工業簿記の基礎(その2) 第五章 材料費
1.材料費の分類
2.材料の購入手続きと記帳
3.材料の保管手続きと記帳
4.材料の消費手続きと記帳
5.材料消費高の決定
第六章 労務費
1.労務費の分類
2.労務費の計算と記帳
第七章 経費
1.経費の分類
2.経費の計算
3.経費の記帳
第八章 製造間接費
1.製造間接費の記帳
2.製造間接費の配賦法
3.製造間接費の予定配賦
第5章 材料費
1.材料費の分類
・製品を製造する為に消費した時、その消費高を材料費と云う。
(1)素材費(原料費)
・素材とは、製品の製造の為に直接消費され、その主要な組成部分となって再現する物品である。
・この消費高は普通、直接材料費となる。
(2)買入部品費
・買入部品とは、外部から買入れた部品である。
・買入部品の消費高は普通、直接材料費となる。
(3)燃料費
・燃料とは、素材として用いられない物品である。
・その消費高は普通、間接材料費となる。
(4)工場消耗品
・工場消耗品とは、製品の組成部分とはならないで、単に生産に補助的に役立つ物品を云う。
・この消費高は普通、間接材料費となる。
(5)消耗工具器具備品費
・消耗工具器具備品とは、耐用年数1年未満のもの、または、価格の低い工具器具備品を云う。
・この消費高は普通、間接材料費となる。 これらはその消費高を実地棚卸によって計算する事が多い、材料費に含めて扱われる。
・但し、金額が大きく、しかも耐用年数が1年以上である時は、固定資産として処理する。
*注:燃料、工場消耗品、消耗工具器具部品を合わせて貯蔵品と呼び、貯蔵品勘定で纏めて処理する事も出来る。
2.材料の購入手続きと記帳
・必要な材料に付いては、材料購入請求書等を発行して、購買係が購入する。
・材料が仕入先から納入されたら、送状と現品を照合して、材料受入報告書を作成し、購買係と材料係に引渡す。
材料係は、現品を保管すると共に、材料棚札(または材料現品カード)に記入する。
購買係は、送状、材料受入報告書、注文書控と照合し、材料仕入帳に記入したうえ、会計係に受入報告書と送状を回付する。
会計係は、これによって、材料元帳に記入する。
(1)材料の購入価額
・材料の購入価額は、原則として材料の代金に、購入に直接に関連して要した費用を加算した金額である。
・この材料の代価を材料主費と云い、購入に関連して生じた諸掛り(買入手数料、引取運賃、荷役費、保険料、関税等)を材料副費と云う。
・材料購入に際して、値引または割戻を受けた時は、材料の購入価額から控除する。
値引または割戻が、材料消費後に分かった場合は、同種材料の購入価額から控除する。
(2)材料仕入帳
・材料を購入した場合には、受入報告書または送状によって、材料仕入帳に記入する。
(例)6/3 H商店からしいれ、代金は掛けとした。
素材 100個 @300 30,000 部品 500個 @20 10,000
借方:素材 30,000 / 貸方:買掛金 40,000
部品
10,000
6/7 A商店から仕入、代金の内10,000は小切手を振出して支払、残額は掛けとした。
工場消耗品 450個 @40 18,000 消耗工具器具備品 170個 @100 17,000
借方:工場消耗品 18,000 / 貸方:当座預金 10,000
消耗工具器具部品 17,000
買掛金 17,000
材料仕入帳
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
平成 |送状|仕入先 |摘要 | 借 方 |元丁 | 貸 方
O年
| | |
|−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
| |−−−−−−−−−
| |
| |素材 |買入部品|工場
|消耗 | |買掛金|諸口
| | | | | |消耗品 |工具 | | |
| | | | | | |器具 | | |
| | | | | | |備品 | | |
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
6 | 3| 10|H商店 | |30,000|10,000| | |仕1|40,000|
| 7| 15|A商店 |小切手 | | |18,000|17,000|仕 |25,000|10,000
・この帳簿は、特殊仕訳帳として用い、現金、小切手または手形払いに付いては、摘要欄にその旨を記入しておき、現金勘定、
当座預金勘定、または手形勘定に転記する。(但し、現金、当座預金、手形記入帳が特殊仕訳帳の場合は、個別転記しない)
・掛け仕入に付いては、その都度、仕入先元帳に個別転記する。
3.材料の保管手続きと記帳
・材料の受払い及び保管を記帳する為に、材料元帳、材料棚札、棚卸票、材料棚卸表等が用いられる。
