簿記2級の勉強(その3) 株式会社会計
資本金 法定準備金 利益の処分と損失の処理
繰延資産 社債 引当金 法人税等とその他の税金の処理
8.株式会社会計
(1)資本金
・原則として、発行した株式の発行価額の総額が、株式会社の資本金と成る。
株式は、株式会社の設立の時や、増資の時に発行される。 株式には、額面株式と無額面株式が有り、
何れも設立や増資の時に発行される。
発行価額の総額が資本金に成ると云う原則の他に、発行価額の内資本金にしない事が出来る場合も有る。
・株式会社の資本の分類
資本−−資本金
|
|−法定準備金−−資本準備金−−株式払込余剰金
| | |−減資差益
| | |−合併差益
| |
| |−利益準備金
|
|−余剰金−−−−任意積立金−−新築積立金
| |−配当平均積立金
| |−別途積立金
|
|−当期未処分利益−−前期繰越利益
|−当期利益
・資本金
@設立の時の仕訳
・株式には、1株の金額(額面金額)が記載されている額面株式と、額面が記載されていない無額面株式が有る。
・会社設立に際して額面株式を発行する場合は、1株の金額は50,000円以上と定められている。
額面株式は額面金額を下まわる価額で発行する事は出来ない。
原則として、発行価額の総額が資本金と成る。
・無額面株式は、会社設立に際して発行する時は、1株の金額は50,000円以上と定められている。
無額面株式も原則として、発行価額の総額が資本金と成る。
(例)K株式会社は、会社設立に当って、額面株式1,000株(額面金額50,000円)、無額面株式500株を、
それぞれ1株50,000円で発行し、全額の払込を受け、払込金は当座預金とした。
借方:当座預金 75,000,000 貸方:資本金 75,000,000
・株式を発行した時の払込金は、株式申込証拠金で処理し、後日、資本金に振り返る方法も有る。
(例)上記設立の株式発行で、払込を受けた時
借方:別段預金 75,000,000 貸方:株式申込証拠金 75,000,000
資本金に振替えた時
借方:株式申込証拠金 75,000,000 貸方:資本金 75,000,000
当座預金 75,000,000 別段預金 75,000,000
・株式発行の時、発行価額の内、資本金にしない事が出来る金額を、株式払込余剰金と云う。
額面株式を額面金額を超える金額で発行する場合は、額面を超える金額または、発行価額の2分の1の金額の何れか
少ない金額を、株式払込余剰金にする事が出来る。
また、無額面株式では、50,000円を超える金額で発行する場合は、50,000を超える金額または、
発行価額の2分の1の金額の何れか少ない金額を、株式払込余剰金にする事が出来る。
(例)T株式会社は、会社設立に当って、額面株式1,000株(額面金額50,000円)、無額面株式500株
を、それぞれ1株70,000円で発行し、全額の払込を受け、払込金は当座預金とした。
借方:当座預金 105,000,000 貸方:資本金 75,000,000
株式払込余剰金 30,000,000
株式払込余剰金の計算
*額面株*
額面を超える金額 70,000−50,000=20,000
発行価額の2分の1 70,000×1/2=35,000
上記の金額で少ない方 20,000
株式払込余剰金 20,000×1,000=20,000,000
*無額面株*
50,000円を超える金額 70,000−50,000=20,000
発行価額の2分の1 70,000×1/2=35,000
上記の金額で少ない方 20,000
株式払込余剰金 20,000×500=10,000,000
*額面株+無額面株* 20,000,000+10,000,000=30,000,000
A増資の時の仕訳
・株式会社設立後、資本金の金額を増加させる事を増資と云う。
増資には、実質的増資と形式的増資が有る。
・実質的増資は、資本金の増加と同時に、資産の増加を伴う増資である。
新株式を発行して払込を受ける場合が、その例である。
増資に当って、新株式を無額面で発行する場合は、1株の金額を50,000円とする制限は無いので、
