簿記の勉強(続き8) 第4篇決算(その1) 第20章決算整理その1 第21章8桁精算表
第22章帳簿決算と財務諸表の作成その1
実務的な決算整理のルールが複雑に成っている。(売上原価の振替、貸倒れ引当、減価償却等)
ルールを覚える事に専念し、仕組みを理解する必要が有る。
8桁精算表:決算整理仕訳して、整理記入欄に記入する。
帳簿決算:会計帳簿(仕訳帳、総勘定元帳等)を締め切る事を言う。
財務諸表:決算報告書(損益計算書、貸借対照表等)を言う。
第20章決算整理その1
1.決算整理とは
決算日に於ける資産・負債・資本の各勘定の残高は、その実際有高を正しく示さなければ成らない。
また、費用・収益の各勘定も、その会計期間の発生額を正しく表していなければ成らない。
決算に当り、それらの勘定の残高を、正しい金額を示す様に修正する必要が有る。 この修正手続きを
決算整理(決算修正)と言い、その為に必要な仕訳を決算整理仕訳、整理を必要とする事柄を決算整理事項と言う。
@3文法による商品に関する勘定の決算整理:売上原価の整理
A貸倒れの見積もり:差額を計上する方法
B固定資産の原価償却
注:上記3項目以外にも現金過不足の整理、引出金の整理も決算整理事項で有る。
2.商品に関する勘定の決算整理:売上原価の計算
(1)何故商品に関する勘定の決算整理を行うのか
商品売買の取引を3文法で記帳している場合、商品売買損益は次のように決算日に計算する。
純売上高 ー 売上原価 = 商品売買益(マイナスの場合は商品売買損)
純売上高は売上勘定の残高として示される。
売上原価は商品に関する勘定(仕入勘定、売上勘定、繰越商品勘定)は何処にも示されない。
そこで、決算日に売上原価を求める為に、実際に商品の棚卸を行い、期末商品棚卸高を求めて、
商品に関する勘定の決算整理を行う。(仕入勘定の残高が売上原価を示す様に修正する)
仕入 売上 繰越商品
−−−−−−−−−− −−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−
| | |残高は
|ーーーーー ーーーーーー| |期首商品
| 残高は | |棚卸高を示す
|残高は 純売上高 | −−−−−−
|純仕入高を示す を示す |
−−−−−− |−−−−
(2)商品に関する勘定の決算整理のルール
次の様に商品に関する勘定の決算整理を行う。
@期首商品棚卸高(前期繰越高)を、繰越商品勘定から仕入勘定の借方に振替える。
A期末商品棚卸高(次期繰越高)を、仕入勘定の貸方と繰越商品勘定の借方に記入する。
期首商品棚卸高 + 純仕入高 − 期末商品棚卸高 = 売上原価
売上原価を求める計算式を勘定に記帳に置き換えるルール
例: 繰越商品 仕入 期末商品棚卸高=300
−−−−−−−− −−−−−−−−−−
前期繰越| 純仕入高|
400 | 2600 |
@ (借り)仕入 400 (貸し)繰越商品 400 −−>期首商品棚卸高を仕入の借方に振替
繰越商品 仕入
−−−−−−−−−ーーー −−−−−−−−−−−−−
前期繰越400|仕入400 純仕入高2600|
繰越商品 400|
A (借り)繰越商品 300 (貸し)仕入300 −−>期末商品棚卸高を仕入の貸方に振替
繰越商品 仕入
−−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−−
前期繰越400|仕入 400 純仕入高2600|繰越商品300
仕入 300| 繰越商品 400|ーーーーーー
|仕入勘定の残高
|2700が売上原価を示す
注:上記の決算整理仕訳を行った後に、売上勘定と仕入勘定の残高を損益勘定に振替仕訳を行う。
決算整理仕訳と決算振替仕訳を合わせて決算仕訳と言う。
仕入 売上
−−−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−−−−−
純仕入高2600|繰越商品300 |純売上高3500
繰越商品 400|
(借り)売上 3500 (貸し)損益 3500
(借り)損益 2700 (貸し)仕入 2700
仕入 売上
−−−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−−−−−
純仕入高2600|繰越商品300 損益 3500 |純売上高3500
繰越商品 400|ーーーーーー |
|損益 2700