(1)材料元帳
・材料元帳は、材料に関する補助元帳で、材料の種類別に口座を設け、総勘定元帳の素材、買入部品、燃料、工場消耗品、
消耗工具器具備品の格勘定により統制される。
・材料の買入または払出の都度、この帳簿に記入するか、または、定期的に一括して記入する。
(2)材料棚札
・材料係は、必要材料の最低保有量を確保すると共に、材料の保管、整理に留意し、要求の有り次第何時でも出庫する事が出来る様に
体制を整えておく必要が有る。 その為には、材料の種類別に材料棚札を備えて、入出庫毎に記入しておき、材料別に現在高が分かる
様にしておく。 材料棚札は、受払数量だけを記入し、金額を記入しないので、記帳計算には用いない。
(3)棚卸表・材料棚卸表
・材料係は、定期的に(月末または年度末等)実際有高を調べる為、棚卸を行う。
棚卸に当っては、棚卸票または材料棚卸表を用意し、棚卸の完了した材料をチェックして、二重棚卸を防止する。
・実際有高が記録上の残高と異なっている場合は、棚札に訂正記入を行い、訂正記録は会計係に報告して、材料元丁を訂正させる。
・この時、会計係は、次の仕訳を行い、総勘定元帳に転記する。
借方:棚卸減耗費 XXX / 貸方:材料 XXX
または
正常な発生高は 借方:製造間接費 XXX / 貸方:材料 −−>製造原価に含める
異常な発生高は 借方:損益 XXX / 貸方:材料 −−>製造原価に含めない
として振替える。
4.材料の消費手続きと記帳
・材料の出庫には、全て出庫票を用いる。
(1)出庫票
・出庫票には、材料の品名、規格、数量、製造指示番号または使用部門を記入し、単価と金額は記入しない。
・材料係は、出庫票に従って材料を出庫すると共に、その材料の棚札に引渡数量と残高量を記入し、出庫票を会計係りに回付する。
・会計係は、材料元帳と照合し、単価と金額を記入して材料元帳の払出欄に記録し、原価計算係に回付する。
・原価計算係は、この出庫票を定期的に(月末または年度末等)纏めて、材料仕訳帳に記入する。
(2)材料仕訳帳
・この帳簿は、各種の消費材料を総勘定元帳に転記する為の特殊仕訳帳で、原価計算係は出庫票1枚毎に、製造指示番号が
有るものは製造欄(直接材料費)に、無いものは製造間接費欄(間接材料費)に記入する。
(例)6/5 出庫票No8 素材A 10個 @800 8,000 指示書#1
借方:製造 8,000 / 貸方:材料 8,000
6/6 出庫票No9 素材B 20個 @500 10,000 指示書#2
借方:製造 10,000 / 貸方:材料 10,000
6/30貯蔵品月報による消費高 4,000
借方:製造間接費 4,000 / 貸方:材料 4,000
材料仕訳帳
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
平成 |出庫票No| 摘 要 |元丁|借方 |元丁|貸方
O年 | | | |−−−−−−−−−−| |−−−−−−−−−−−−
| | | |製 造|製造間接費| |素 材|買入部品|貯蔵品
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
6| 5| 8 |A10個@800#1 | |8,000| | |8,000| |
6| 9| 9 |B20個@500#2 | |10,000| | |10,000| |
6|30| |貯蔵品消費月報 | | | 4,000| | | | 4,000
・材料仕訳帳は、月末に締切り、各種の合計を算出して直接に総勘定元帳に合計転記する。
5.材料消費高の決定
・材料の消費高は、材料の種類毎に、その払出単価に消費量を乗じて決定する。
(1)消費量の決定
・材料の消費量を決定するには、継続記録法、棚卸計算法が有る。
@継続記録法
・入出庫の都度、材料棚札、材料元帳に増減量を継続的に記入し、出庫数量を消費量とする方法である。
・この方法は、材料の現在有高が帳簿上で何時でも知る事が出来る。 また、現品棚卸により、保管中の減耗がどれだけ
発生したかを知る事が出来る。 但し、材料の種類や出庫頻度が多い場合は、手間が掛かる。
当月帳簿棚卸高 = (前月繰越高 + 当月受入高) − 当月払出高
当月材料減耗量 = 当月帳簿棚卸量 − 当月実地棚卸量
A棚卸計算法
・材料の出庫の都度、出庫記入を行わずに、定期的に材料の種類毎に実地棚卸を行い、その棚卸量を繰越量と受入量との
合計から差引く事によって、期中の消費量を総合的に計算する方法である。
・この方法では、保管または運搬中に生じた減耗も消費量に含まれる事になる。
当月消費量 = (前月繰越量 + 当月受入量) − 当月実地棚卸量
(2)払出単価の決定