株式払込剰余金を計算するには、発行価額の2分の1を株式余剰金にする事が出来る。
(例)増資のため、額面株式500株(1株額面50,000)、無額面株式500株を、それぞれ1株
90,000で発行し、全額の払込を受け当座預金とした。
借方:当座預金 90,000,000 貸方:資本金 47,500,000
株式払込余剰金42,500,000
株式払込余剰金の計算
*額面株*
額面を超える額 90,000−50,000=40,000
発行価額の2分の1 90,000×1/2=45,000
上記の金額の少ない方 40,000
株式払込剰余金 40,000×500=20,000,000
*無額面株*
発行価額の2分の1 90,000×1/2=45,000
株式払込剰余金 45,000×500=22,500,000
*額面株+無額面株* 20,000,000+22,500,000=42,500,000
・形式的増資は、資本金は増加するが、資産は増加しない増資で有る。
資本準備金や利益準備金等の資本金の組み入れと、株式による配当の場合である。
資本準備金や利益準備金等を資本金に組み入れる増資を、普通、無償増資と云う。
(例)資本準備金5,000,000を資本金に組み入れた。額面株式100株を発行して株主に無償交付した。
借方:資本準備金 5,000,000 貸方:資本金 5,000,000
B減資の時の仕訳
・会社設立後、資本金を減少させる事を減資と云う。
減資には、実質的減資と形式的減資が有る。
・実質的減資とは、資本金の減少と同時に資産の減少を伴う減資を云う。
会社の規模を縮小する目的等で、株式を買入て消却したりして資本金を減少させる場合の減資である。
(例)事業を縮小する為、額面株式200株を、1株50,000円で買入れて、消却した。
代金は小切手を振出して支払った。
借方:資本金 10,000,000 貸方:当座預金 10,000,000
・形式的減資は、資本金は減少するが、資産は減少しない減資である。 欠損金を補填する目的で行われる。
この減資は、資本金と欠損金とが相殺されるだけで、資本金は減少するが、資産は減少しない。
この減資を、普通、無償減資と云う。
(例)未処理欠損金10,000,000を補填する為、額面株式800株を、4株を3株に併合して減資した。
借方:資本金 10,000,000 貸方:未処理欠損金 10,000,000
資本金の減少額 40,000,000−(40,000,000×3/4)=10,000,000
(2)法定準備金
・法定準備金は、商法の規定により積立てなければならない準備金で、資本準備金と利益準備金が有る。
資本準備金には、株式払込余剰金、減資差益、合併差益がある。
利益準備金は、毎決算期に利益の処分として支出される金額の10分の1以上を、資本金の4分の1に
達するまで積立てて行く準備金で有る。
@資本準備金には3つ有る(商法第288条の2)
・株式払込余剰金、減資差益、合併差益
・減資差益は、実質的減資で、減少した資本金の額が株式の償却額を超える場合、その超える金額を減資差益と云う。
また、形式的減資で、減少した資本金の額が欠損金の補填額を超える場合、その超えた金額を減資差益と云う。
(例)Y株式会社は、事業を縮小する為に、額面株式200株を1株につき45,000円げ小切手を振出して購入し、
消却した。
借方:資本金 10,000,000 貸方:当座預金 9,000,000
減資差益 1,000,000
(例)S株式会社(資本金10,000,000、額面株式200株)は、未処理損失4,500,000を補填
する為、2株を1株に減資した。
借方:資本金 5,000,000 貸方:未処理損失 4,500,000
減資差益 500,000
・合併差益とは、2つ以上の会社が1つの会社に成る事を合併と云う。
合併には、一方の会社が他の会社を吸収する吸収合併と、元の会社が消滅して、新しい会社を設立する新設合併が有る。
合併により、合併会社が被合併会社から引継いだ純資産が、被合併会社の株主に交付した株式の額面総額を超えた額を
合併差益と云う。
