簿記の勉強(続き10) 第6編決算(その2) 第25章決算整理(その2)
費用の繰り延べ:前払い分を費用から差引く=前払費用(資産)−>貸借対照表の借方に
差引いた差額を当期費用へ計上
収益の繰り延べ:前受分を収益から差引く=前受収益(負債)−>貸借対照表の貸方に
差引いた差額を当期収益へ計上
費用の見越し:未払い分を費用に計上=未払費用(負債)−>貸借対照表の貸方に
計上後の合計額を当期の費用に計上
収益の見越し:未収分を収益に計上=未収収益(資産)−>貸借対照表の借方に
計上後の合計額を当期収益に計上
固定資産の原価償却
間接法では、固定資産の帳簿価額 = 固定資産の取得原価 − 原価償却累計額勘定の残高
有価証券の評価:決算時に帳簿価額が時価より低い場合は、有価証券評価損勘定(費用勘定)に計上し、
帳簿価額を時価まで引き下げる。
帳簿価額が時価より高い時は、帳簿価額で評価し、評価益は計上しない。
第25章決算整理(その2)
1.費用・収益の繰り延べと見越し
費用や収益の中には、当期に費用や収益にならないで、次期以降の費用や収益と成る部分が含まれている
事が有る。 また、まだ勘定には記入されていないが、費用や収益として当期の損益に計上しなければならない
ものも有る。
決算に当って、正しい当期純損益を計算する為に、費用や収益の各勘定の残高が当期の発生高を正しく示す様に
それらを修正する必要が有る。 この為に行われる一連の手続きを費用・収益の整理と言い、これには、費用・収益
の繰り延べと費用・収益の見越しとが有る。
(1)費用の繰り延べとは
保険料や支払地代等の費用の支払額の内、次期以降の費用と成る部分(これを前払額と言う)が含まれている
場合は、前払額を費用の勘定から差引くと共に、前払保険料勘定や前払地代勘定(共に資産の勘定)等に記入
して、次期に繰り延べる。 これを費用の繰り延べと言う。
尚、前払保険料や前払地代等を纏めて前払費用(資産の勘定)と言い、貸借対照表の借方に記載する。
(2)費用の繰り延べに関する記帳のルール
@費用の前払額を保険料勘定や支払地代勘定等の費用の勘定の貸方に記入して、前払い分を差引く。
差引いた残りが当期分の費用と成る。
A同時に、前払額を前払保険料勘定や前払地代勘定等の前払費用の各勘定の借方に記入し、
資産として次期に繰り延べる。
費用の勘定 前払費用の各勘定 損益
−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−− −−−−−−−−−
|前払分 −−−> 前払額 |次期繰越 費用|
|−−−− −−−−−| |−> |
支払額 |当期分 | −−−|
|損益勘定へ −−−−−−−−−−−−−−−|
−−−−−−−−−−−
例:6/1 1年分の火災保険料12を現金で支払った。
12/31 決算に当り、上記保険料の内前払い分5を次期に繰り延べた。
12/31 保険料の当期分7を損益勘定に振替えた。
6/1 (借り)保険料 12 (貸し)現金 12
12/31(借り)前払保険料 5 (貸し)保険料 5 −−−−>次期繰り延べ分
12/31(借り)損益 7 (貸し)保険料 7 −−−−>当期費用分
注:前払保険料5は原則として次期に費用に成るから、次期の最初の日付(決算日の翌日)で保険料勘定に
振替えておく。 これを再振替(または振り戻し)と言い、この為の仕訳を再振替仕訳と言う。
1/1 (借り)保険料 5 (貸し)前払保険料 5
保険料 前払保険料
−−−−−−−−−−−−−−−−ーーーー −−−−−−−−−−−−−−−−−−−
6/1現金 12|12/31 前払保険料 5 12/31保険料 5 |12/31次期繰越 5
/ |〃 損益 7 ===| ===
−−−−−ーー− −−− 1/1前期繰越 5 |1/1保険料 5
12| 12 |
====| === |
1/1前払保険料 5 <−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(消耗品費勘定の整理)
事務用品の消耗品を買入れた時は、通常は消耗品費勘定(費用の勘定)の借方に記入する。
しかし、決算に当り、まだ消費していない分が有れば、これを消耗品費勘定から消耗品(または貯蔵品)勘定
(資産の勘定)の借方に振替えて、未消費分を資産として次期に繰り延べる。
