簿記2級の勉強(その2) 手形の取引 商品売買の取引 商品売買に関する特殊な取引
固定資産の取引
4.手形の取引
・手形取引に於いて、約束手形や、為替手形を受取った時は、受取り手形勘定に記入。
約束手形を振出したり、為替手形を引受けた時は、支払手形勘定に記入。
(1)手形の裏書譲渡
・手形を裏書譲渡した時、満期日に支払人より決済されない時に生じる、偶発債務の仕訳けには、
評価勘定方法と対象勘定方法が有る。
・偶発債務とは、裏書譲渡した手形が満期日に支払人によって決済されない時は、その手形の裏書人は、
支払人に代わって、手形所持人に手形金額を支払わなければ成らないと云う支払義務が生じる。
この支払義務を偶発債務と云う。
・評価勘定を用いる方法:手形を裏書譲渡した時の偶発債務を、裏書手形勘定と云う評価勘定を用いて処理する。
(例)仕入代金として得意先振出しの約手500,000を裏書譲渡した。
借方:仕入 500,000 貸方:裏書手形 500,000
上記手形が満期日に決済された。
借方:裏書手形 500,000 貸方:受取手形 500,000
注:裏書手形勘定は、貸方に残高が発生し、この残高が偶発債務を表す。
裏書手形
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
決済された額 |裏書譲渡した額
―――――――――――|
残高:偶発債務を表す |
|――――――――――――
・対照勘定を用いる方法:偶発債務を、手形裏書義務勘定と手形裏書義務見返勘定を用いて処理する。
(例)仕入代金の支払として、得意先振出しの約手500,000を裏書譲渡した。
借方:仕入 500,000 貸方:受取手形 500,000
手形裏書義務見返500,000 手形裏書義務500,000
上記手形が満期日に決済された。
借方:手形裏書義務 500,000 貸方:手形裏書義務見返500,000
注:手形裏書義務見返勘定と手形裏書義務勘定の残高は偶発債務を表す。
手形裏書義務見返 手形裏書義務
――――――――――――――――――― ―――――――――――――――――
裏書譲渡した額 |決済された額 決済された額 |裏書譲渡した額
|―――――――――― ――――――――|
――――――――|残高:<−−−偶発債務を表す‐‐‐>:残高 |−−−−−−−−
(2)手形の割引
・手形の割引は取引銀行に手形を裏書譲渡した事で有るから、偶発債務が生じる。
手形を割引いた時は、評価勘定方法と対象勘定方法により仕訳ける。
・評価勘定を用いる方法:手形を割引いた時、割引手形勘定を用いて処理する。
(例)取引銀行で得意先振出しの約手700,000を割引、割引料5,000を差引かれて手取金は当座預金とした。
借方:支払割引料 5,000 貸方:割引手形 700,000
当座預金 695,000
上記手形が満期日に決済された。
借方:割引手形 700,000 貸方:受取手形 700,000
割引手形
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
決済された額 | 割引いた額
|
−−−−−−−−−|
偶発債務を表す:残高 |−−−−−−−−−−−−
・対照勘定を用いる方法:手形を割引いた時、割引手形勘定と割引手形見返勘定を用いて処理する。
(例)取引銀行で得意先振出しの約手700,000を割引、割引料5,000を差引かれて手取金は当座預金とした。
借方:支払割引料 5,000 貸方:受取手形 700,000
当座預金 695,000
割引手形見返 700,000 割引手形 700,000
上記手形が満期日に決済された。
借方:割引手形 700,000 貸方:割引手形見返 700,000
割引手形見返 割引手形
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
割引いた額 |決済された額 決済された額 |割引いた額
|−−−−−−−−−− ‐−−−−−−−−|
‐−−−−−−−−|残高 <−−−− 偶発債務を表す−−−> 残高 |−−−−−−−−−−−−
(3)手形の更改
・満期日を延期した新しい手形と旧手形を交換する事を手形の更改(手形の書き換え)と云う。
