株式会社の簿記(その2) 第一編 取引の記帳と決算 

             1.特殊な商品売買の記帳 2.特殊な手形取引の記帳

 

 

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1.特殊な商品売買の記帳

 (1)未着商品売買

    ・遠方の取引先から商品を仕入れる場合、商品の到着に先だって、「貨物引換証」や「船荷証券」等の貨物代表証券を
     受取る事が有る。 この運送中の商品を未着商品と云う。
    ・「貨物代表証券」を受取った時は、手元の商品と区別して、未着商品勘定(資産の勘定)の借方に記入する。
     後日商品が到着して、「貨物代表証券」と引換えに商品を受取った時に、未着商品勘定から仕入勘定の借方に
     振替える。

                          未着商品
                 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
                  貨物代表証券の   |商品の引取高
                  受取り高      |貨物代表証券の売渡高(原価)
                            |−−−−−−−−−−−−
                            |  残高
                 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

     (例)4/22 S商店から月末に到着予定で商品550,000を仕入貨物代表証券を受取り、代金は掛けとした。

             借方:未着商品  550,000  / 貸方:買掛金   550,000

        4/30 上記商品が到着したので、貨物代表証券と引換えに商品を受取った。尚、引取費10,000を
             現金で支払った。

             借方:仕入    560,000  / 貸方:未着商品  550,000
                                    現金     10,000

    ・商品を引取る前に、貨物代表証券を売渡す事が有る。 この場合は、売価を売上勘定の貸方に記入すると同時に、
     その原価を未着商品勘定から仕入勘定の借方に振替える。 これは、仕入勘定で売上原価を計算する為に行う。

     (例)先にO商店から受取っていた船荷証券700,000(原価)を、780,000でB商店に売渡、代金は
        同店振出し、当店宛の約束手形で受取った。

             借方:受取手形   780,000 / 貸方:売上   780,000
             借方:仕入     700,000 / 貸方:未着商品 700,000

                       未着商品
             −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
             買掛金 700,000|仕入 700,000
                 (売却前残高)|   (売却後振替)

                       売上
             −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
                       |受取手形 780,000

                        仕入
             −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
             未着商品 700,000|
                  (売上原価) |

    注:外国通貨で行われた取引を「外貨建取引」と云う。
      外貨建取引を、国内通貨で貸借対照表や損益計算書に表示するには、国内通貨(円)に換算する必要が有る。
      外国為替に変動為替相場を取る場合には、為替換算率が変動する。 債券、債務等の発生時と決算時とで
      相場が変動した場合、為替換算により為替差益(収益の勘定)または為替差損(費用の勘定)が生じる。

      (例)a:外国の商社に商品$1,000を掛けで輸出した。
           但し、この時の為替相場は$1=¥110
             借方:売掛金  110,000  / 貸方:売上  110,000

         b:決算に際して、上記外貨建売掛金を決算時の相場で評価した。
           為替相場は$1=¥100で有った。
             借方:為替差損  10,000  / 貸方:売掛金  10,000

 (2)委託販売

    ・商品の販売を他人に委託する販売方法を委託販売と云う。 委託販売の為に、発送した商品を「積送品」と云う。
     委託販売の為、商品を発送した時は、手元の商品と区別して、発送した商品の原価を仕入勘定から「積送品勘定」
     (資産の勘定)の借方に振替える。
    ・商品発送の際の発送費等の諸掛りも積送品勘定の借方に記入し、積送品の原価に加える。
    ・委託先から売上計算書を受取った場合等、積送品の売上が確定した時に、売上計算書の手取り金額を売上勘定の
     貸方に記入する。 同時に、積送品の原価を積送品勘定から仕入勘定の借方に振替える。 これは、仕入勘定で
     売上原価を計算する為に行う。

                      積送品
               −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
               積送品の仕入原価  |積送品の売上原価
               発送運賃等の諸掛り |−−−−−−−−−−−
                         |残高
               −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