・材料の払出単価を決定するには、原価法、時価法、予定価格法が有る。
@原価法
・材料元帳の受入単価を、そのまま払出単価として消費高を計算する方法である。
しかし、同じ材料でも購入時期によって受入単価が異なる場合がある。 この場合は、先入先出法、後入先出法、総平均法、
移動平均法等で、払出単価を決定する。
a:先入先出法:購入日付の早いものから順次出庫するものと見なして、払出単価を決定する方法。
b:後入先出法:購入日付の遅いものから順次出庫するものと見なして、払出単価を決定する方法。
c:総平均法:1ヶ月の受入額に月初の繰越額を加え、これを月初の繰越数量を含めた総数量で除して、払出単価とする方法。
この方法は、月末にならないと払出単価の計算が出来ない。
払出単価 = (前月繰越額 + 当月受入額) ÷ (前月繰越数量 + 当月受入数量)
d:移動平均法:新たに材料を受入れた都度、前の残高と金額に受入額を加え、これを前の残高量に新規の受入量を加えた
総数量で除して、払出単価とする方法。
払出単価 = (前残高金額 + 新規受入金額) ÷ (前残高数量 + 新規受入数量) −−>受入の都度計算
A時価法
・この方法は、材料消費の際における市場価格を払出単価として、材料の消費高を決定する方法。
この方法は、材料によっては市価が正確にわからないと云うことが有る。
B予定価格法
・この方法は、過去の価格を基準として、将来の市場価格の変動の予測等を加味したものを払出単価として、消費高を決定する
方法である。(計算価格法とも云われる)
・予定価格法を使用する時は、出庫票の金額欄は原価と予定価格の2つの欄を設けて、材料仕訳帳には予定価格で記入する。
この場合、別に消費材料勘定を設けて、借方には消費された全ての材料の実際価格による消費高を記入し、
貸方には素材、買入部品の予定価格による消費高の他、貯蔵品等の実際価格による消費高を記入する。
そして、材料仕訳帳の貸方は消費材料となり、その消費高が記入され、製造勘定及び製造間接費勘定に振替えられる。
・消費材料勘定には、月末残高に借方と貸方に差異が生じる、この差額は材料差異勘定に振替えておき、年度末に売上原価に
賦課する。
(例) 借方:素材 8,000 / 貸方:買掛金 8,000
借方:製造 4,250 / 貸方:消費材料
5,100 −−>予定単価で賦課
製造間接費 850
借方:消費材料 4,800 / 貸方:素材 4,800 −−>実際単価で振替
借方:消費材料 300 / 貸方:材料費際 300 −−>差額を振替
材料
素 材 消費材料 仕訳帳 製 造
−−−−−−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−− | −−−−−−−−
材料−> 買掛金 8,000|消費材料 4,800 −> 素材 4,800|製造 5,100−−|−> 消費材料4,250|
仕入帳 |(実際消費高) −− 材料費差異300|(予定単価) |
| |
| | 製造間接費
| | −−−−−−−−
材料費差異 | |−−> 消費材料 850|
−−−−−−−−−−−−−−− |
売上原価 300|消費材料 300 <−|
第6章 労務費
1.労務費の分類
・労務費とは、労働力の消費によって生じる原価を云う。 以下の様に細分される。
@賃金(直接労務費)
・工場の現場で製造活動に従事する従業員を工員と云い、工員に支払われる給与を賃金と云う。
A給料(間接労務費)
・工場監督者及び工場事務職員に支払われる給与を云う。
B従業員賞与・手当(間接労務費)
・工員、職員に支払う賞与や通勤手当、住宅手当等を云う。
C法定福利費(間接労務費)
・工場従業員の健康保険料、雇用保険料等の社会保険料は、普通その半分を会社が負担するので、この会社負担分を云う。
D退職給与引当金繰入額(間接労務費)
・工場従業員が、退職する時に支払う退職金に備えて、毎年引当計上される退職給与引当金繰入額を云う。
・原価計算上から分類すると労務費は、直接労務費と間接労務費に分かれる。
直接労務費は、直接作業に従事する直接工に支払われる賃金(基本賃金及び加給金)を云い、
間接労務費は、間接作業に従事する間接工に支払われる賃金(基本賃金及び加給金)、職員、臨時雇いに支払われる給料の他、
従業員賞与手当、法定福利費、退職給与引当金繰入額等が含まれる。
2.労務費の計算と記帳
・労務費の計算には、従業員各自に幾らを支払、その合計額が幾らになるかを計算する支払額の計算と、それらを製品原価に算入する
計算、すなわち消費額の計算の二つが有る。
(1)支払賃金の計算と記帳
・支払賃金の計算方法には、時間払と出来高払が有る。
時間払は、1時間を単位として賃率を定め、これに作業時間を乗じて支払額を計算する。
