簿記2級の勉強(その8) 工業簿記 個別原価計算
6.個別原価計算
(1)個別原価計算の方法と記帳
・個別原価計算では、受注した製品毎に、製造指図書を発行し、製造指図書別に原価計算表を作成する。
・製造直接費は、各原価計算表に直接集計し、製造間接費は、一定の基準によって、各原価計算表に配分する。
・原価計算表は、総勘定元帳の仕掛品勘定に総括的に記録される製造原価の内訳明細を、記録しているものと云える。
@原価元帳と総勘定元帳の仕掛品勘定との関連
・個別原価計算表における原価元帳と総勘定元帳の仕掛品勘定との関連は、次の通り。
原価元帳
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
製造指図書 |#1 |#2 |#3 |合計 仕掛品勘定
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
前月繰越 | 15| 30| − | 45 −−> 前月繰越 45 |製品 435<−−−|
直接材料費 | 75| 60| 30|165 −−> 直接材料費 165 |次期繰越 150<−| |
直接労務費 | 45| 74| 15|135 −−> 直接労務費 135 | / | |
直接経費 | 30| 30| 45|105 −−> 直接経費 105 | / | |
製造間接費 | 30| 45| 60|135 −−> 製造間接費 135 | / | |
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− −−−−−− −−−−−−−− | |
合計 |195|240|150|585 585 | 585 | |
−−−−−−−================ ====== ==== | |
備考 |完成 |完成 |未完成| | |
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− | |
| | | 未完成=次期繰越高 | |
| | |−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−| |
|−−−−−−−| |
| 完成=製品 |
|−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−|
・各原価計算表の合計額は、仕掛品勘定のそれぞれの金額と一致する。
・未完成の原価計算表の月末合計金額は、仕掛品勘定の次月繰越高と一致し、仕掛品の現在高を示す。
(例)仕掛品勘定と原価計算表の( )内に金額を記入する。 尚、#1は完成している
仕掛品 原価計算表
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
前月繰越 25,000 |製品 100,000 | #1 | #2 | #3
直接材料費 70,000 |次期繰越 (127,000) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
直接労務費 72,000 | / 月初仕掛品 |(15,000)| 10,000 | −−
直接経費 (26,000)| / 直接材料費 |(26,000)| 20,000 | (24,000)
製造間接費 34,000 | / 直接労務費 | 30,000 |(40,000)| (2,000)
−−−−−− −−−−−−−−−− 直接経費 | 14,000 |(8,000)| 4,000
(227,000)| (227,000) 製造間接費 | 15,000 | 12,000 | 7,000
====== ======= −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
合計 |(100,000)| 90,000 | 37,000
・#1の月初仕掛品 = 仕掛品勘定の前月繰越25,000 − #2月初仕掛品10,000 = 15,000
・#1の合計 = #1は製品が完成している事から、仕掛品勘定製品100,000と一致するので100,000
・#1の直接材料費=#1合計100,00−(#1月初仕掛15,000+直接労務費30,000
+直接経費14,000+製造間接費15,000)
=26,000
・#3の直接材料費=仕掛品勘定の直接材料費70,000−(#1直接材料費26,000+#2直接材料費20,000)
=24,000
・#3の直接労務費=#3合計37,000−(#3直接材料費24,000+直接経費4,000+製造間接費7,000)
=2,000
・#2の直接労務費=仕掛品勘定の直接労務費72,000−(#1直接労務費30,000+#3直接労務費2,000)
=40,000
・#2の直接経費=#2合計90,000−(#2月初仕掛10,000+#2直接材料費20,000
+#2直接労務費40,000+#2製造間接費12,000)
=8,000
・仕掛品勘定の直接経費=#1直接経費14,000+#2直接経費8,000+#3直接経費4,000
=26,000
・仕掛勘定の次期繰越=#2合計90,000+#3合計37,000=127,000
?仕掛品勘定の合計=借方の合計227,000、貸方の合計227,000
(2)仕損の処理と作業屑の処理
・不合格品が発生する事を仕損と云い、仕損の発生による費用を仕損費と云う。 不合格品の事を仕損品と云う。
・仕損費は、正常な仕損の場合は直接経費または間接経費として処理し、異常な仕損の場合は営業外費用や特別損失
として処理する。
・材料の切削屑や裁断屑を、作業屑と云い、作業屑は発生部門の製造間接費から差引くか、製造指図書の直接材料費
または製造原価から差引く。
@仕損費の計算
・補修する事で、仕損品が合格品と成る場合は、補修に要した費用が仕損費と成る。
(例)製造指図書#10の製品10個が仕損と成り、補修指図書を発行して補修を行った。
補修費は、材料費20,000、労務費12,000、経費9,000であった。
この仕損費は製造指図書#10に賦課した。
借方:仕損費 41,000 貸方:材料 20,000
労務費 12,000
経費 9,000
借方:製造 41,000 貸方:仕損費 41,000
・補修する事が出来ず代品を製造する場合は、
a:旧製造指図書の全部が仕損の時は、旧製造指図書に集計された原価が仕損費と成る。
b:旧製造指図書の一部が仕損の時は、新製造指図書に集計された原価が仕損費と成る。
(例)製造指図書#15の全部が仕損品と成り、代品を製造した。 旧製造指図書の製造原価は85,000であり
仕損品の評価額は15,000で有った。 仕損費は製造間接費とした。
借方:仕損品 15,000 貸方:製造 85,000
仕損費 70,000
借方:製造間接費 70,000 貸方:仕損費 70,000
A仕損費の処理
・正常仕損の場合には、直接経費または間接経費(製造間接費)として処理する。
・異常仕損の場合には、原価外の損失として、営業外費用または特別損失として処理する。
B作業屑の評価
・外部に売却出来るものは、見積売却価額から、販売費及び一般管理費と通常の利益の見積額を控除した金額とする。
・加工の上売却出来るものは、見積売却価額から、加工費、販売費及び一般管理費、通常の利益の見積額を控除した
金額とする。
(例)製造指図書#25の製造中に作業屑が発生し、この評価額を12,000と見積、製造勘定から差引いた。
借方:作業屑 12,000 貸方:製造 12,000
C作業屑の処理
・評価額を発生部門の部門費(製造間接費)から、または、製造指図書の直接材料費から、または、製造原価から控除する。
尚、作業屑の発生額が僅かである場合には、評価しないで、売却時に雑収入で処理する。
(例)上記作業屑を12,000で売却し、代金は現金で受取った。
借方:現金 12,000 貸方:作業屑 12,000
評価しないで保管していた作業屑を3,000で売却し、代金は現金で受取った。
借方:現金 3,000 貸方:雑収入 3,000