      (例)a:S商店に販売を委託して、商品800,000(原価)を発送した。
           尚、発送費20,000は現金で支払った。

           借方:積送品  820,000  / 貸方:仕入    800,000
                                 現金     20,000

         b:S商店から上記積送品について、下記の売上計算書と共に、手取金を小切手で受取り、直ちに当座預金した。

                     売上計算書
                    −−−−−−−
                売上高             1,080,000
                諸掛り
                 引取費     2,000
                 保管料     7,000
                 雑費      9,000
                 手数料   108,000    126,000
                      −−−−−−−−− −−−−−−−−−−−
                差引手取金             954,000
                                ===========

           借方:当座預金   954,000  / 貸方:売上     954,000
           借方:仕入     820,000  / 貸方:積送品    820,000

                          積送品
              −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
              a:諸口  820,000|b:仕入  820,000 
                           |

                          仕 入
              −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
              b:積送品 820,000|a:積送品  820,000 
                    (売上原価) |

                          売 上
              −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
                           |b:当座預金 954,000 
                           |

    ・委託販売において荷為替を取組む事も有る。
     この場合、荷為替を銀行で割引いた時は、積送品がまだ販売されていないので、手形代金は前受金勘定で処理する。

     (例)H商店は、商品500,000(原価)の販売をY商店に委託し、船便で発送した。 その際に、S銀行で
        額面400,000の荷為替を取組み、割引料30,000を差引かれ、手取金を当座預金とした。
        尚、発送運賃の20,000は現金で支払った。

         借方:積送品  520,000  / 貸方:仕入  500,000
                               現金   20,000

         借方:当座預金 370,000  / 貸方:前受金 400,000
            割引料   30,000 

 (3)割賦販売

    ・商品の売上代金を、分割して定期的に受取る約束で、商品を引渡す販売方法を割賦販売と云う。
    ・割賦販売を行った時、売上勘定の貸方に販売額を記入する。 借方には、代金の未収額を、普通の
     売掛金と区別して、「割賦売掛金勘定」(資産の勘定)に記入し、割賦金を受取る都度、回収分を
     割賦売掛金勘定の貸方に記入する。  (「販売基準」による収益計上の方法と云う)

              割賦売掛金                       売 上
       −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−        −−−−−−−−−−−−−−−−
                |第一回分受取高(10,000)           | 
                |−−−−−−−−−−−               |
   |−−> 割賦売上高   |第二回分受取高(10,000)           |割賦売上高    <−−|
   |    (60,000)|−−−−−−−−−−−               | (60,000)   |
   |            |                          |            |
   |            |未回収高                      |            |
   |  −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−        −−−−−−−−−−−−−−−−    |
   |                                                    |
   −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

      (例)商品60,000(原価50,000)を6ヶ月の分割で売渡し、第一回の割賦金10,000を
         現金で受取った。

          借方:割賦売掛金  60,000  / 貸方:売上    60,000
          借方:現金     10,000  / 貸方:割賦売掛金 10,000

         第二回の割賦金10,000を現金で受取った。

          借方:現金     10,000  / 貸方:割賦売掛金 10,000

    ・割賦販売における回収基準:割賦販売に付いては、割賦代金の回収の都度、回収額だけ売上勘定に計上する方法も
     有る。 この方法による売上収益を計上する基準を「回収基準」と云う。
    ・この方法では、割賦販売を行った時は、割賦販売売掛金勘定と「割賦仮売上勘定」と云う同時に発生し、同時に
     消滅する一組の勘定(この様な勘定を対照勘定と云う)を用いて、売価で備忘記録しておく。
     割賦代金を回収する都度、売上勘定に計上すると共に回収額だけ備忘記録した対照勘定を、貸借反対に記入し、
     減少させる。

     (例)商品60,000(原価50,000)を6ヶ月の分割払いで売渡し、第一回の割賦金10,000を
        現金で受取った。  尚、回収基準により処理する。

         借方:割賦売掛金   60,000  / 貸方:割賦仮売上     60,000
         借方:現金      10,000  / 貸方:売上        10,000
            割賦仮売上   10,000  /    割賦売掛金     10,000