また、繰り延べされた消耗品は、次期の最初の日付で消耗品費勘定に再振替しておく。
例:12/31期末に消耗品の棚卸を実施した結果、未消費分が5000有ったので次期に繰り延べした。
但し、消耗品費勘定には残高が18000有った。
12/31消耗品の当期分13000を損益勘定に振替えた。
1/1 上記消耗品5000を消耗品費勘定に再振替した。
12/31(借り)消耗品 5000 (貸し)消耗品費 5000
12/31(借り)損益 13000 (貸し)消耗品費 13000 −−>(当期分を費用に振替)
1/1 (借り)消耗品費 5000 (貸し)消耗品 5000
消耗品費 消耗品
−−−−−−−−−−−−−−−ーーー −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
残高 18000|12/31消耗品5000 12/31消耗品費5000|12/31次期繰越5000
/ |12/31損益13000 ===| ===
−−−−| −−−− 1/1前期繰越 5000|1/1消耗品費 5000
18000| 18000 |
====| ==== |
1/1消耗品5000| <−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(3)収益の繰り延べ
受取地代や受取利息等の収益の受領額の内、次期以降の収益と成る金額(前受領と言う)が含まれている
場合、前受領を収益勘定から差引くと共に、前受地代勘定や前受利息勘定(共に負債の勘定)に記入して、
次期に繰り延べる。 これを収益の繰り延べと言う。
また、前受地代や前受利息を纏めて前受収益(負債)と言い、貸借対照表の貸方に記載する。
(4)収益の繰り延べに関する記帳のルール
@収益の前受領額を、受取地代や受取利息勘定の収益勘定の借方に記入し、前受分を差引く。
差引いた残額が当期の収益と成る。
A同時に、前受額を前受地代や前受利息勘定の前受収益勘定の各感情の貸方に記入し、
負債として次期に繰り延べる。
例:5/1 1年分(5月から翌年4月迄)の地代36000を現金で受取った。
12/31 期末に上記受取地代の内、前受分(翌年1月から4月迄)12000を次期に繰り延べた。
1/1 前受分12000を受取地代勘定に再振替した。
5/1 (借り)現金 36000 (貸し)受取地代 36000
12/31(借り)受取地代 12000 (貸し)前受地代 12000
12/31(借り)受取地代 24000 (貸し)損益 24000 −−>(当期分を収益に振替)
1/1 (借り)前受地代 12000 (貸し)受取地代 12000
受取地代 前受地代
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−−−−−−−−ーーーー
12/31前受地代 12000|5/1現金 36000 12/31次期繰越12000|12/31受取時代12000
12/31損益 24000| / ====| ====
−−−−| −−−−−−−− 1/1受取地代 12000|1/1前期繰越 12000
36000| 36000 |
====| ===== |
|1/1前受地代 12000 <−−−−
(5)費用の見越し
支払家賃や支払利息等の費用で、まだ支払っていないが、当期の費用として発生している分(未払額と言う)
が有る場合は、未払額を費用に計上すると共に、未払家賃や未払利息勘定(共に負債の勘定)に記入し、
次期に繰り越す。 これを費用の見越しと言う。
また、未払家賃や未払利息等を纏めて未払費用(負債)と言い、貸借対照表の貸方に記載する。
(6)費用の見越しに関する記帳のルール
@費用の未払額を、支払家賃勘定・支払利息勘定等の費用の各勘定の借方に記入し、未払い分を当期費用
として計上する。
A同時に、費用の未払額を、未払家賃勘定や未払利息勘定等の未払費用の各勘定の貸方に記入し、負債と
して、次期に繰り越す。
例:12/31 家賃の未払い分(9月から12月分)16000を計上
12/31 支払家賃の当期分48000を損益勘定に振替
1/1 未払い家賃16000を、支払家賃勘定に再振替
2/28 家賃24000を現金で支払った。(前期未払分16000+当期分(1,2月分)8000)