出来高払は、同種作業の1単位当りの賃率を定め、これに出来高を乗じて計算する。
・時間給の場合は、正確な作業時間の記録を必要とする為、作業時間票を用いる。
時間票には、作業時間の他に、どの部門またはどの製造指図書の為にどの様な種類の作業に従事したかを毎日記入し、
責任者の検印を受けて賃金計算係に提出する。
支払賃金 = (1時間当りの賃率 X 実際就業時間) + 加給金
・出来高給の場合は、仕上理製品の検査を受けた後に、出来高票を用い、どの部門またはどの製造指図書の為に、どの様な種類の
作業に従事して、どれくらい仕上がったかを記録しておく。
支払賃金 = (1単位当りの賃率 X 実際仕上り高) + 加給金
・賃金支払帳に、工員別に支払賃金総額を計算し、これから所得税を始め健康保険料等の社会保険料、組合費等を控除して正味の
支払額を記入する。 会計係は、支払計算の報告を受けて、現金を支払うと共に、賃金支払の仕訳を行う。
(例)支払総額59,800 内 賃金57,300 諸手当2,500
控除額2,800 内 所得税1,500 健康保険料1,000 組合費300
正味支払額57,000 小切手を振出して支払った。
借方:賃金 57,300 / 貸方:当座預金 57,000
従業員賞与手当 2,500
所得税預り金 1,500
健康保険料 1,000
組合費預り金 300
(2)消費賃金の計算と記帳
・作業票または出来高票を基に原価計算係は、個人別の実際賃率に作業時間または出来高を乗じて消費賃金を計算し、
賃金仕訳帳に記入する。
消費賃金 = 消費賃率 X 就業時間
その際、作業票を作業の種類または製造指図書別に分類し、指図書番号が有るものは、製造欄(直接作業)に、番号が無いものは
製造間接費欄(間接作業)に記入する。
賃金仕訳帳
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
平成 |製造指図書番号|元丁|借方 |元丁|貸方(賃金)
O年 |
| |−−−−−−−−−−−−−| |
| | |製造 |製造間接費 | |
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
9|10| 8 | | 13,000| 4,500 | | 17,500
| | | | | | |
〜 〜 〜
〜 〜 〜
| | | | | | |
| | |
|−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
| | | | 43,000| 15,500 | | 58,500
==== |================================
・賃金仕訳帳は、月末に締切り、総勘定元帳に合計転記する。
借方:製造 43,000 / 貸方:賃金 58,500
製造間接費 15,500
・消費賃金の計算において、支払賃金の計算期間(例えば前月21日から当月20日まで)と消費賃金の計算期間(当月1日から月末まで)
とが異なるので、注意する事。
消費賃金額の計算は、当月支払賃金額から前月未払賃金額を差引いたものに、賃金締切日以降の作業日数等を基礎として概算の
賃金を加えて、当月消費賃金額とする。
(支払賃金)
|<−−−−−−−−−−−支払賃金計算期間−−−−−−−−>|
21日 前月未払高 1日 20日 当月未払高 月末
△=========△====================△==============△
|<−−−−−−−−−−−−−原価計算期間−−−−−−−−−−−−−−>|
(消費賃金)
当月消費賃金高 = 当月支払賃金 − 前月未払高 + 当月未払高
・賃金勘定は、借方に当月支払賃金額、貸方に前月未払賃金額と当月消費賃金額を記入する。
この場合、貸方に残高が生じるが、これは当月の未払賃金額を示し、翌月に繰越す。
(例)当月支払賃金額57,300、前月未払賃金額11,000、当月消費賃金額58,900
賃 金
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
諸口(当月支払高) 57,300|前月繰越(前月未払高) 11,000
次月繰越(当月未払高) 12,200|諸口(当月消費高) 58,500
−−−−−| −−−−−
69,500| 69,500
=====| =====
|前月繰越 12,200
*予定賃率で消費賃金を計算する方法
・労務費の消費高を計算する場合に、材料費と同様に予定賃率を用いる事が有る。
この場合、予定消費高と実際消費高に差異が生じるので、消費賃金勘定を設けて、予定消費金額を貸方に記入する。
消費賃金勘定の借方には、実際消費賃金を記入する。