             割賦売掛金   <−対照勘定−> 割賦仮売上            売 上
         −−−−−−−−−−−−−   −−−−−−−−−−−−−−−  −−−−−−−−−−−−−
         60,000|10,000   10,000 | 60,000        |10,000
         (販売時点)|(第一回目回収)(第一回目回収)| (販売時点)        |(第一回目回収)

 (4)試用販売

    ・商品を前もって顧客に渡し、試しに使用してもらった上でその商品を買うかどうかを顧客に決めさせる販売方法を
     「試用販売」と云う。 試用販売の為に引渡した商品を「試用品」(または「試送品」)と云う。
    ・試用販売の為に商品を引渡した時は、手元の商品と区別する為に、その商品の仕入原価を仕入勘定から試用品勘定
     (資産の勘定)の借方に振替える。
    ・顧客から買取りの意思表示が有った時は、その売価を売上勘定の貸方に記入する。
     同時に、試用品の原価を試用品勘定から仕入勘定の借方に振替える。(仕入勘定で売上原価を計算する為)
    ・顧客から商品が返送された時は、試用品を引渡した時の反対の仕訳を行う。

     (例)a:K商店に試用販売の為、仕入原価1,000の商品200個を引渡した。 売価は@1,500

          借方:試用品   200,000  / 貸方:仕入    200,000

        b:K商店から上記商品の内150個を買取る旨の通知が有り、代金は掛けとした。

          借方:売掛金   225,000  / 貸方:売上    225,000
          借方:仕入    150,000  / 貸方:試用品   150,000

        c:K商店から残りの商品50個が返送されて来た。

          借方:仕入     50,000  / 貸方:試用品    50,000

                      試用品
          −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
          a:仕入 200,000 |b:仕入 150,000
                       |c:仕入  50,000

                      仕 入        
         −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
         b:試用品 200,000 |a:試用品 200,000
         c:試用品  50,000 |

                      売 上
          −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
                       |b:売掛金 150,000
                       |

     ・試用品販売における対照勘定による処理方法:試用品勘定と「試用仮売上勘定」と云う対照勘定を用いて、
      処理する方法も有る。
     ・商品を発送した際は、「売価」で記録しておき、買取りの意思表示が有った時に売上を計上すると同時に、
      対照勘定を反対に仕訳する。  返品の場合にも対照勘定は反対仕訳する。

      (例)a: 借方:試用品   300,000 / 貸方:試用仮売上  300,000
         b: 借方:売掛金   225,000 / 貸方:売上     225,000
            借方:試用仮売上 225,000 / 貸方:試用品    225,000
         c: 借方:試用仮売上  75,000 / 貸方:試用品     75,000

                         試用品
          −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
          a:試用仮売上 300,000 |b:試用仮売上 225,000
                          |c:試用仮売上  75,000

                      試用仮売上        
         −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
         b:試用品 225,000 |a:試用品 300,000
         c:試用品  75,000 |

                      売 上
          −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
                       |b:売掛金 225,000
                       |

2.特殊な手形取引の記帳

 (1)自己受為替手形

    ・売掛金等の債券を確実に回収する為、振出人は、自己を受取人として為替手形を振出す事が出来る。
     この様に、振出人と受取人が同一の手形を「自己受為替手形」と云う。
    ・自己受為替手形を振出して名宛人の引受けを得た場合は、手形上の債券が発生するので、受取手形勘定の貸方に記入する。

      振出人        振出し            名宛人
     |−−−−−−|  −−−−−−−−−−−−>| |−−−−−−| M商店はI商店に対して売掛が有り、
     |M商店   |           引受け | |I商店   | I商店はM商店に対して買掛が有るので
     |−−−−−−| <−−−−−−−−−−−−−| |−−−−−−| 支払の為に、為替手形を引受けた。
      受取人      受取               支払人