12/31 (借り)支払家賃 16000 (貸し)未払家賃 16000
12/31 (借り)損益 48000 (貸し)支払家賃 48000
1/1 (借り)未払家賃 16000 (貸し)支払家賃 16000
2/28 (借り)支払家賃 24000 (貸し)現金 24000
支払家賃 未払家賃
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−ーー −−−−−−−−−−−−−−−−−−−ーーーー
(既支払額) 32000|12/31損益 48000 12/31次期繰越16000|12/31支払家賃16000
12/31未払家賃16000| / ====| ====
−−−−| −−−−−− 1/1支払家賃 16000|1/1前期繰越 16000
48000| 48000
===== ====
2/28現金 24000|1/1未払家賃 16000
(7)収益の見越しとは
受取家賃や受取利息等の収益で、まだ受取っていないが、当期の収益として既に発生している分(未収額)が
有る場合は、未収額を収益の勘定に計上すると共に、未収家賃勘定や未収利息勘定(共に資産の勘定)等に
記入して、次期に繰り越す。 これを収益の見越しと言う。
未収家賃や未収利息を纏めて未収収益(資産勘定)と言い、貸借対照表の借方に記載する。
(8)収益の見越しに関する記帳のルール
@収益の未収額を受取家賃や受取利息勘定等の収益勘定の貸方に記入し未収分を当期収益として計上する。
A同時に、収益の未収額を未収家賃勘定や未収利息勘定等の未収収益の各感情の借方に記入し、資産とし
て次期に繰り越す。
例:12/31 利息の未収分(10月から12月)9000を計上した。
12/31 受取利息の当期分36000を損益勘定に振替えた。
1/1 未収利息9000を受取利息勘定に再振替した。
1/31 利息12000を現金で受取った。(前期未収分9000と当期分(1月分)3000)
12/31 (借り)未収利息 9000 (貸し)受取利息 9000
12/31 (借り)受取利息 36000 (貸し)損益 36000
1/1 (借り)受取利息 9000 (貸し)未収利息 9000
1/31 (借り)現金 12000 (貸し)受取利息 12000
未収利息 受取利息
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−ーーー −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
12/31受取利息 9000|12/31次期繰越 9000 12/31損益36000|(既収額) 27000
===| ==== / |12/31未収利息9000
1/1前期繰越 9000|1/1受取利息 9000 −−−−| −−−−−
36000| 36000
====| ====
1/1未収利息9000|1/31現金 12000
2.貸倒れ見積
(1)洗替法とは
貸倒れの見積の記帳方法として、第20章で差額を計上する方法が有った。
ここでは、貸倒引当金の期末残高を全額戻入れる方法(これを洗替法と言う)を学ぶ。
洗替法は、貸倒引当金の期末残高を、前期末の貸倒見積額が多すぎた分で有ると見て、これを全額貸倒引当金
戻入勘定(収益の勘定)に振替、新たに、当期の貸倒見積額を貸倒引当金勘定に記入する方法である。
洗替法は、実務では広く利用されている。
(2)洗替法による記帳のルール
@貸倒引当金勘定の期末残高を、貸倒引当金勘定の借方に記入すると共に、貸倒引当金戻入勘定の貸方記入。
A当期の貸倒見積額を、貸倒償却勘定の借方と貸倒引当金勘定の貸方に記入する。
例:12/31 売掛金の期末残高400000に対して、5%の貸倒れを見積もった。
但し、貸倒引当金勘定に残高が8000有る。
12/31 (借り)貸倒引当金 8000 (貸し)貸倒引当金戻入 8000
貸倒償却 20000 貸倒引当金 20000
貸倒引当金 貸倒引当金戻入
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−ーーー −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