・予定賃金と実際賃金の差額は、賃金差異勘定に振替えて、その残高を年度末に売上原価に賦課する。
予定消費高 = 予定賃率 X 実際作業時間
賃金差異 = 予定消費高 − 実際消費高
(例) 借方:製造 42,300 / 貸方:消費賃金 57,300 −−>予定単価で賦課
製造間接費 15,000
借方:消費賃金 58,500 / 貸方:賃金 58,500 −−>実際単価で賦課
借方:賃金差異 1,200 / 貸方:消費賃金 1,200 −−>差額を振替
賃 金 消費賃金 賃金仕訳帳 製 造
−−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−− | −−−−−−−−−−
支払賃金 |前月未払賃金額 実際消費|予定消費 −−−−−−|−−> 消費賃金57,300|
XXX |−−−−−−− 賃金額 |賃金額 | |
|実際消費賃金額 −−>58,500| 57,300 |
| 58,500 |−−−−− | 製造間接費
−−−−−−| |差額 −−| | −−−−−−−−−−−
当月未払賃金| −−−−−−−−−−− | |−−−> 消費賃金15,000|
−−−−−−−−−−−−−− |
|−−−−−−−−−−−−−−|
|
| 賃金差異
| −−−−−−−−−−−−
|−> 差額 1,200|売上原価
(3)給料(直接労務費の賃金は除く)の計算と記帳
・給料に付いては、給料支払帳を別に設けて支払額を計算し、以下の様な仕訳を行う。
借方:給料(支払総額) / 貸方:当座預金
従業員賞与手当 所得税預り金
健康保険料
組合費預り金
・給料の消費計算に付いては、毎月の支払い額がそのままその月の原価として計算され、製造間接費勘定に振替えられる。
従って、賃金差異は生じない。
借方:製造間接費 XXX / 貸方:給料 XXX
(4)従業員賞与手当・法定福利費・退職給与引当金繰入額の計算と記帳
・従業員賞与手当の内、手当は賃金の様にその月の支払額を消費高として、製造間接費に振替える。
(例)工場従業員に諸手当2,500を小切手を振出して支払った。
借方:従業員賞与手当 2,500 / 貸方:当座預金 2,500
・賞与は、臨時的に支払われるものであるから、年度始めに支払額を予定して、その月割額を消費高として、製造間接費に振替える。
予定額と実際額との間に差額が生じた時は、年度末にこれを売上原価に賦課する。
(例)月末に上記手当2,500と共に賞与5,000(予定額の月割額)、計7,500を原価に計上した。
借方:製造間接費 7,500 / 貸方:従業員賞与手当 7,500
工場従業員に賞与30,000を小切手を振出して支払った。
借方:従業員賞与手当 30,000 / 貸方:当座預金 30,000
・健康保険、厚生年金、雇用保険等の事業主負担額は、その月の消費高として製造間接費に振替える。
事業主負担額は、従業員負担額と合わせて、一定期日までに納付する。
(例)月末に健康保険料の事業主負担分1,200を原価に計上した。
借方:製造間接費 1,200 / 貸方:健康保険料 1,200
翌月10日に健康保険料2,400(従業員負担分を含む)を小切手を振出して支払った。
借方:健康保険料 2,400 / 貸方:当座預金 2,400
健康保険料
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
納付額 2,400|賃金(従業員負担分) 1,200
|給料(従業員負担分)
|製造間接費(事業主負担分)1,200
・退職給与引当金繰入額に付いては、当年度末に設ける引当金の月割額を消費高として、製造間接費に振替える。
(例)月末に退職給与引当金繰入額として、3,000(予定額の月割額)を計上した。 但し、決算年2回
借方:製造間接費 3,000 / 貸方:退職給与金 3,000
年度末に退職給与引当金として18,000を計上した。
借方:退職給与金 18,000 / 貸方:退職給与引当金 18,000
従業員の退職に際して、退職金5,000を現金で支払った。
借方:退職給与引当金 5,000 / 貸方:現金 5,000
(5)その他の諸費用
・前記の賃金、給与以外に従業員に対して発生する諸費用を労務副費と云う。
これらは、原則として支払額または発生額をそのまま消費高として、月末に製造間接費に振替える。
第7章 経費
1.経費の分類
・経費とは、材料費、労務費以外の原価要素を云い、製造に関連して生じる費用で有る。
同じ費用でも販売活動や事業全体の管理に関連して発生したものは、販売費及び一般管理費として処理する。
・経費の主な科目は、賃貸料、保険料、修繕費、電力料、ガス代、水道料、運賃、保管料、租税公課、通信費、交際費、