(例)S株式会社は、下記財政状況に有るK株式会社を吸収合併し、S株式会社は額面株式30株をK株式会社の株主
に交付した。(1株の額面額50,000円)
K株式会社の 貸借対照表
当座預金 500,000 買掛金 1,500,000
売掛金 1,700,000 資本金 1,600,000
商品 900,000 利益準備金 100,000
備品 300,000 任意積立金 200,000
−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−
3,400,000 3,400,000
========== ==========
仕訳例(借方は諸資産、貸方は諸負債、資本金、合併差益)
借方:当座預金 500,000 貸方:買掛金 1,500,000
売掛金 1,700,000 資本金 1,500,000
商品 900,000 合併差益 400,000
部品 300,000
合併差益の計算
K社の総資産 K社の負債総額 K社の純資産
(3,400,000−1,500,000)= 1,900,000
K社の純資産 交付額の総額 合併差益
1,900,000−(50,000×30株)=400,000
S社は、K社の利益準備金と任意積立金をそのまま引継ぐことが出来る。
借方:当座預金 500,000 貸方:買掛金 1,500,000
売掛金 1,700,000 資本金 1,500,000
商品 900,000 利益準備金 100,000
備品 300,000 任意積立金 200,000
合併差益 100,000
A利益準備金
・毎決算期に利益の処分として支出される金額の10分の1以上を、中間配当を行う場合は、その配当額の10分の1を、
資本金の4分の1の額に達するまでは利益準備金として積立てなければならない。
(例)定期株主総会において、当期未処分利益1,350,000を次の通り処分する事が承認された。
利益準備金:商法で定められた最低額 株主配当金:700,000
役員賞与金:200,000 別途積立金:300,000
尚、決算日現在の資本金は10,000,000、利益準備金は150,000で有った。
また、次期繰越利益は未処分利益勘定で繰越す方法による。
借方:未処分利益 1,290,000 貸方:利益準備金 90,000
株主配当金 700,000
役員賞与金 200,000
別途積立金 300,000
(3)利益の処分と損失の処理
・資本の額から、資本金と法定準備金を差引いた額を、余剰金と云う。
余剰金には、任意積立金と当期末未処分利益の2つが有る。
当期未処分利益は、株主総会の決議によって、処分される。 これを、利益の処分と云う。
任意積立金は、利益処分によって積立てられる。
@余剰金
・余剰金には、任意積立金と当期未処分利益の2つが有る。
任意積立金は、次の2つが有り、株主総会の決議により、当期未処分利益の一部を積立てるものである。
任意積立金−−特定目的を持つ積立金:配当平均積立金、減債積立金、新築積立金など
|
|−特定目的を持たない積立金:別途積立金
・当期未処分利益は、前期繰越利益と当期純利益の合計額であり、株主総会の決議により処分される。
A利益の処分
・利益の処分の項目には次のものが有る。
・利益準備金:利益の処分として支出される金額の10分の1以上を、中間配当を行う場合には配当金の
10分の1を、資本金の4分の1に達するまで積立てなければならない。 これを利益準備金と云う。
・株主配当金:株主に対する利益の分配額を株主配当金と云う。
・役員賞与:役員(取締役/監査役)に対する利益の分配額を役員賞与と云う。
・任意積立金:利益の一部を積立てた積立金を、任意積立金と云う。
・繰越利益:当期未処分利益を、以上の様な項目に処分した後の残高を、繰越利益と云う。
繰越利益は、繰越利益勘定で繰越す。 また、未処分利益勘定で繰越す場合も有る。
(例)当期未処分利益6,500,000を次の様に処分し、残額は次期に繰越す事で決議した。
利益準備金:商法で認められた最低額 株主配当 :3,000,000
役員賞与金:1.000.000 別途積立金:1,500,000
*繰越利益勘定を設ける場合の仕訳*