12/31貸倒引当金戻入8000|(残高) 8000 12/31損益8000|12/31貸倒引当金8000
12/31次期繰越 20000|12/31貸倒償却20000 ===| ===
−−−−| −−−−
28000| 28000 貸倒償却
====| ===== −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−ー
|1/1前期繰越20000 12/31貸倒引当金20000|21/31損益20000
===| ====
3.原価償却
(1)間接法とは
原価償却の記帳として、第20章で直説法が有った。 ここでは、間接法を学ぶ。
間接法とは、当期の原価償却費を、固定資産毎に設けた原価償却累計額勘定(固定資産に対する評価勘定)に
記入する方法である。
(2)間接法による記帳のルール
@当期の原価償却費を、原価償却費勘定の借方に記入すると共に、原価償却累計額勘定の貸方に記入する。
A固定資産の勘定は、取得原価のまま次期に繰り越す。
例:決算に当り、備品(取得原価800000)について90000の原価償却を行い,間接法で記帳した。
12/31 (借り)原価償却費 90000 (貸し)備品原価償却累計額 90000
備品 原価償却費
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−ーーーー −−−−−−−−−−−−−−−−−−−ーー
1/1前期繰越 800000|12/31次期繰越 800000 12/31備品原価90000|12/31損益90000
====| ===== 償却累計額 | ====
備品原価償却累計額
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
12/31次期繰越 180000|1/1前期繰越 90000
/ |12/31原価償却費 90000
−−−−−−| −−−−−
180000| 180000
======| =====
|1/1前期繰越 180000
注:固定資産の帳簿価額は、固定資産の勘定残高(取得原価)から原価償却累計額勘定の残高(減価償却費の
累計額)を差引く事で求められる。
(固定資産の売却)
固定資産を売却した時は、その固定資産の取得原価と原価償却累計額を減少させる。
売却した固定資産の帳簿価額と売却価額との差額は、固定資産売却益勘定または固定資産売却損勘定で記入。
例:備品(取得原価800000、原価償却累計額360000)を400000で売却し、代金は月末受取る。
(借り)備品原価償却累計額 360000 (貸し)備品 800000
未収金 400000
固定資産売却損 40000
4.有価証券の評価
(1)有価証券の評価
貸借対照表に記載する有価証券の価額を決める事を有価証券の評価と言う。
通常、取得原価がそのまま有価証券の帳簿価額と成り、貸借対照表に記載される価額と成る。
しかし、決算の時に、その市場価額(時価)が帳簿価額より低い場合は、帳簿価額を時価まで引き下げることが
出来る。 この場合生じる帳簿価額と時価との差額は有価証券評価損と成る。
尚、時価が帳簿価額より高い時は、帳簿価額で評価し、評価益は計上しない。
(2)有価証券の評価に関する記帳のルール
有価証券評価損勘定(費用の勘定)を用いて記帳する。
@帳簿価額と時価との差額を有価証券評価損勘定の借方に記入する。
A同時に、有価証券勘定の貸方に記入して帳簿価額を時価まで引き下げる。
例:決算に当り、手持ちの株式10株(1株の帳簿価額65000)を、1株に就き59000に評価替えした。
(借り)有価証券評価損 60000 (貸し)有価証券 60000
有価証券 有価証券評価損
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−ーーー −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−ー
650000|12/31有価証券 60000 12/31有価証券60000|12/31損益60000
/ | 評価損
/ |12/31次期繰越 590000
−−−−−−−| −−−−−
650000| 650000
====| =====
1/1前期繰越 590000|