棚卸減耗費、特許使用料、外注加工費、減価償却費、雑費等が有る。
2.経費の計算
・経費は、原価に算入する計算方法の相違により、月割経費、測定経費、支払経費、発生経費の4つ(経費の4分類)に分かれる。
(1)月割経費
・減価償却費、賃貸料、特許使用料、保険料、租税公課等の様に、数期間の原価計算期間に亘って、総括的に決定される経費を云う。
・これらの経費は、予め年度始めに、その年度の消費額を推定して、経費月割表によって月割額を計算し、これを各月の消費額とする。
(2)測定経費
・電力、ガス、水道等の様に、計量器または検針によって消費量を測定する事が出来る経費を云う。
・この経費は、経費測定票を作成して、測定した消費量を基づいて、その金額を算定する。
(3)支払経費
・厚生費、修繕費、運賃、保管料、通信費、交際費、外注加工費等の様に、実際の支払額に基づいて原価を算定する経費を云う。
・これらの経費は、各月の支払額をそのまま消費高する。
但し、前月の経費で未払い分が有れば、支払額から控除し、前払い額が有れば支払額に加算する。(経費支払票を作成する)
前月未払高(前月消費分)は当月支払高から控除する。(前月支払高に加算済み)
前月前払高(当月消費分)は当月支払高に加算する。(前月支払高から控除済み)
当月未払高(当月消費分)は当月支払高に加算する。(翌月支払高から控除する)
当月前払高(翌月消費分)は当月支払高から控除する。(翌月支払高に加算する)
(4)発生経費
・棚卸減耗費の様な経費を云う。
・これらの経費は、発生額をその月の消費だかとする。(経費発生票を作成する)
3.経費の記帳
・各経費の消費額が決定すれば、それらを製品の原価に算入しなければならない。
その為に、月末に経費月割表、経費測定票、経費支払票、経費発生票等の経費票を分類整理して、経費仕訳帳に記入する。
・経費は、その殆どが間接費であるが、僅か特定製品の外注加工費、特許使用料等が直接費として計上される。
これらの直接経費(特別費とも云う)は、経費仕訳帳の製造欄に記入する。
経費仕訳帳 平成12年9月分
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
月日 |経費分類 |勘定科目 |元丁| 借 方 | 貸 方
| | | |−−−−−−−−−−−−−|−−−−−−
| | | |製造(仕掛品)|製造間接費 | 合 計
−−−−|−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
9/31 |月割経費 |減価償却費 | | | 2,000 | 2,000
|測定経費 |支払電力料 | | | 5,900 | 5,900
|支払経費 |外注加工費 | | 5,800 | | 5,800
|発生経費 |棚卸減耗費 | | | 1,200 | 1,200
| | | |−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
| | | | 5,800 | 35,600 | 41,400
| | | |=====================
↓ ↓
直接経費 間接経費
・経費仕訳帳は、その合計額で、合計仕訳を行い総勘定元帳に転記する、または直接に豪邸転記する。
(例) 借方:製造 5,800 / 貸方:減価償却費 2,000
製造間接費 35,600 支払電力料 5,900
外注加工費
5,800
棚卸減耗費 1,200
第8章 製造間接費
1.製造間接費の記帳
・原価要素は全て直接費と間接費に分類し、材料費、労務費、経費の各仕訳帳を通じて、製造(仕掛品)勘定に集計し、
間接費は製造間接費勘定に集計する。
・間接費を一覧し、且つ間接費額を各製造指図書に配賦する為の基礎資料として、月末に間接費内訳帳(間接費仕訳帳とも云う)
を作成する。
間接費内訳帳 平成12年9月分
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
費 目 |関係帳簿 | 金 額
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
材料費 |材料仕訳帳 |
燃料 | | 4,500
工場消耗品 | | 3,200
−−−−−−−−− | |
労務費 | |
賃金 |賃金仕訳帳 | 12,000
給料 |給料支払帳 | 7,000
ー−−−−−−−− | |
経費 |経費仕訳帳 |
減価償却費 | | 2,000
支払電力 | | 4,600
| | :
−−−−−−−−−− | |−−−−−−−−−−−−−−−
| | 51,000
| |===============