借方:未処分利益 6,500,000 貸方:利益準備金 400,000
株主配当金 3,000,000
役員賞与金 1,000,000
別途積立金 1,500,000
繰越利益 600,000
*未処分利益勘定で繰越す場合の仕訳*
借方:未処分利益 5,900,000 貸方:利益準備金 400,000
株主配当金 3,000,000
役員賞与金 1,000,000
別途積立金 1,500,000
注:利益準備金の計算
(株主配当金3,000,000+役員賞与金1,000,000)×1/10=400,000
B利益処分計算書
・株主総会で利益の処分が決定すると、利益処分計算書を作成する。
利益処分計算書
OO株式会社 平成12年6月29日 (単位:円)
T 当期未処分利益 6,500,000
U 利益処分額
利益準備金 400,000
株主配当金 3,000,000
役員賞与金 1,000,000
別途積立金 1,500,000 5,900,000
−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−
V 次期繰越利益 600,000
==========
C損失の処理
・当期純損失は、損益勘定から未処理損失勘定に振替えておいて、前期からの繰越利益が有れば次の様に処理する。
*当期純損失が繰越利益より大きい場合:当基純損失1,800,000、繰越利益1,500,000
借方:未処理損失 300,000 貸方:損益 1,800,000
繰越利益 1,500,000
注:当期純損失から繰越利益を直接減額しない方法も有る
借方:未処理損失 1,800,000 貸方:損益 1,800,000
繰越利益 1,500,000 未処理損失 1,500,000
*当期純損失が繰越利益より小さい場合:当期純損失1,200,000、繰越利益1,500,000
借方:繰越利益 1,500,000 貸方:損益 1,200,000
未処分利益 300,000
注:当期純損失が繰越利益より小さい場合は、当期純損失は無くなり、未処分利益が生じる。
注:当期純損失を繰越利益から直接減額しない方法も有る。
借方:繰越利益 1,500,000 貸方:未処分利益 1,500,000
未処分利益 1,200,000 損益 1,200,000
・未処理損失は、株主総会の決議によって処理を決定するが、以下のように処理される。
*未処理損失を、次期へそのまま繰越す。
*任意積立金や利益準備金、資本準備金を取崩して、補填する。
注:次期に繰越す未処理損失、補填しきれない未処理損失を繰越損失と云い、繰越損失勘定で処理する。
また、繰越損失勘定を設けないで、そのまま未処理損失勘定に残しておく方法も有る。
(例)株式会社において、未処理損失2,500,000を処理する為、配当平均積立金500,000と
別途積立金1,500,000を取崩して補填し、残額は次期に繰越す決議をした。
*繰越損失勘定を設ける方法
借方:配当平均積立金 500,000 貸方:未処理損失 2,500,000
別途積立金 1,500,000
繰越損失 500,000
*未処理損失勘定で繰越す方法
借方:配当平均積立金 500,000 貸方:未処理積立金 2,000,000
別途積立金 1,500,00
D損失処理計算書
・株主総会で損失処理が決定されると、損失処理計算書を作成する。
損失処理計算書
OO株式会社 平成12年6月29日 (単位:円)
T 当期未処理損失 2,500,000
U 損失処理額
配当平均積立金 500,000
別途積立金 1,500,000 2,000,000
−−−−−−−−− −−−−−−−−−
V 次期繰越損失 500,000
=========
E利益準備金が変わった
・従来は、利益準備金は、金銭による利益の配当額の10分の1以上を積立てていたが、平成3年4月1日から、
利益の処分として支出される金額の10分の1以上を積立てる事に成った。
これにより、従来配当金の10分の1以上で良かったものが、配当金と役員賞与金の合計額の10分の1以上
を利益準備金とする事に成った。