この時の仕訳けは、支払人は借方と貸方を支払手形とし、受取人は借方と貸方を受取手形とする。
・手形の更改に当って、支払を延期した期間に対する利息は、現金で支払うか、新手形の金額に加える。
・支払手形、受取手形の場合
(例)S商店は仕入先T商店宛に振出した約手700,000について満期日の延期を申し出て、了承を得た。
そこで利息5,000を加えた新手形を振出して、旧手形と交換した。
S商店 借方:支払手形 700,000 貸方:支払手形 705,000
支払利息 5,000
T商店 借方:受取手形 705,000 貸方:受取手形 700,000
受取利息 5,000
・手形借入金、手形貸付金の場合
(例)O商店は、H商店からの借入に対して振出した約手600,000につき、満期日の延期を申出て了承を得た。
そこで、利息7,000を現金で支払い、新手形を振出した。
O商店 借方:手形借入金 600,000 貸方:手形借入金 600,000
支払利息 7,000 現金 7,000
H商店 借方:手形貸付金 600,000 貸方:手形貸付金 600,000
現金 7,000 受取利息 7,000
(4)手形の不渡り
・手形が不渡りに成った時、不渡手形勘定に記入し、裏書人または振出人(為替手形の場合)に対して、手形金額の
支払請求をする。
裏書人または振出人(為替手形の場合)は、手形の所持人からの請求により手形金額を支払う。
・受取手形が不渡に成った時
受取手形勘定から不渡手形勘定の借方に振替える。 この時、不渡により生じた満期日以降の利息や償還請求に
要した費用も不渡手形勘定の借方に記入し、手形金額と一緒に裏書人または振出人(為替手形の場合)に支払請求する。
(例)K商店振出し、E商店裏書の約手600,000が不渡と成ったので、E商店に手形代金の支払請求した。
尚、償還請求費用4,000を現金で支払った。
借方:不渡手形 604,000 貸方:受取手形 600,000
現金 4,000
上記の不渡手形の金額をE商店振出の小切手で受取った。
借方:現金 604,000 貸方:不渡手形 604,000
・裏書譲渡した手形が不渡に成った時
手形所持人から手形金額の支払請求を受けた時、支払った手形代金を償還請求費用を不渡手形勘定の借方に記入。
(例)T商店に裏書譲渡した約手600,000が不渡と成り、償還請求費用4,000と共に小切手を振出して
支払った。
(評価勘定を用いた仕訳け)
借方:不渡手形 604,000 貸方:当座預金 604,000
裏書手形 600,000 受取手形 600,000
(対照勘定を用いた仕訳け)
借方:不渡手形 604,000 貸方:当座預金 604,000
手形裏書義務 600,000 手形裏書義務見返 600,000
・割引いた手形が不渡と成った時
取引銀行から手形金額の支払請求を受けた時、支払った手形代金と償還請求費用を、不渡手形勘定の借方に記入。
(例)銀行で割引いたK商店振出しの約手500,000が不渡りと成り、当座預金から引き落とされた。
(評価勘定を用いた仕訳け)
借方:不渡手形 500,000 貸方:当座預金 500,000
割引手形 500,000 受取手形 500,000
(対照勘定を用いた仕訳け)
借方:不渡手形 500,000 貸方:当座預金 500,000
割引手形 500,000 割引手形見返 500,000
・回収不能に成った時
手形金額の回収が出来なくなった場合は、貸倒れとして処理する。
(例)不渡手形として処理していた手形500,000が全額回収不能と成った。尚、貸倒引当金の
残高は600,000で有った。
借方:貸倒引当金 500,000 貸方:不渡手形 500,000
不渡として処理していた手形500,000が全額回収不能と成った。尚、貸倒引当金の残高は
400,000で有った。
借方:貸倒引当金 400,000 貸方:不渡手形 500,000
貸倒損失 100,000
(5)荷為替
・遠方の得意先に商品を販売し、その商品を運送業者に依頼して発送する時、運送業者から受取る貨物代表証券
(貨物引換証、船荷証券)を担保として、荷受人(得意先)を宛名人とする為替手形(荷為替)を振出し、
銀行で割引く事が有る。 これを荷為替の取組みと云い、この場合の荷為替の額面金額は売上代金の70〜80