・間接費内訳帳を締め切った後、その合計額は一定の配賦方法で、各製造指図書に配賦される。
間接費内訳帳の結果は、会計係が総勘定元帳の間接費に関する記録と突合せを行った後、製造勘定に振替える。
借方:製造 51,000 / 貸方:製造間接費 51,000
*製造間接費の記帳手続*
|<−材料仕訳帳−−−−−−−−−−−−>間接費内訳帳−−−−−>各製造指図書に」配賦
| ↑ |
|<−賃金仕訳帳−−| |
|<−給料支払帳−−| 製造間接費 | 製造(仕掛品)
| | −−−−−−−−− | −−−−−−−−−−−
|<−経費仕訳帳−−| −> 実際 |振替高<−|−>製造 |
| | 発生高 | 間接費 |
|−−−−−−−−−−−−
2.製造間接費の配賦方法
・間接費は、2種類以上の製品に対して共通に発生し、特定の製品に直接集計出来ない減価要素であるから、各製品の原価計算を
する為には、これらの間接費を一定の基準によって各製造指図書に配賦しなければならない。
・製造間接費を各製造指図書に配賦する方法には、価額法(または歩合法)、時間法、数量法が有る。
(1)価額法
・この方法は、製造の為に消費された直接費を配賦基準とするもので、直接材料費法、直接賃金法、直接原価法の3種がある。
@直接材料費法
・この方法は、製品の製造の為に消費された直接材料費を配賦基準とするもので、次の算式で配賦率を求め、
これを各製造指図書の直接材料費に乗じてその配布額とする。
1原価計算期間の製造間接費合計額
配賦率(%) = −−−−−−−−−−−−−−−−−
1原価計算期間の直接材料費合計額
配賦額 = 特定製造指図書の直接材料費 X 配布率
・間接費は直接材料費に比例して発生するとは限らないから、この方法を用いる為には、少なくとも直接材料費が製品の原価の
大部分を占めている製造企業で有る事が必要と成る。(例:小規模の家具製作業等)
(例) 1原価計算期間の製造間接費合計額 84,000
同期間の直接材料費合計額 150,000
同期間の直接賃金合計額 100,000
製造指図書#10の直接材料費 25,000
道製造指図書の直接賃金 20,000
配賦率 = 84,000 / 150,000 X 100 = 56%
製造指図書#10の配布額 = 25,000 X 56% = 14,000
A直接賃金法
・この方法は、製品の製造の為に消費された直接賃金を配布基準とするもので、次の算式で配賦率を求め、配賦額を計算する。
1原価計算期間の製造間接費合計額
配賦率(%) = −−−−−−−−−−−−−−−−−
1原価計算期間の直接賃金合計額
配賦額 = 特定製造指図書の直接賃金 X 配布率
・直接賃金法は、直接賃金が製品原価の大部分を占めるような作業(例手作業が主)の製造企業に用いられる。
(例)上記の例の資料から
配賦率 = 84,000 / 100,000 X 100 = 84%
製造指図書#10の配賦額 = 20,000 X 84% =16,800
B直接原価法(素価法)
・この方法は、製品の製造の為に消費された材料、労務費、経費の直接費の合計額(これを直接原価と云う)を配賦基準とする
もので、次の算式で配賦率を求め、これを各製造指図書の直接原価に乗じて、配賦額を計算する。
1原価計算期間の製造間接費合計額
配賦率(%) = −−−−−−−−−−−−−−−−−
1原価計算期間の直接原価合計額
配賦額 = 特定製造指図書の直接原価 X 配布率
・直接原価法は、製品原価が直接原価の大きさに比例する様な場合に適している。
(例)上記の例の資料から
配賦率 = 84,000 / (150,000+100,000) X 100 = 33.6%
製造指図書#10の配布額 = (25,000+20,000) X 33.6% = 15,120
・価額法は、間接費の発生が直接材料費や直接賃金または直接原価の価額と密接な関係が有る場合の他は、配賦法として
一般に合理的とは云えない。 ただ、実際的には計算方法が簡単で容易な為、小規模の製造企業に用いられている。
(2)時間法
・製造間接費は、時間に関連して発生するものが多いから、製品の製造の為に要した時間を基準として配賦する方法である。
これを時間法と云い、直接作業時間法と機械作業時間法とに分かれる。
@直接作業時間法
・この方法は、直接製造作業に従事する工員の作業時間を基準とするもので、手作業または筋肉作業を主とする製造企業に
用いられる。
・次の算式により、1時間当りの配賦率(¥)を求め、これに各製造指図書の直接作業延べ時間数を乗じて、配賦額を計算する。
1原価計算期間の製造間接費合計額
1時間当り配賦率(¥) = −−−−−−−−−−−−−−−−−
1原価計算期間の直接作業延べ時間数