(例1)株主総会で、当期未処分利益5,800,000を次の様に処分する事が承認された。
利益準備金:商法で認められる最低限 株主配当金:3,000,000
役員賞与金:1,500,000 別途積立金: 500,000
尚、決算日現在の資本金は30,000,000、資本準備金は10,000,000、
利益準備金は5,000,000であった。 次期繰越利益は未処分利益勘定で繰越す。
借方:未処分利益5,450,000 貸方:利益準備金 450,000
未払配当金 3,000,000
役員賞与金 1,500,000
別途積立金 500,000
注:利益準備金=配当金3,000,000+役員賞与1,500,000×1/10=450,000
資本金30,000,000の1/4は7,500,000
現準備金5,000,000+450,000=5,450,000<7,500,000の為、
そのまま450,000を利益準備金として計上する。
(例2)H株式会社は、株主総会で、未処理損失1,500,000を、配当平均積立金500,000と別途積立金
800,000を取崩して補填し、残額は次期に繰越す事を決定した。尚、次期に繰越す分は、繰越損失勘定
を用いる。
借方:配当平均積立金 500,000 貸方:未処理損失 1,500,000
別途積立金 800,000
繰越損失 200,000
注:繰越損失=(未処理損失1,500,000)−(配当平均積立金500,000+別途積立金800,000)
=200,000
(4)繰延資産
・既に発生した費用の内、その効果が次期以降に及ぶ場合は、一時的に資産として計上する事が出来る。
この様な一時的に資産として計上出来る費用を、繰延資産と云う。
繰延資産の種類は、創立費、開業費、試験研究費、開発費、新株発行費、社債発行費、社債発行差金、建設利息が有る。
@創立費の意味と仕訳
・創立費は、株式会社を設立する為に支出した費用で、定款の作成費用、設立当登記費、創立事務所費等が入る。
これらの費用を支出した時は、創立費勘定で処理する。
創立費は、会社設立後5年以内に、毎決算期に均等額以上の償却をしなければならない。
創立費を償却した時は、創立費償却勘定を設け、創立費勘定から償却額を振替える。
(例)K株式会社は、設立登記が終了し、発起人が立替払いしていた会社設立費用1,200,000を
小切手を振出して支払った。
借方:創立費 1,200,000 貸方:当座預金 1,200,000
決算に当り、創立費の内240,000を償却した。
借方:創立費償却 240,000 貸方:創立費 1,200,000
A開業費の意味と仕訳
・開業費は、会社設立後、営業を開始するまでに支出した費用で、土地、建物の賃貸料、広告宣伝費、通信交通費、
従業員給料等が有る。
これらの費用を支出した場合は、開業費勘定で処理する。
開業費は、開業後5年以内に、毎決算期に均等額以上の償却をしなければならない。
開業費を償却した時は、開業費償却勘定を設けて、開業費勘定から償却額を振替える。
(例)K株式会社は、開業準備の為諸費用1,000,000を、小切手を振出して支払った。
借方:開業費 1,000,000 貸方:当座預金 1,000,000
決算に当り、開業費の内200,000を償却した。
借方:開業費償却 200,000 貸方:開業費 200,000
B試験研究費の意味と仕訳
・試験研究費は、新製品または新技術の研究の為に、支出した費用で有る。
これらの費用を支出した時は、試験研究費勘定で処理する。
試験研究費は、支出後5年以内に、毎決算期に均等額以上の償却をしなければならない。
試験研究費を償却した時は、試験研究費償却勘定を設け、試験研究費勘定から償却額を振替える。
(例)新製品の試作費用4,000,000を、小切手を振出して支払った。
借方:試験研究費 4,000,000 貸方:当座預金 4,000,000
決算に当り、試験研究費の内800,000を償却した。
借方:試験研究費償却 800,000 貸方:試験研究費 800,000
C開発費の意味と仕訳
・開発費は、新技術や新経営組織の採用、資源の開発、市場の開拓等の為に特別に支出した費用で有る。