     (例)M商店は、I商店に対する売掛金を回収する為、自己受為替手形150,000を振出し、引受けを得た。

        M商店 借方:受取手形  150,000  / 貸方:売掛金  150,000
        I商店 借方:買掛金   150,000  / 貸方:支払手形 150,000

 (2)手形の書換え

    ・約束手形の振出人や為替手形の引受け人等の手形債務者は、手形の支払期日(満期日)に、手形金額を支払わなければ
     ならない。 しかし、資金不足時などには、受取人の承諾を得て、支払期日を延期した新しい手形を振出し、旧手形と
     交換する事が有る。
     これを「手形の書換え」または「手形の更改」と云う。 延期した期間に対する利息は、現金で支払うか新しい手形の
     金額に加える。
    ・手形の書換えによって、手形債務者は、支払手形勘定の借方に旧手形の金額を記入し、貸方に新手形の金額を記入する。
     手形債権者は、受取手形勘定の貸方に旧手形の金額を記入し、借方に新手形の金額を記入する。

     (例)Y商店は、先に仕入先O商店宛に振出した約束手形200,000について、支払期日の延期を申込み、承諾を
        得て利息3,000を加算した新手形を振出し、旧手形と交換した。

      Y商店(手形債務者) 借方:支払手形  200,000 / 貸方:支払手形  203,000
                    支払利息    3,000

      O商店(手形債権者) 借方:受取手形  203,000 / 貸方:受取手形  200,000
                                       受取利息    3,000

               Y商店                       O商店
               支払手形                      受取手形
       −−−−−−−−−−−−−−−−−−−       −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
        200,000 | 200,000         200,000  | 200,000
        (旧手形金額) |                          | (旧手形金額)
       −−−−−−−−−−−−−−−−−−−       −−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 
                | 203,000         203,000  |
                | (新手形金額)         (新手形金額)  |
                |−−−−−−−−−       −−−−−−−−−−|

    ・資金の貸借の為に、振出された「金融手形」に付いても、手形の書換えが行われる事が有る。
     この場合には、「手形借入金勘定」または「手形貸付金勘定」を用いて、同様に処理する。

     (例)M商店は、取引銀行宛に約束手形を振出して300,000を借入れていたが、支払期日の延期を申込み、
        承諾を得て新手形を振出して旧手形と交換した。 尚、支払延期による利息10,000は現金で支払った。

        借方:手形借入金  300,000  / 貸方:手形借入金  300,000
           支払利息    10,000  /    現金      10,000

 (3)不渡手形

    ・所有している手形や取引銀行で割引いた手形が、支払期日に支払を受ける事が出来なくなった時、
     これを「手形の不渡り」と云う。
    ・手形が不渡になった時は、受取人は、振出人または裏書人に対して、手形金額と不渡によって生じた支払期日以降の
     利息や償還に要した通信費等の諸費用を請求する事が出来る。(手形振出人に対して支払を求める償還請求権と云う)
     これらの請求額は、「不渡手形勘定」(資産の勘定)の貸方に記入し、のちに不渡手形の請求額を回収した時は、
     この勘定の貸方に記入する。
    ・償還請求中の相手先が倒産するなど、請求金額を回収できなく成った時は、貸倒れとして処理する。

                     不渡手形
               −−−−−−−−−−−−−−−−−−
               手形金額    |請求金額の回収額
               期日後の利息  |貸倒れ額
               償還請求費用  |−−−−−−−−−
                       |残高
               −−−−−−−−−

     (例)a:H商店から、商品の売上代金として裏書譲渡された、N商店振出しの約束手形250,000が不渡と
          成ったので、H商店に償還請求をした。 尚、この為に要した諸費用2,000は現金で支払った。