%で有り、残額は売掛金とする。
・荷為替を取組んだ時の仕訳け:荷為替を取組む時は、割引により手形代金を受取る為、手形債券は生じない。
(例)M商店は、H商店に商品1,000,000を売渡し、船便で発送し、売上代金の内800,000を
荷為替に取組み、割引料5,000を差引かれて手取金は当座預金とした。
借方:支払割引料 5,000 貸方:売上 1,000,000
当座預金 795,000
売掛金 200,000
・荷為替を引受けた時の仕訳け:荷受人は、銀行からの提示により、荷為替を引受けて貨物代表証券を受取る。
この貨物代表証券と引換えに運送業者から商品を引取る。
荷受人が荷為替を引受けた時は、手形債務が生じるので、貸方が支払手形に成る。
(例)H商店は、M商店の荷為替を引受けて船荷証券を受け取り、これと引換えに商品を引き取った。
借方:仕入 1,000,000 貸方:支払手形 800,000
買掛金 200,000
・荷為替と未着品(または未着商品)
貨物代表証券を受取ったが、商品がまだ到着していない場合は、借方が仕入ではなく未着品(または未着商品)
と成る。
(例)H商店はM商店の荷為替を引受けて船荷証券を受取ったが、商品がまだ到着していない。
借方:未着品 1,000,000 貸方:支払手形 800,000
買掛金 200,000
H商店は、商品が到着し船荷証券と引換えに商品を引取った。
借方:仕入 1,000,000 貸方:未着品 1,000,000
(6)自己受為替手形と自己宛為替手形
・自己受為替手形
売上代金を回収する為、振出人が自己を受取人として振出す為替手形を自己受為替手形と云う。
自己受為替手形を振出して、名宛人の引受けを得た時は、手形債券が生じるので、受取手形と成る。
(例)N商店はM商店に対する売掛金回収のため、N商店を受取人とする為替手形400,000を振出し、
M商店の引受けを得た。
借方:受取手形 400,000 貸方:売掛金 400,000
・自己宛為替手形
仕入代金を支払う為に、振出人が自己を名宛人として振出す為替手形を、自己宛為替手形と云う。
自己宛為替手形は、自己が支払人に成る為、約束手形の振出しと同じに、支払手形と成る。
(例)Y商店は、G商店に対する買掛金300,000を支払う為、自己宛為替手形を振出し、G商店に渡した。
借方:買掛金 300,000 貸方:支払手形 300,000
5.商品売買の取引
(1)仕入及び売上の割引・割戻
・割引は支払期日前の決済による利息相当額の支払免除の事。
買掛金の支払免除は仕入割引と云い、売掛金の支払免除は、売上割引と云う。
・割戻は一定期間に一定額または一定数量以上の取引を行った時の支払免除の事。
仕入の支払免除は、仕入割戻と云い、売上の支払免除は売上割戻と云う。
・仕入割引は、仕入割引勘定(収益の勘定)を用いて仕訳ける。
(例)T商店は、I商店に対する買掛金700,000について支払期日前に支払う事とし、同店から2%の
割引を受け、小切手を振出して支払った。
借方:買掛金 700,000 貸方:当座預金 686,000
仕入割引 14,000
・売上割引は、売上割引勘定(費用の勘定)を用いて仕訳ける。
(例)I商店は、T商店に対する売掛金700,000について、支払期日前に支払う事の連絡を受けたので、
2%の割引を行い、小切手を受取った。
借方:現金 686,000 貸方:売掛金 700,000
売上割引 14,000
・仕入割戻は、仕入割戻勘定(または仕入勘定)を用いて仕訳ける。
(例)T商店は、仕入先I商店から予め定めた金額以上の仕入を行ったので、買掛金1,500,000につき
1%の支払免除を受け、小切手を振出して支払った。
借方:買掛金 1,500,000 貸方:当座預金 1,485,000
仕入割戻 15,000
・売上割戻は、売上割戻勘定(または売上勘定)を用いて仕訳ける。
(例)I商店は、得意先T商店が予め定めた金額以上の仕入を行ったので、売掛金1,500,000につき
1%の支払を免除し、小切手を受取った。
借方:現金 1,485,000 貸方:売掛金 1,500,000
売上割戻 15,000
(2)棚卸減耗費と商品評価損
@棚卸減耗費
・商品は、盗難、紛失、破損等で減少する事が有る。 これを棚卸減耗と云い、棚卸減耗による損失が棚卸減耗費。