これらの費用を支出した時は、開発費勘定で処理する。
開発費は、支出後5年以内に、毎決算期に均等額以上の償却をしなければならない。
開発費を償却した時は、開発費償却勘定を設け、開発費勘定から償却額を振替える。
(例)新製品を発売する為に、市場の開拓を行い、その費用2,000,000を小切手を振出して支払った。
借方:開発費 2,000,000 貸方:当座預金 2,000,000
決算に当り、開発費の内400,000を償却した。
借方:開発費償却 400,000 貸方:開発費 400,000
D新株発行費の意味と仕訳
・新株発行費は、増資に当って、新株を発行する為に支出した費用で、株式募集の為の広告費、金融機関の取扱手数料、
株券の印刷費等が有る。
これらの費用を支出した時は、新株発行費勘定で処理する。
新株発行費は、新株発行後3年以内に、毎決算期に均等額以上の償却をしなければ成らない。
新株発行費を償却した時は、新株発行費償却勘定を設け、新株発行勘定から償却額を振替える。
(例)新株を発行し、新株発行の費用1,200,000を、小切手を振出して支払った。
借方:新株発行費 1,200,000 貸方:当座預金 1,200,000
決算に当り、新株発行費の内400,000を償却した。
借方:新株発行費償却 400,000 貸方:新株発行費 400,000
E社債発行費の意味と仕訳
・社債発行費は、社債を発行する為に支出した費用で、社債券の印刷費、証券会社の取扱手数料等が有る。
これらの費用を支出した時は、社債発行費勘定で処理する。
社債発行費は、社債発行後3年以内に、毎決算期に均等額以上の償却をしなければならない。
社債発行費を償却した特は、社債発行費償却勘定を設け、社債発行費勘定から償却額を振替える。
(例)社債を発行し、社債発行の費用900,000を、小切手を振出して支払った。
借方:社債発行費 900,000 貸方:当座預金 900,000
決算に当り、社債発行費の内300,000を償却した。
借方:社債発行費償却 300,000 貸方:社債発行費 300,000
F社債発行差金の意味と仕訳
・社債発行差金は、社債を割引発行した場合、額面金額と発行価額との差額で、社債発行差金勘定で処理する。
社債発行差金は、社債が償還されるまでの期間内に、毎決算期に均等額以上の償却をしなければ成らない。
社債発行差金を償却した時は、社債発行差金償却勘定を設け、社債発行差金勘定から償却額を振替える。
(例)額面総額50,000,000社債を、額面100につき98で発行し、全額の払込を受け、当座預金とした。
尚、期間は10年である。
借方:当座預金 49,000,000 貸方:社債 50,000,000
社債発行差金 1,000,000
決算に当り、社債発行差金の内100,000を償却した。
借方:社債発行差金償却 100,000 貸方:社債発行差金 100,000
G建設利息の意味と仕訳
・株式会社は、利益がでなければ配当する事が出来ない。 この為、鉄道、電力業、ガス業等、事業の性格上、
会社設立後2年以上営業の全部を開業する事が出来ない時は、定款に定める事を条件に、一定の利息を株主に
配当する事が認められている。 この場合の利息を建設利息と云う。
建設利息を支払った時は、建設利息勘定で処理する。
建設利息は、1年につき資本金の6%を超える利益の配当をするたびに、その超過額と同額以上の金額を償却
しなければならない。
建設利息を償却した時は、建設利息償却勘定を設け、間接利息勘定から償却額を振替える。
(例)K鉄道株式会社(資本金100,000,000)は、定款の定めにより、株主に対し利息3,000,000
を配当する事とし、小切手を振出して支払った。
借方:建設利息 3,000,000 貸方:当座預金 3,000,000
株主総会で、年7%の利益の配当をする事を決議したので、建設利息の内1,000,000を償却した。
借方:建設利息償却 1,000,000 貸方:建設利息 1,000,000
注:建設利息の計算
資本金100,000,000×(配当7%−建設利息上限6%)=1,000,000