損益
−−−−−−−−−−−−−−
仕入2700 |売上 3500
−−−−−−−|
商品売買益800|−−−−−−
3.貸倒れの見積もり
(1)何故、決算日に貸倒れを見積もるのか
売掛金が得意先の倒産等で、回収出来なく成る事を貸倒れと言う。(受取手形等でも発生する)
決算日に於ける売掛金には、次期に貸倒れと成る事が予想されるもの(見積もり)を含んでいる為、
次期に確実に回収出来ると予想される金額を示していない。
一方、次期に於いて当期末の売掛金から実際に貸倒れが発生した場合、その貸倒れは、当期の売掛金
に関わるもので有るから、次期の費用とせずに当期の費用としなければならない。
そこで、決算に当り、次期に生じるかもしれない貸倒れを見積もり、売掛金勘定の残高を修正し、同時に、
当期の費用として予め樫田をれを計上する決算整理が必要になる。
(2)貸倒れの記帳のルール
決算整理で、貸倒れの見積もりは次の様に記帳する。
@貸倒れの予想額を見積もり、これを当期の費用として貸倒償却勘定の借方に記入すると共に、同額を
貸倒引当金勘定の貸方に記入する。
(借り)貸倒償却 xxx (貸し)貸倒引当 xxx
貸倒見積額 = 売掛金の期末残高 × 貸倒償却率(実務では税法で定めた率を用いる)
A貸倒引当勘定に残高が有る場合、貸倒見積額との差額を次の様に記帳する。(差額補充法又は差額調整法)
・貸倒見積額 > 貸倒引当金勘定の残高 の場合
貸倒見積額から貸倒引当金勘定の残高を差引いた額を用いる
(借り)貸倒償却 xxx (貸し)貸倒引当金 xxx
・貸倒見積額 < 貸倒引当金勘定の残高 の場合
貸倒引当金勘定の残高から貸倒見積額を差引いた額を用いる
(借り)貸倒引当金 xxx (貸し)貸倒引当金戻入
例1:Y商店で1期決算に当り、売掛金残高560,000に対し5%の貸倒れを見積もった。
(借り)貸倒償却 28,000 (貸し)貸倒引当金 28,000
(売掛金残高560,000×0.05=28,000)
売掛金 貸倒償却 貸倒引当金
−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−−
売掛金期末 | 貸倒引当金 | |貸倒償却
残高560000 | 28000 | |28000
売掛金期末残高から貸倒引当金の残高を差引いた額が次期の売掛金回収可能額
例2:Y商店2期に入ってから貸倒れが20,000発生した。(貸倒れ引当金の残高は28,000有った)
(借り)貸倒引当金 20,000 (貸し)売掛金 20,000
例3:Y商店2期決算で売掛金残高520,000に対して5%の貸倒れを見積もった。 ただし、貸倒引当金
残高が8,000有る。 (520,000×0.05=26,000)
(貸倒見積額26000>貸倒引当金残高8000ーー>26000−8000=18000)
(借り)貸倒償却 18,000 (貸し)貸倒引当金 18,000
貸倒償却 貸倒引当金
−−−−−−−−−−−−−−−ーーーー −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
1期 貸倒引当金 28000|損益 28000 1期 次期繰越28000|貸倒償却 28000
2期 貸倒引当金 18000|損益 18000 2期 売掛金 20000|前期繰越 28000
2期 次期繰越 26000|貸倒償却 18000
例4:Y商店で3期に入ってから売掛金30,000の貸倒れが発生した。ただし、貸倒引当金の残高は26,000
(借り)貸倒引当金 26,000 (貸し)売掛金 30,000
貸倒償却 4,000
例5:Y商店10期決算で売掛金残高760,000に対して5%の貸倒れを見積もった。
ただし,貸倒引当金の残高は40,000有った。(760,000×0.05=38,000)
(貸倒見積額38000<貸倒引当金残高40000−−>40000−38000=2000)
(借り)貸倒引当金 2000 (貸し)貸倒引当金戻入 2000
注:過年度に貸倒れとして処理した売掛金が、当期に回収された場合は、償却債券取立益勘定(収益の勘定)
の貸方に記入する。 (借り)現金 30,000 (貸し)償却債券取立益 30,000
4.固定資産の減価償却
(1)何故固定資産の減価償却をするのか
建物、備品、車輛運搬具等の固定資産は、使用し、時が経過するにつれ、その価値は減少する。