・商品は、品質低下や流行遅れ等で価値が減少する事が有る。 これを商品評価損と云う。
・商品の棚卸方法
継続記録法(帳簿棚卸法):商品の受入、払出の都度、商品有高帳に継続的に記録し、商品有高を帳簿上に示す。
棚卸計算法(実地棚卸法):商品を実地に棚卸して、商品有高を明らかにする。
・棚卸減耗費は、商品の実地棚卸を行って実地棚卸量を決定し、帳簿棚卸数量とを比較して、数量不足(棚卸減耗)
を知る事が出来る。 この損失を棚卸減耗費または棚卸減耗損と云う。
計算式 棚卸減耗費 = 原価 × (帳簿棚卸数 − 実地棚卸数)
棚卸減耗費は、原価性(通常発生する金額)が有ると認められる時は、売上原価に算入し、原価性が有ると認め
られない時は、営業外費用とする。
(計算例)期首商品棚卸高 180,000
期末商品棚卸高 : 帳簿棚卸高 600個 原価 @250 150,000
実地棚卸高 580個 145,000
(原価)250 × (帳簿棚卸高600−実地棚卸高580) = (棚卸減耗費) 5,000
(仕訳例)
売上原価に算入の場合 借方:仕入 180,000 貸方:繰越商品 180,000
繰越商品 150,000 仕入 150,000
棚卸減耗費 5,000 繰越商品 5,000
仕入 5,000 棚卸減耗費 5,000
営業外費用の場合 借方:仕入 180,000 貸方:繰越商品 180,000
繰越商品 150,000 仕入 150,000
棚卸減耗費 5,000 繰越商品 5,000
A商品評価損
・商品は、原則として取得原価で評価する。 しかし、以下の3つの場合は、取得原価をその評価額まで引下げる。
この引下による損失を商品評価損と云う。
時価が著しく下落した場合:時価が著しく下落し、原価まで回復の見込みが無い場合は、時価で評価し、商品評価損
を計上しなければならない。 この商品評価損は。特別損失とする。
低価法による場合:時価が原価より下落した場合には、時価によって評価する方法を採用できる。
これを低価法と云う。 低価法による商品評価損は、原価性が有ると認められ時は売上原価に
算入し、原価性が有ると認められない時は、営業外費用とする。
品質低下、陳腐化による場合:棚ざらし、品質変化等による品質低下や流行遅れ等による陳腐化を原因とする商品
評価損は、原価性が有ると認められるものは、売上原価に算入し、原価性が有ると
認められないものは、営業外費用とする。
計算式 商品評価損 = (原価 − 時価) × 実地棚卸数量
(計算例)期首商品棚卸高 180,000
期末商品棚卸高 : 帳簿棚卸高 600個 150,000(原価ベース)
実地棚卸高 580個
原価:@250
時価:@240
(原価250 − 時価240) × (実地棚卸高580個) = (商品評価損5,800)
(仕訳例)
売上原価に算入 借方:仕入 180,000 貸方:繰越商品 180,000
繰越商品 150,000 仕入 150,000
商品評価損 5,800 繰越商品 5,800
仕入 5,800 商品評価損 5,800
営業外費用の場合 借方:仕入 180,000 貸方:繰越商品 180,000
繰越商品 150,000 仕入 150,000
商品評価損 5,800 繰越商品 5,800
注:棚卸減耗費と商品評価損の計算順序は、棚卸減耗費先に計算し、次に、実地棚卸数量について商品評価損を算出する。
仕訳についても、棚卸減耗費を先に仕訳け、その後で商品評価損の仕訳を行う。
6.商品売買に関する特殊な取引
(1)未着品売買
・遠方の取引先から商品を仕入れている場合、商品が到着する前に、貨物代表証券(貨物引換証、船荷証券)のままで
販売する事が有る。 これを未着品売買と云う。
未着品売買に付いては、貨物代表証券を受取った時の仕訳、商品が到着した時の仕訳、貨物代表証券のままで販売した
時の仕訳、の3つの時点の仕訳がある。
・貨物代表証券を受取った時は、未着品勘定を用いて仕訳ける。
(例)O商店に注文して有った、A商品500,000、B商品400,000の船荷証券を受取った。
借方:未着品 900,000 貸方:買掛金 900,000
・商品が到着した時は、貨物代表証券と引換えに商品を引取った場合は、未着品勘定から仕入勘定に振替える。