(5)社債
・社債に付いては、社債の発行、社債の利払い、社債発行差金と社債発行費の償却、社債の償還の4つの時点の取引が有る。
社債の発行では、社債発行差金と社債発行費が生じる。
社債の利払いでは、利払日と決算日が異なる時は未払社債利息を計上する。
社債の償還では、償還方法に満期償還と買入償還が有る。
@社債の発行
・社債の発行には、平価発行、割引発行、打歩発行の3つの方法が有る。 通常は割引発行が行われる。
社債を割引発行した場合は、額面金額と発行価額の差額を社債発行差金と云い、社債発行差金勘定で処理する。
社債を発行する為の社債券の印刷費、証券会社の取扱手数料等の費用を社債発行費と云い、社債発行費勘定で処理する。
(例)額面10,000,000の社債を額面100円につき98円で発行した場合の発行価額と社債発行差金の計算。
発行価額 = 10,000,000 × 98/100 = 9,800,000
社債発行差金 = 10,000,000 × (100−98)/100 = 200,000
A社債の利払
・社債の利息は、通常年2回、半年毎に支払われる。
この利息を、社債利息と云い、社債利息勘定で処理する。
社債利息 = 額面総額 × 年利率 × 期間 で計算する。
(例)上記社債の年利率8%とし、利払日が3月31日と9月30日の年2回とする時の社債利息の計算。
社債利息 = 10,000,000 × 8% × 6/12 = 400,000
社債の利払日と決算日が異なる時は、利払日の翌日から決算日までの利息は、決算に際して、未払社債利息
として計上する。
上記社債で、利払日を6月30日と12月31日の年2回とし、決算日を3月31日にすると、
未払社債利息 = 400,000 × 3/6 = 200,000 と成る。
決算時の仕訳 借方:社債利息 200,000 貸方:未払社債利息 200,000
B社債発行差金・社債発行費の償却
・社債発行差金は、社債が償還されるまでの期間内に、毎決算期に均等額以上の償却をしなければ成らない。
社債発行差金を償却した時は、社債発行差金償却勘定を設けて、社債発行差金勘定から償還額を振替える。
(例)社債発行差金200,000について、社債の償還期間10年とすると
社債発行差金償却額 = 200,000 ÷ 10年 = 20,000
借方:社債発行差金償却 20,000 貸方:社債発行差金 20,000
・社債発行費は、社債発行後3年以内に(3年以内に償還期限が到来する時は、その期間内に)、毎決算期に
均等額以上の償却をしなければ成らない。
社債発行費を償却した時は、社債発行費償却勘定を設け、社債発行費勘定から償却額を振替える。
(例)社債発行費180,000について、3年間で償却すると
社債発行費償却額 = 180,000 ÷ 3年 = 60,000
借方:社債発行費償却 60,000 貸方:社債発行費 60,000
C社債の償還
・社債の償還方法には、満期償還と買入償還が有る。
・満期償還とは、償還期日(満期日)に額面金額で全額償還する方法を云う。
この場合、最終回の利息を支払うと共に、社債発行差金の償却も行う。
(例)社債10,000,000を満期償還した時、社債の年利率8%、利払は年2回、発行時の社債発行差金
200,000、償還期間10年。 尚、支払は、小切手を振出して支払う。
借方:社債 10,000,000 貸方:当座預金 10,400,000
社債利息 400,000 社債発行差金 20,000
社債発行差金償却 20,000
・買入償還とは、償還期日前に、市場価額で買入て償還する方法を云う。
この場合、額面金額と買入価額との差額は、社債償還益勘定または社債償還損勘定で処理する。
尚、償還する社債の社債発行差金は、一度に償却する。
(例)額面総額10,000,000(額面100円につき98円で発行、期間10年)の社債の内、
5,000,000を万年後に額面100円につき98円で買入償還し、小切手を振出して支払った。
借方:社債 5,000,000 貸方:当座預金 4,900,000
社債発行差金償却 50,000 社債償還益 100,000