          借方:不渡手形  252,000  / 貸方:受取手形  250,000
                                 現金      2,000

        b:H商店から、上記の請求額と期日以降の利息700を現金で受取った。

          借方:現金    252,700  / 貸方:不渡手形  250,000
                                 受取利息      700

         |−−−−−−|<−裏書譲渡250,000−−−−−−−−−|−−−−−|<−−|−−−−−|
         |当店    |                      |H商店  | 振 |N商店  |
         |(被裏書人)|−A償還請求=不渡請求金額252,000−>|(裏書人)| 出 |振出人  |
         |手形債権者 |                      |手形債務者| し |(支払人)|
         |−−−−−−|<−−−B回収 252,700−−−−−−−|−−−−−|   |手形債務者|
          |    ↑                                 |−−−−−|
          |    |                                    | 
        手形取立  @不渡り250,000                           |
        の依頼    |                                   預金取引
          |    |                                    |
          ↓    |                                    |
         |−−−−−−−−−|<−−−−−−−−−−−支払拒絶−−−−−−−−−|−−−−−−−−−|
         |債権者の取引銀行 |                         |債務者の取引銀行 |
         |         |                         |         |
         |−−−−−−−−−|−−−−−−−−−−−−呈示−−−−−−−−−−>|−−−−−−−−−|

     (例)a:先に裏書譲渡したO商店振出しの約束手形180,000が不渡と成り、償還請求を受けたので、
          支払期日後の利息400と共に小切手を振出して支払った。

           借方:不渡手形  180,400  / 貸方当座預金  180,400

        b:O商店が倒産し、上記の手形が回収出来なくなったので、貸倒れ処理した。 
          但し、貸倒引当金の残高が210,000有る。

           借方:貸倒引当金  180,400 / 貸方:不渡手形  180,400

 (4)荷為替

    ・遠方の取引先(買手)に、販売の為に商品を発送した場合、その代金を早く回収する目的で、取引銀行を受取人、
     買手を名宛人とした為替手形を振出し、発想した商品の貨物代表証券を担保として、銀行で割引いてもらう事が有る。
     これを「荷為替の取組み」と云う。 この手形を「荷付為替手形」または「荷為替」と云う。
     (主に外国との貿易による代金決済に利用されている)
    ・荷為替の金額は、売上代金の全額とする事もあれば、その70〜80%とする場合もあり、この場合の残額は
     売掛金として処理する。
    ・買手は、この手形の引受けまたは支払をして、銀行から貨物代表証券を受取り、これと引換えに商品を引取る。
    ・荷為替を取組んだ時、売り手は手形代金を受取るので、売り手には手形債券は生じない。
     買手がこの為替手形を引受けた時は、支払手形勘定の貸方に記入する。

     (例)a:M商店は、K商店に商品900,000を販売の為発送し、代金の内720,000に付いては荷為替を
          取組み、割引料6,000を差引かれて、手取金は当座預金とした。

          借方:当座預金  714,000  / 貸方:売上    900,000
             割引料     6,000
             売掛金   180,000

        b:K商店は、上記の荷為替の引受けをして、船荷証券を受取り、これと引換えに商品を引取った。

          借方:仕入    900,000  / 貸方:支払手形  720,000
                                 買掛金   180,000

        |−−−−−−−|−−−−−−−−−D為替手形・貨物代表証券−−>|−−−−−−−−−−−|
        |荷為替の取組み|                        |荷為替の取組み    |
        |銀行     |                        |銀行         |
        |−−−−−−−|                        |−−−−−−−−−−−|
          |    ↑                          |    ↑    | 
         C手形の B為替手形                     G貨物    |    |
         割引代金 貨物代表証券                    代表証券   |   E為替手形の
          |    |                          | F為替手形の  呈示
          |    |                          | 引受けまたは  |
          |    |        |−|   |−|         | 支払 |    |
          ↓    |        |運|   |運|         ↓    |    ↓
        |−−−−−−−|<−A貨物−−|送|商品 |送|<−−H貨物−−|−−−−−−−−−−−|
        |売り手    |  代表証券 |会|−−>|会|   代表証券 |買手         |
        |M商店    |       |社|   |社|        |K商店        |
        |−−−−−−−|−@商品−−>|−|   |−|−−I商品−−>|−−−−−−−−−−−|

