上野桜木1-6-2}



この通りの主役「芸大」には、美術館とは別に芸大生などが造った雑貨を置くミニショップなどもあり、面白い。
その並び、公園の入口にある瀟洒な重要文化財指定の木造建徳が、東京芸術大学音楽部の前身の音楽堂。 更に上野駅方面に進むと、国立博物館、表慶館、旧十輪院宝蔵(明治15年に奈良市十輪院境内に設置されたものを移築。博物館内の庭奥に佇んでいる)など三つの建造物重文が博物館内で観られる。

表慶館(重要文化財)→

↓ 旧東京音楽学校奏楽室(重要文化財)


←旧十輪院宝蔵(重要文化財)

旧東京帝室博物館本館(重要文化財)↓



国立博物館に沿って、因州池田家(現鳥取県の一部)の江戸屋敷表門と,修復が完成した寛永寺旧本坊表門「黒門」の風達の重厚な門が残っている。

旧因州池田屋敷表門(重要文化財)

寛永寺旧本坊表門「黒門」(重要文化財)




動物園の南側に東照宮がある。本殿・幣殿・拝殿・唐門・透塀の五点が明治44年に重要文化財に指定されている。最近修復が完成し、建設初期の豪華さを取り戻して見応え充分。
五重塔は動物園内にあり、近くでの鑑賞は入場する必要が……一寸奇妙だ。

昇降の竜(左甚五郎作)→

↓ 東照宮社殿(重要文化財)

tosyogu_2

←五重塔(重要文化財)

石鳥居(重要文化財)↓



JR 上野公園口に近いエリアには、昭和6年に日本最初の本格的な博物館建築としての価値を持つ旧東京帝室博物館(科学博物館)や、フランスのコルピュジェ設計の西洋美術館(松方コレクション)、京都比叡山寛永寺に対して東比叡山寛永寺と呼ばれる徳川将軍家の菩提寺など、貴重な建造物が集まっている。

旧東京帝室博物館(重要文化財)

西洋美術館(重要文化財)

寛永寺清水堂(重要文化財)

(春の清水堂周辺)



上野公園の見所は多く、奥が深い。建造物でこれほど貴重な文化財が集積する場所は、珍しい。またここは桜だけの名所でもない。台地下の不忍池では、7月中旬頃には蓮の大群が見事に咲き誇る。かっては池全面を華やか埋めていたが、今はやや淋しくなり、動物園(不忍口)内の蓮池に整備された木道を歩いて間近に観るのがお勧めだ。