社債発行差金 50,000
注:社債発行差金償却額の計算
(社債発行差金総額 − 5年間の償却額) × 償還社債/社債総額
(200,000−100,000)×5,000,000/10,000,000=50,000
(6)引当金
・引当金は、当期の負担になる金額を、当期の費用として見積計上する場合の貸方勘定で有る。
引当金には、評価性引当金と負債性引当金の2つが有る。
評価性引当金には貸倒引当金があり、負債性引当金には退職給与引当金、修繕引当金、商品保証引当金が有る。
@評価性引当金
・特定の資産の価額を計算するに当って、その資産から控除される引当金で、貸倒引当金が有る。
・貸倒引当金を計上する方法には、差額補充法と洗替法の2つが有る。(内容は3級の範囲)
・貸倒れと貸倒損失:受取手形や売掛金が貸倒れと成った場合、受取手形勘定や売掛金勘定を減少させると同時に、
貸倒引当金も減少させる。
(例)貸倒れ額<貸倒引当金の場合 売掛金50,000 貸倒引当金残高60,000
借方:貸倒引当金 50,000 貸方:売掛金 50,000
貸倒れ額>貸倒引当金の場合 売掛金80,000 貸倒引当金残高60,000
借方:貸倒引当金 60,000 貸方:売掛金 80,000
貸倒損失 20,000
・前期以前に貸倒れとして処理した売掛金や受取手形、当期に成って一部または全額が回収された場合は、
その回収額は、償却債券取立益勘定を用いて処理する。
(例)前期に貸倒れとして処理した売掛金80,000の内、現金で40,000を回収した。
借方:現金 40,000 貸方:償却債券取立益 40,000
A負債性引当金
・退職給与引当金とは、将来従業員が退職した場合に支給すべき退職金を、各会計期間に費用として見積計上
した場合に設けられる引当金で有る。
決算時に 借方:退職給与引当金繰入または退職給与金 貸方:退職給与引当金 と仕訳する。
従業員の退職時に 借方:退職給与引当金 貸方:現金 と仕訳する。
・修繕引当金とは、建物、機械装置、船舶等の将来発生する修繕費について、各会計期間に費用として見積計上
した場合に設けられる引当金で有る。
決算時に 借方:修繕費 貸方:修繕引当金 と仕訳する。
修繕を行った時に 借方:修繕引当金 貸方:現金または当座預金と仕訳する。
・商品保証引当金とは、販売した商品について、無料で修理や取替えを行う保証をした場合に、予想される費用を
見積計上した場合に設ける引当金で有る。
決算時に 借方:商品保証引当金繰入 貸方:商品保証引当金 と仕訳する。
修理を行った時に 借方:商品保証引当金 貸方:現金または当座預金と仕訳する。
(7)法人税等とその他の税金の処理
・法人税等とは、法人税と住民税の事で、法人税等は、決算日後2ヶ月以内に申告し、納付する。
年1回決算の会社は、中間申告を行い、6ヶ月分の法人税等を納付する。
中間申告によって納付した法人税等は、仮払法人税等(または仮払金)を用いて仕訳する。
その他の税金としては、固定資産税や事業税があり、租税公課勘定で処理する。
@法人税等の処理
・中間申告をして、法人税800,000、住民税200,000を小切手を振出して納付した場合は
借方:仮払法人税等 1,000,000 貸方:当座預金 1,000,000
・決算の結果、法人税1,700,000、住民税400,000を計上した場合は
借方:法人税等 2,100,000 貸方:仮払法人税等 1,000,000
未払法人税等 1,100,000
・確定申告を行い、未払法人等を小切手を振出して納付した場合は
借方:未払法人税等 1,100,000 貸方:当座預金 1,100,000
Aその他の税金の処理
・固定資産税では、固定資産税の納税通知を受取った時に
借方:租税公課または固定資産税 貸方:未払税金 と仕訳する。
固定資産税を納税した時に
借方:未払税金 貸方:現金または当座預金 と仕訳する。
・事業税では、中間申告で事業税を支払った時に
借方:租税公課 貸方:現金または当座預金 と仕訳する。
確定申告で事業税を支払った時に
借方:租税公課 貸方:現金または当座預金 と仕訳する。