決算日の固定資産の各勘定の期末残高は、この価値の減少分が反映されていない為、正しい価値を示さない。
そこで、決算に当り、当期中に於ける価値の減少額を計算し、これを当期の費用として計上する。
同時に、各固定資産の勘定の期末残高から、減少額を差引き、決算日に固定資産が正しい価値を示す様に
修正する必要が有る。 この手続きを減価償却と言い、計上される費用を減価償却費と言う。
注:土地は使用して時が経過しても価値が減少しないので、減価償却の対象外と成っている。
(2)減価償却費の計算方法:定額法による計算
定額法は、毎期一定額を減価償却費として計上する方法。
取得原価 − 残存価格
定額法の計算式 減価償却費= −−−−−−−−−−−− = 1年分の原価償却費
耐用年数
残存価格:固定資産が使用出来無くなり処分する時の予想売却価格、通常取得原価の10%と成っている。
提要年数:固定資産が使用出来ると見られる見積年数
例:取得原価400,000、残存価格は取得原価の10%、耐用年数8年の備品の減価償却費を定額法で計算
取得原価400000−残存価格(400000×0.1) = 減価償却費 45000
(3)減価償却費の記帳のルール
減価償却費の記帳には、直接法と間接法があるが、ここでは資産の各勘定の残高を直接減額する
直説法で記帳する。
・減価償却費を減価償却費勘定(費用の勘定)の借方に記入すると共に同額を該当する固定資産勘定の貸方
に記入し、その固定資産の帳簿価格(勘定残高)を直接減額する。
固定資産の勘定 減価償却費
−−−−−−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−−−−
取得原価 |減価償却費 減価償却費 |
または |ーーーーーーーー −−−−−−−−|
帳簿価格 | 決算整理後の
ーーーーーーーーー|帳簿価格(未償却価格)
例:取得原価400,000 残存価格は取得原価の10% 耐用年数8年 の備品の決算整理仕訳
(借り)減価償却費 45000 (貸し)備品 45000
(借り)損益 45000 (貸し)減価償却費 45000
備品 減価償却費
−−−−−−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−−−−−−
(取得減価)400000|減価償却45000 備品 45000 |損益 45000
/ |次期繰越355000
ー−−−−−| −−−−−
400000 | 400000
=====| =====
前期繰越 355000|ーーー>帳簿価格
5.棚卸表
決算に当り決算整理事項の明細を一覧表に纏めたものを棚卸表と言う。
棚卸表
平成0年12月31日
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
勘定科目 | 摘要 | 内訳 | 金額
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
繰越商品 |机 2脚 @25000 | 50000 |
|椅子10脚 @8500 | 85000 | 135000
| |−−−−−−−|
売掛金 |期末残高 | 640000 |
|貸倒見積高残高の5%| 32000 | 608000
| |ーーーーーーーー|
備品 |取得原価 | 400000 |
|減価償却費 | 45000 | 355000
| |−−−−−−−|=======
第21章8桁精算表
1.8桁精算表とは
6桁精算表に決算整理仕訳を記入する為の整理記入欄を設けて、8桁精算表を作成する。
精算表
平成0年12月31日
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−ーーー−−−−−
勘定科目|元| 残高試算表 | 整理記入 | 損益計算表 | 貸借対照表
| |ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
|丁| 借方 | 貸方 | 借方 | 貸方 | 借方 | 貸方 | 借方 | 貸方
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
| | | | | | | | |
2.8桁精算表の作成ルール
(1)総勘定元帳の各勘定の残高を残高試算表欄に記入する。