(例)O商店に注文して有った、A商品500,000が到着し、船荷証券と引換えに商品を引取った。
借方:仕入 500,000 貸方:未着品 500,000
・貨物代表証券のままで販売した時は、貸方を未着品売上勘定とし、同時に売上勘定を計算する為、未着品勘定から
仕入勘定に振替える。
(例)O商店に注文して有ったB商品400,000を、船荷証券のままで、F商店に480,000で売渡し、
代金は同店振出しの約手で受取った。
借方:受取手形 480,000 貸方:未着品売上 480,000
仕入 400,000 未着品 400,000
(2)委託売買
・商品の販売を他人(受託者)にいたくする事を、委託販売と云う。
委託販売では、受託者が販売した日に売上計上するが、販売の都度売上計算書が送付されて来る場合は、売上計算書が
到着した日に売上計上する事が出来る。
委託販売に付いては、商品を発送した時の仕訳、売上計算書が到着した時の仕訳の2つの時点の仕訳がある。
・受託者に商品を発送した時は、手元の商品と区別する為、仕入勘定から積送品勘定に原価で振替える。
発送の際に支払った運賃等の費用も、積送品勘定に入れ、積送品の原価に加える。
(例)T商店は、委託販売のため、F商店に商品500個(原価@1,000、販売価額@1,300)を発想した。
尚、発送費用10,000は小切手を振出して支払った。
借方:積送品 510,000 貸方:仕入 500,000
当座預金 10,000
・受託者から売上計算書が到着した時は、売上計算書の手取金額を積送品売上勘定とし、同時に、売上原価を計算する為、
積送品の原価を積送品勘定から仕入勘定に振替える。
(例)T商店は、F商店から商品が全て売れたとの売上計算書を受取った。
売上計算書
売上高 500個 @1,300 650,000
諸掛り
保管料 10,000
手数料 65,000 75,000
手取金 575,000
借方:売掛金 575,000 貸方:積送品売上 575,000
仕入 510,000 積送品 510,000
T商店は、手取金575,000を小切手で受取った。
借方:現金 575,000 貸方:売掛金 575,000
(3)受託販売
・他人から委託を受けて、商品を販売する事を、受託販売と云う。
受託販売では、委託者との間の債券/債務を処理する為、受託販売勘定を設ける。
受託販売に付いては、商品を受取った時の仕訳、費用を立替えて支払った時の仕訳、受託商品を販売した時の仕訳、
売上計算書を作成して送付した時の仕訳、販売代金を支払った時の仕訳、の5つの時点の仕訳がある。
・受託者が費用を立替えた時は、委託者に対する債券の発生で有るから、受託販売勘定の借方に記入し、受託商品の
販売代金は委託者に対する債務の発生であるから、受託販売勘定の貸方に記入する。
販売代金の支払は、委託者に対する債務の減少であるから、受託販売勘定の借方に記入する。
・受託者は商品を受取っても、その商品は預かっているだけで有るから、仕入勘定としない。
受託商品と自己の商品を区別する為に、受託品/受託販売未払金と云う対照勘定を用いて仕訳ける方法がある。
(例)F商店は、T商店から受託商品500個(販売価額@1,300)を受取った。
借方:受託品 650,000 貸方:受託販売未払金 650,000
・受託者が費用を立替えて支払った時は、借方を受託販売として仕訳ける。
(例)委託された商品について、保管料10,000を現金で支払った。
借方:受託販売 10,000 貸方:現金 10,000
・受託商品を販売した時は、販売代金は委託者に対する債務であるから、貸方を受託販売として仕訳ける。
(例)受託商品500個(販売価額@1,300)を販売し、代金は掛けとした。
借方:売掛金 650,000 貸方:受託販売 650,000
但し、商品を受取った時に、対照勘定を用いて仕訳して知る場合は以下の仕訳とする。
借方:受託販売未払金 650,000 貸方:受託品 650,000
・受託者は、受託商品を販売した時、手数料を受取る。 この手数料は、委託者に対する債券で有るから、
借方を受託販売として仕訳ける。
(例)F商店は、以下の売上計算書を作成してT商店に送付した。
売上計算書
売上高 500個 @1,300 650,000
諸掛り