          注:上記取引aは、@〜Cの事柄で、取引bはD〜Iの事柄

 (5)偶発債務の記帳

    1)手形の裏書譲渡
      
      ・手形を裏書譲渡して、その手形が不渡と成った時に、裏書人は手形の所持人に対して、手形金額と不渡の為に
       生じた費用を支払わなければならない。
      ・この支払義務は、手形の不渡が万一生じた時だけに発生するものであるから、「偶発債務」と云う。
      ・裏書人は、手形の裏書によって偶発債務を負う一方、その手形金額と不渡による費用を手形の支払人または
       前の裏書人に請求出来る。  この請求権を「遡求権」と云う。
      ・手形を裏書譲渡した場合、偶発債務を記帳しておく為、「裏書手形勘定」(受取手形勘定に対する評価勘定)を
       用いて処理する。

       @手形を裏書譲渡した時、受取手形勘定の貸方に減少を記入しないで、裏書手形勘定の貸方に記入しておく。
       A裏書譲渡した手形が、無事決済されるか、または不渡に成った時、その金額を受取手形勘定の貸方に振替える。


        *約束手形の裏書譲渡と偶発債務*  
                         |−−−−−−−−−−−|−−−−C支払拒絶(不渡り)−|
               |−−−@振出し−−|振出人(支払人)   |               |
               |         |−−−−−−−−−−−|<−−B支払の為の呈示    |
               ↓                             |       ↓
         |−−−−−−−−−−−|                  |−−−−−−−−−−−−−−|
         |名宛人(受取人)   |−−−−−A裏書譲渡−−−−−−−>|手形所持人         |
         |−−−−−−−−−−−|                  |−−−−−−−−−−−−−−|
         |    裏書人    |<−−−−D償還請求(遡求権)−−−|     被裏書人     |
         |−−−−−−−−−−−|                  |−−−−−−−−−−−−−−|
               |                                ↑
               |−−−−−−−−−−−偶発債務−−−−−−−−−−−−−−−−−|
               

       (例)9/10:A商店から商品200,000を仕入て、代金の支払の為に所有していたT商店振出しの
               約束手形200,000を裏書譲渡した。

               借方:仕入   200,000  / 貸方:裏書手形  200,000

          10/20:上記の手形が期日に決済された。

                借方:裏書手形  200,000  / 貸方:受取手形  200,000

                                裏書手形
                 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
                 10/20受取手形 200,000|9/10仕入 200,000
                                  |

                                受取手形
                 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
                                  |10/20裏書手形 200,000
                                  |

      ・対照勘定を用いる方法
       「手形裏書義務勘定」と「手形裏書義務見返勘定」と云う対照勘定を用いて処理する場合も有る。

       (上記例)9/10:借方:仕入   200,000  / 貸方:受取手形  200,000
                    手形裏書               手形裏書
                    義務見返 200,000       義務    200,000
            10/20借方:手形裏書          / 貸方:手形裏書
                    義務   200,000       義務見返  200,000

    2)手形の割引

      ・偶発債務は、手形を銀行等で割引いた場合にも生じる。
      ・これを記帳しておく為には、裏書手形勘定の代わりに「割引手形勘定」(受取手形勘定に対する評価勘定)を
       用いて、手形の裏書の場合と同様に処理する。
      ・手形割引の場合にも、「割引手形勘定」と「割引手形見返勘定」と云う対照勘定で処理する方法も有る。

       (例)9/15:T商店振出しの手形500,000を銀行で割引、割引料4,500を差引かれて、
               手取金を当座預金とした。

               借方:割引料    4,500  / 貸方:割引手形  500,000
                  当座預金 495,500

          11/10:上記手形が不渡と成り、手形金及び償還の為の諸費用5,000と共に小切手を振出して
                支払った。

                借方:不渡手形  505,000  / 貸方:当座預金  505,000
                   割引手形  500,000       受取手形  500,000


                              割引手形
                −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
                11/10諸口 500,000 |9/15諸口 500,000
                                |

                              受取手形
                −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
                                |11/10諸口 500,000
                                |



 

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