配賦額 = 配賦率 X 特定製造指図書の直接作業延べ時間数
(例) 1原価計算期間の製造間接費合計額 84,000
同期間の直接作業延べ時間数 1,000時間
製造指図書#15の直接作業延べ時間時間 200時間
1時間当りの配賦率 = 84,000 / 1,000 = ¥84
製造指図書#15の配布額 = ¥84 X 200時間 =16,800
A機械作業時間法
・この方法は、機械の運転時間を基準とするもので、次の算式で配賦率を求め、配賦額を計算する。
1原価計算期間の製造間接費合計額
1時間当り機械率(¥) = −−−−−−−−−−−−−−−−−
1原価計算期間の機械運転延べ時間数
配賦額 = 機械率 X 特定製造指図書の機械運転延べ時間数
・上記機械率は、種類を問わず、工場に設置された機械全てを同一視して、一つの機械率を定めたもので有るが、異種の機械毎に、
機械率を計算して配賦する方が正確である。
(例) 1原価計算期間の製造間接費 84,000
同期間の機械作業延べ時間数
2,000時間
製造指図書#25の機械運転延べ時間数 500時間
1時間当りの機械率 = 84,000 / 2,000時間 = ¥42
製造指図書#25の配布額 = ¥42 X 500時間 = 21,000
(3)数量法
・配賦基準を直接材料や製品の個数、面積、容積、重量或いは設備の使用回数等の様な数量に求めるのが、数量法である。
・この方法は、間接費が数量に比例して発生する事が少ないから、あまり合理的とは云えないが、計算が簡単であり、製材工場で、
木材の容積により、また鋳物工場で製品の重量によって、配賦する場合等がある。
3.製造間接費の予定配賦
・以上に述べたのは、月末に製造間接費の実際発生額を算定した上で、配賦率を決定し、これによって特定製品の製造指図書に配賦
する方法である。 しかし、この方法は、実務上、次の様な欠点が有る。
@間接費の実際発生額は、月末を待たなければ分からないから、期間の途中で製品が完成した時に、製造指図書別に間接費を
配賦する事が出来ない。 従って、製品の製造原価が直ちに分からない事になる。
A間接費は固定費が多いから、操業度とは無関係に、毎月ほぼ同一額が計上される事が多い。 従って、各月の操業度に変化が
有って製造数量が増減する時は、月毎に単位製品への配賦額が異なり、同じ製品でも製造原価が違う事になる。
・上記欠点を防ぐ為に、製造間接費の予定配賦が行われる訳であるが、その配賦率の計算方法は、用いられる数値が実際と予定と
違うだけで、実際配賦率を算出する場合と同じである。
・製造間接費を予定配賦する場合は、原価計算係は、製造の進むに連れて、随時各製造指図書に予定配賦額を記入し、
間接費予定配賦表にも記入する。
・月末に間接予定配賦表を締切り、その結果を会計係へ報告する。
会計係は、これを仕訳して合計額を製造勘定の借方と製造間接費勘定の貸方に記入する。
従って、製造間接費勘定の借方には実際発生額が、貸方には予定配賦額が記入される事に成る。
・予定額が実際額より少ない場合は、過小配賦または配賦漏れと云い、その反対の場合は過大配賦または配賦超過と云う。
この貸借の差額の処理は、毎月末に製造間接費差異勘定に振替えておき、年度末の残高は、売上原価に賦課するのが普通である。
(例) 間接予定配賦表の合計は49,800である。
借方:製造 49,800 / 貸方:製造間接費 49,800
製造間接費の実際発生額は、間接材料費23,400、間接労務費17,600、間接経費10,000である。
借方:製造間接費 51,000 / 貸方:材料 23,400
労務費
17,600
経費 10,000
間接費差額1,200を製造間接費差異勘定に振替える
借方:製造間接費差異 1,200 / 貸方:製造間接費 1,200
*製造間接費予定配賦の勘定の流れ:過小配賦の場合*
製造(仕掛品)
−−−−−−−−−−−−−−
繰越 |
材料・労務費・経費 製造間接費 −−−−−−−|
−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−− 直接費 | 完成品 −−>製品勘定へ
|間接費 −−> 実際 |予定 予定率 −−−−−−|
|消費高 発生額 |配賦額 −−−−−> 間接費 |−−−−−−−
| |−−−−− 配賦 |
| |差額 −−− −−−−−−−−−−−−−−−
−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−− |
|
| 製造間接費差異
| −−−−−−−−−−−−−−
|−−−> 過小配賦額 | −−>売上原価へ
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