保管料 10,000
手数料 65,000 75,000
手取金 575,000
借方:受託販売 65,000 貸方:受取手数料 65,000
・受託者が委託者に販売代金を支払った時は、委託者に対する債務の減少で有るから、借方を受託販売として仕訳ける。
(例)F商店は、T商店に手取金575,000を小切手を振出して支払った。
借方:受託販売 575,000 貸方:当座預金 575,000
(4)割賦販売
・代金を何回かに分割して受取る条件で、商品を販売する方法を、割賦販売と云う。
割賦販売では、販売基準による方法と回収基準による方法の2つの仕訳方法が有る。
また、各々の方法について、商品を販売した時の仕訳、割賦金を受取った時の仕訳、決算の時の仕訳の3つの時点の
仕訳が有る。
@販売基準による方法
・販売基準は、販売した時に売上収益を計上する基準である。
・商品を販売した時、借方を割賦売掛金、貸方を割賦売上と仕訳する。
(例)商品120,000(原価90,000)を10ヶ月の分割払いで売渡した。
借方:割賦売掛金 120,000 貸方:割賦売上 120,000
・割賦金を受取る都度、割賦売掛金の回収として仕訳ける。
(例)第一回目の割賦金12,000を現金で受取った。
借方:現金 12,000 貸方:割賦売掛金 12,000
・決算の時、割賦金の未回収部分に含まれる未実現利益を控除して、次期に繰延べる。
借方を繰延割賦売上利益控除、貸方を繰延割賦売上利益と仕訳ける。
未回収部分に含まれる未実現利益の計算式は、以下の通り。
未回収部分の未実現利益 = 未回収金額 × (売上利益 ÷ 売価)
(例)第5回目の割賦金を入金してから決算を迎えた。
未回収部分の未実現利益の計算
未回収金額 120,000−12,000×5回=60,000
未実現利益 60,000×(30,000÷120,000)=15,000
借方:繰延割賦売上利益控除 15,000 貸方:繰延割賦売上利益 15,000
翌期に未回収金額60,000が回収された時は、次の仕訳が必要となる。
借方:繰延割賦売上利益 15,000 貸方:繰延割賦売上利戻入 15,000
A回収基準による方法
・回収基準は、割賦金を受取る都度、その回収に見合う額を収益に計上する基準。
・商品を販売した時、借方を割賦売掛金、貸方を割賦仮売上と云う、対照勘定を用いて仕訳ける。
(例)商品120,000(原価90,000)を10ヶ月の割賦払いで売渡した。
借方:割賦売掛金 120,000 貸方:割賦仮売上 120,000
・割賦金を受取る都度、貸方を割賦売上として、仕訳ける。 同時に、対照勘定の金額を減少させる。
(例)第一回の割賦金12,000を現金で受取った。
借方:現金 12,000 貸方:割賦売上 12,000
割賦仮売上 12,000 割賦売掛金 12,000
・決算の時、未回収部分に含まれている原価を、期末商品棚卸高に加える。
未回収部分の原価 = 未回収金額 × (原価 ÷ 売価)
(計算例)第5回の割賦金を入金してから決算を迎えた。
未回収金額 120,000 − (12,000 × 5回) = 60,000
未回収部分の原価 60,000 × (90,000 ÷ 120,000) = 45,000
・割賦販売と回収基準
割賦販売でも販売基準で売上計上する事を原則としているが、回収基準で売上計上する事も認められている。
回収基準は、割賦基準とも云い、割賦販売だけに認められている売上計上方法で有る。
(5)試用販売
・得意先に商品を発送し、得意先が試用した後で買取ると云う販売方法を、試用販売と云う。
従って、商品を発送した時に売上収益を計上するのでは無く、買取りの意思表示が有った時に売上収益を計上する。
商品を発送した時の仕訳、買取りの意思表示が有った時の仕訳、試用品が返却された時の仕訳、の3つの時点の
仕訳が有る。
・商品を発送した時は、借方を試用品販売売掛金、貸方を試用品販売と云う対象勘定を用いて、売価で仕訳ける。
(例)試用販売の為、T商店に商品200,000(売価)を発送した。
借方:試用販売売掛金 200,000 貸方:試用販売 200,000
・買取りの意思表示が有った時は、貸方を売上として仕訳ける。 同時に、対照勘定の貸借反対にして仕訳ける。