(2)決算整理仕訳を整理記入欄に記入する。
この時新しく必要と成る勘定科目は、勘定科目欄に追加記入する。
(3)収益・費用の各勘定の内、整理記入が行われた勘定に付いては、残高試算表欄と整理記入欄の金額が、
貸借同じ側の時は加算し、反対側の時は差引いて、損益計算書に記入する。
(4)資産・負債・資本の各勘定の内、整理記入が行われた勘定に付いては、(3)と同じ様に加減算して、
貸借対照表欄に記入する。
(5)整理記入欄に記入の無い勘定に付いては、残高試算表欄の金額を損益計算書又欄は貸借対照表欄に
そのまま記入する。
(6)損益計算書欄と貸借対照表欄の借方・貸方の金額をそれぞれ合計し、その差額を当期純利益又は
当基純損失として、金額の少ない側に記入する。
(7)全ての欄の借方・貸方に金額をそれぞれ合計し締めきる。
例:総勘定元帳残高 売掛金520,000 貸倒引当金8,000 繰越商品125,000
備品400,000 売上850,000 仕入625,000
決算整理事項 期末商品棚卸高135,000
貸倒見積額 売掛金残高の5% (520000×0.05=26000)
備品減価償却額45,000
決算整理仕訳 (借り)仕入 125,000 (貸し)繰越商品 125,000
(借り)繰越商品 135,000 (貸し)仕入 135,000
(借り)貸倒償却 18,000 (貸し)貸倒引当金 18,000
(借り)減価償却費 45,000 (貸し)備品 45,000
精算表
平成0年12月31日
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−ーーー−−−−−
勘定科目|元| 残高試算表 | 整理記入 | 損益計算表 | 貸借対照表
| |ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
|丁| 借方 | 貸方 | 借方 | 貸方 | 借方 | 貸方 | 借方 | 貸方
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
売掛金 | |520000| | | | | |520000|
貸倒引当金|| | 8000| |18000| | | |26000
繰越商品 | |125000| |135000|125000| | |135000|
備品 | |400000| | | 45000| | |355000|
売上 | | |850000| | | |850,000| |
仕入 | |625000| |125000|135000|615000| | |
貸倒償却 | | | |18000| | 18000| | |
減価償却費| | | |45000| | 45000| | |
・仕入:仕入残高625000+繰越商品125000−期末商品棚卸高135000=615000(売上原価)
・貸倒引当金:貸倒引当金残高8000+貸倒償却18000=26000(売掛金残高の5%の見積額)
・備品:備品残高400000−原価償却時45000=355000
第22章帳簿決算と財務諸表の作成その1
1.帳簿決算とは
決算の為に必要な帳簿を記帳し、仕訳帳や総勘定元帳等の会計帳簿を締め切る事を帳簿決算と言う。
締め切る帳簿:仕訳帳、総勘定元帳、繰越試算表等
2.財務諸表の作成
(1)財務諸表とは
帳簿決算が終わると、帳簿記録に基づいて、損益計算書・貸借対照表等の決算報告書を作成する。
この決算報告書を財務諸表と言う。
(2)損益計算書の作成
一会計期間に発生した全ての収益と費用を記載し、その差額の当期純利益(または当期純損失)を示す
事により、企業の経営成績を明らかにする。
@決算整理後の費用・収益の各勘定の残高及び損益勘定等を元に作成する。
A売上勘定の残高は、売上高として表示する。
A仕入勘定の残高は、売上原価であるので、売上原価と表示する。
(3)貸借対照表の作成
会計期末に於ける資産・負債及び資本の内容を記載し、企業の財務状態を明らかにする。
@決算整理後の資産・負債・資本の残高や繰越試算表等を元に作成する。
A貸倒引当金勘定は貸方残高で有るが、売掛金勘定に対する評価勘定で有るから、売掛金から差引く
控除形式で示す。(売掛金の直ぐ下に記入する)
B繰越商品勘定は商品として表示する。
注:資本金は引出金の決算整理後の資本金勘定の残高を記入する。