(例)T商店から先に発送した商品の内150,000を買取る旨の連絡を受け、代金は掛けとした。
借方:売掛金 150,000 貸方:売上 150,000
試用販売 150,000 試用販売売掛金150,000
・試用品が返却された時は。商品発送の時の仕訳を、貸借反対にして仕分ける。
(例)T商店から、買取りの意思表示の無かった商品50,000が送り返された。
借方:試用販売 50,000 貸方:試用販売売掛金 50,000
(6)予約販売
・前もって予約金を受取って注文を受け、後で商品を引渡す販売方法を予約販売と云う。
従って、予約金を受取った時に売上収益を計上するのでは無く、商品を引渡した時に、売上収益を計上する。
予約販売では、予約金を受取った時の仕訳、商品を引き渡した時の仕訳の2つの時点の仕訳がある。
・予約金を受取った時は、貸方を前受金または予約販売前受金として仕訳ける。
(例)百科辞典の予約販売を行い、予約金1,500,000を現金で受取った。
借方:現金 1,500,000 貸方:前受金 1,500,000
・商品を引渡した時は、貸方を売上として仕訳ける。
(例)先の予約注文の有った百科辞典の一部150,000が完成したので本を引渡した。
借方:前受金 150,000 貸方:売上 150,000
7.固定資産の取引
(1)有形固定資産の取引
・有形固定資産には、建物、構築物、機械装置、車輛運搬具、備品、土地、建設仮勘定等が有る。
これらの取得原価は、購入代金に、付随費用を加えた額と成る。
土地と建設勘定を除く有形固定資産は、減価償却を行う。 その計算方法は、定額法、定率法、比例法が有る。
有形固定資産を売却した時は、固定資産売却損益が生じる。
除脚または廃棄した時は、固定資産除脚損や固定資産廃棄損が生じる。
・有形固定資産を取得した場合は、その購入代価に、仲介手数料、引取費、据付費、地ならし費等の付随費用を加えた
額を、取得原価とする。
・建物、構築物、機械装置、車輛運搬具、備品等の有形固定資産は、年々その価値が減少するので、一定の計算方法に
よって、価値の減少額を計算する。 この価値の減少額を減価償却費と云う。
・減価償却費の計算方法には、定額法、定率法、比例法の3つが有る。
@定額法による減価償却費の計算
取得原価から残存価額を差引いた額を、耐用年数で割って減価償却費を求める。
尚、残存価額は取得減価の10%として計算する。
減価償却費 = (取得原価 − 残存価額) ÷ 耐用年数
(例)取得原価1,000,000 残存価額は取得原価の10% 耐用年数 5年
減価償却費 = (1,000,000 − 100,000) ÷ 5年 =180,000
A定率法による減価償却費の計算
毎期末の未償却残高に一定の償却率を掛けて、減価償却費を求める。
減価償却費 = 未償却残高 × 償却率
償却率 = 1 − 耐用年数 √ (残存価額 ÷ 取得原価)
(例)取得原価1,000,000 残存価額は取得原価の10% 耐用年数 5年 償却率は0.369
1年目 減価償却費 = 1,000,000 × 0.369 = 369,000
2年目 減価償却費 =(1,000,000−369,000)×0.369=232,839
B比例法による減価償却費の計算
取得原価から残存価額を差引いた金額に、総利用可能量を分母とし、当期の実際利用料を分子とする割合を
掛けて、減価償却費を求める。
減価償却費 = (取得原価 − 残存価額) × (実際利用量 ÷ 総利用可能量)
(例)取得原価1,000,000 残存価額は取得原価の10%の自動車(総走行可能距離50,000km)
を購入し、当期の実際走行距離は10,000kmで有った。
減価償却費=(1,000,000−100,000)×(10,000÷50,000)=180,000
・減価償却費の仕訳には、直説法と間接法の2つが有る。
@直説法による仕訳
借方:減価償却費 180,000 貸方:車輛運搬具 180,000
A間接法による仕訳
借方:減価償却費 180,000 貸方:減価償却累計額 180,000
・有形固定資産を売却した時は、帳簿価額と売却価額との差額を、固定資産売却損または固定資産売却益で仕訳ける。
(例)取得原価1,000,000、減価償却累計額720,000の車輛を売却し、売却代金300,000は
月末受取る事とした。
借方:未収金 300,000 貸方:車輛運搬具 1,000,000
減価償却累計額720,000 固定資産売却益 20,000
・有形固定資産の除脚とは、固定資産が使用出来なく成って、帳簿から取除く事を云い、除脚された固定資産は、
見積売却価額で貯蔵品勘定で処理する。
(例)取得原価800,000、減価償却累計額720,000の機械を、除脚し、除脚費用30,000を現金で
支払った。 尚、見積売却価額は15,000で有った。
借方:減価償却累計額 720,000 貸方:機械装置 800,000
貯蔵品 15,000 現金 30,000
固定資産売却損 95,000
・有形固定資産の廃棄とは、固定資産が使用出来なく成り処分する事を云い、廃棄された固定資産は、見積売却価額
が無い。
(例)取得原価800,000減価償却累計額720,000の機会を廃棄し廃棄費用30,000を現金で支払った。
借方:減価償却累計額 720,000 貸方:機械装置 800,000
固定資産廃棄損 110,000 現金 30,000
・建設仮勘定とは、建物、構築物等の建設が長期に渡る場合に、建設に要した支出額を一時的に処理する勘定で有る。
建設に支出した額を、その都度、建設仮勘定の借方に記入し、完成した時に、建設仮勘定から建物勘定、構築物勘定
へ振替える。
(例)事務所建物の建築を依頼し、請負代金50,000,000の内、10,000,000を小切手で支払った。
借方:建設仮勘定 10,000,000 貸方:当座預金 10,000,000
上記事務所建物が完成し、引渡しを受け、残額10,000,000を小切手で支払った。
借方:建物 50,000,000 貸方:建設仮勘定 40,000,000
当座預金 10,000,000
(2)無形固定資産及びその他の固定資産の取引
・無形固定資産には、法律上の権利としての無形固定資産と法律上では無い無形固定資産が有る。
その取得原価、取得までに要した全ての支出額と成る。
無形固定資産の償却は、残存価額をゼロとし、定額法で直説法で仕訳けるのが一般的である。
その他の固定資産には、投資と長期前払費用が有る。
・無形固定資産には、特許権、実用新案権、商標権、意匠権、借地権、鉱業権、電話加入権等の法律上の権利と、
営業権(のれん)の法律上の権利で無いものが有る。
・特許権、実用新案権等の法律上の権利は、その取得の為に支出した額の全てを取得原価にする。
(例)特許権を8,000,000で買入れ、代金は小切手を振出して支払った。
借方:特許権 8,000,000 貸方:当座預金 8,000,000
・営業権は、他企業を買収または合併によって取得した場合に限って、資産に計上する事が出来る。
(例)M商店は、K商店の店舗を30,000,000で買収し、代金は小切手で支払った。
尚、K商店の資産は、商品3,000,000建物8,000,000土地15,000,000と評価された。
借方:商品 3,000,000 貸方:当座預金 30,000,000
建物 8,000,000
土地 15,000,000
営業権 4,000,000
・特許権、実用新案権等の法律上の権利は、その権利が法律により認められる期間に亘って償却する。
(例)特許権8,000,000を8年間で均等償却する。
借方:特許権償却 1,000,000 貸方:特許権 1,000,000
・営業権は、取得後5年以内に、毎決算期に均等額以上の償却を行う。
(例)営業権4,000,000を5年間で均等償却する。
借方:営業権償却 800,000 貸方:営業権 800,000
・その他の資産には、投資もしくは支配目的で所有する有価証券、出資金、長期貸付金、投資不動産および
長期前払費用(1年を超える前払費用)が有る。
これらの資産の取得原価は、他の資産と同じ方法と成る。
(例)投資目的でA社株式1010,000株(額面@500)を1株当り@600で購入し、代金は小切手で支払った。
借方:投資有価証券 6,000,000 貸方:当座預金 6,000,000
決算に当り、前払費用200,000を計上したが、1年を超える前払費用が150,000有ったので振替えた。
借方:長期前払費用 150,000 貸方:前払費用 150,000